老いて逝った父が置いていった遺産は売っても1000円ほどの値しかつかない古びた時計だけだった。
しかし、息子のカメオはその時計のおかげで巨万の富を得ることになる。
一体何故だろう?
15年09月26日 21:07
【ウミガメのスープ】【批評OK】
[牛削り]
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#span class='red'>私の父は60歳で亡くなった。この時私はまだ30歳であった。
細々とした自営業で、借金がないかわりに財産もなかった。
彼が私に残してくれたのは、現在の価値に直して1000円程度の柱時計ひとつだけ。
とはいえ、優しかった父の形見にと、私はそれを大事に使い続けた。
私が死んだのは98歳の年である。我ながら長生きしたものだと思う。
「おじいさんの時計」ではないが、父からもらった柱時計は私と生涯をともにしてくれた。
遺伝だろうか、私もまとまった財産などゼロに等しく、息子に残せるのは父から受け継いだ柱時計のみだった。
68年前、現在で言う1000円程度の価値しかなかった柱時計。
大事にメンテナンスを繰り返したことで、今でもまだ現役で動いている。
私の息子であるカメオは、この時計を鑑定に出した。
鑑定士は目を丸くした。
「あなたのお父さんは物を大事にする人だったんですね」
「ええ、尊敬すべき祖父と、自慢の父です」
時計はプレミアがついて数千万の価値だという。
カメオは祖父と父の小さな功績を偲び、時計を博物館に売却した。
今では多くの人々が、父・私・息子の3代に渡って時を刻み続けた古時計を鑑賞しに来るという。
【要するに】
私の父が置いていった遺産は売っても1000円ほどの値しかつかない古びた時計だけだった。
しかし、私の息子のカメオはその時計のおかげで巨万の富を得ることになったのである。
総合点:2票 納得感:1票 伏線・洗練さ:1票
納得感部門アアア【
投票一覧】
「こういう捉え方もあったのか!」
2015年09月26日21時
伏線・洗練さ部門エリム【
投票一覧】
「ラテクエという同一問題文から生み出される答えの違いは面白いものがありますが、この解答は単なる場面・設定違いにしないという見事な驚きになっています。そして物語としても整っている、見事な1作です」
2015年09月27日00時