蛍を見た事がないから見てみたいと言う女の為に、
男は女を蛍のいない都会に連れて行った。
一体なぜ?
15年03月24日 00:47
【ウミガメのスープ】【批評OK】
[のりっこ。]
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蛍が沢山生息する、清らかで自然豊かな田舎の村で仲睦まじく暮らしていた夫婦。
ある日突然、不慮の事故で記憶の大部分を失ってしまった妻。
自身の事も、夫と築き上げてきた様々な想い出のシーンも、
本当に色んな事を、妻は忘れてしまった………
夫『なぁ………覚えてるかな………
俺達が初めてデートした夜、 君と川辺を歩いた、あの夜。
沢山の、とても綺麗な蛍に、俺達ふたり 包まれていたよな。』
…………… 愛する妻の 返事は無い。
それどころか……………
妻『………あの、わ、私……………
あなた様と………あの………デート…?
デートなんて………していたの………ですか?
ほ…たる……… って…あ、あの……………
あの………ひ、光…る………キレイな…虫…ですよね?
確か、小さい…頃…? ず、図鑑か何かで…見た気がします…。
実際には………見た事がないので……… いつか………
いつか……… 見てみたいです………。』
妻が言い終わらないうちに、
夫は妻を、抱き締めていた。
強く、ただ強く。
夫は、愛する妻を、しっかりと抱き締めていた。
夫『俺が絶対にまた、君に綺麗な蛍を見せてやる。
また一緒に見るんだ。
また一緒に、綺麗な蛍を見よう。』
妻の柔らかで淡い髪の香りを感じながら、
夫は止めどなく零れ落ちる涙を噛み締め、決意した。
この田舎には、小さな診療所しかない。
都会へ行こう。 妻の記憶を必ず取り戻すんだ。
都会に蛍はいないと聞くが、
妻の頭の中の何処かに、俺達が見た蛍はきっといるんだ。
都会には、記憶障害の専門医もいる筈だ。
妻を、愛する妻を都会へ連れて行こう。
きっと治る。 絶対に治る。
『また一緒に、綺麗な蛍を見ような。』
総合点:1票 物語:1票
物語部門華【
投票一覧】
「問題にトリックもあって物語りも綺麗にまとまっていて良問だと思います。」
2015年04月28日23時