小学生のカメオは知識が豊富で、ことあるごとに友達にいろいろと教えていた。
一方、同じクラスのカメタはお調子者でおしゃべりなのだが、友達に披露する知識といえばその大半がカメオの受け売りだ。
しかし、カメコは
カメオよりもカメタの方を高く評価しているという。
一体何故?
15年12月28日 02:17
【ウミガメのスープ】【批評OK】
[フィーカス]
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カメオはとにかく知識が豊富で、何かあるごとに友達にその理由や由来、困った時に役に立つ知識を披露していた。
「水蒸気は気体だけど、ゆげは目に見えるから液体なんだ」
「霧ともやは視界の良さで決まるんだ」
「道に迷った時は、アナログ時計と何か棒があれば大まかな方向が分かるよ」
「怪我をしたときは、この草を擦りつけると早く治るよ」
「この足跡がある時は注意してね。近くに熊がいるかもしれないから」
真面目なカメタは、カメオの言葉をメモしながら、一生懸命に覚えていた。
ある時、山で遊んでいたカメタとカメコが、友達とはぐれてしまった。一生懸命声をあげるが、どこにいるか分からない。
「カメコちゃん、腕時計持ってる?」
「え、うん」
「ちょうど晴れていてよかった。えっと、マッチ棒を立てると……こっちが北だね。たしか北の方には大きな道があるから、そっちを目指そう」
「へぇ、よく知っているわね」
「うん、カメオ君から教えてもらったんだ」
もはや獣道すらない場所で必死に歩くカメタとカメコ。しかし、カメコが途中で転んでしまった。
「カメコちゃん、大丈夫? あ、ちょうど川があった。これで傷口を綺麗に洗って……あ、この草、これを傷口に塗ると怪我の治りが早くなるんだ。それで布を……ハンカチで巻いておけばいいかな」
「へぇ、そうなんだ。こっちの草は?」
「あ、それはダメだよ。よく似ているけれど、毒草だから当たっちゃダメ!」
「あっ、そ、そうなの?」
「うん、カメオ君がよく言ってたよ。この草は傷の治りを早くするけれど、間違ってこっちの草を使って大変なことになる人が多いんだって」
「そうなの、知らなかったわ」
「あー、でもここら辺、何か危なそうだね」
「どうして?」
「だって、動物の足跡があるんだもん。この足跡にこの糞は……早くここから離れた方がいいよ。カメコちゃん、歩ける?」
「ええ、なんとか。それにしても、カメタ君、随分と詳しいのね」
「うん、これもカメオ君が……」
そう言いかけて、カメタは肩を落とした。
「カメオ君、凄いよね。なんでも知っていて。僕なんて、そんなに頭がよくないから……」
「そんなことないわよ」
「え?」
「知識は使って初めて役に立つものなの。いくら知識を持っていても、その場になって使えないのなら意味が無いわ。今のカメタ君は、私にとって最高のお医者さんよ」
「え、あ、えっと……」
思わず照れて下を向いてしまったカメタ。その時、遠くから何やら嫌な鳴き声が聞こえてきた。
「ま、まずい、早くここから離れよう!」
カメコの肩を抱いて、必死に走るカメタ。
しばらくすると、広い場所に出た。辺りにはキノコがたくさん生えている。
「あら、おいしそうなキノコね。食べられるのかしら?」
「いや、待って、これは毒キノコだよ。食べたら体調崩しちゃう。この赤いのもヤバいし、これも……あれ、毒キノコだらけだ。ってことは……やった! 助かった! ……って、これもカメオ君が……」
「これはウシオ君から教えてもらったんじゃないかしら? 私も聞いたことあるわよ」
「あ、そうだったっけ。とにかく、もう少し頑張ってね」
カメコを抱えて必死に山を下り、何とか友達と合流出来たカメタだった。
ちなみに、毒キノコだらけなのを見て何故助かったと思ったのかは、ウシオ君に聞いてもらいたい。
要約:受け売りの知識とはいえ、それをちゃんと実践し役立てていたから。
総合点:1票 物語:1票
物語部門tsuna【
投票一覧】
「非常によく出来た講話のようなお話です」
2015年12月28日02時