貧乏な訳でもないのに、
大事な時期の男にガム位しか与えてあげられないと思い悲しむ女。
一体なぜ?
15年02月05日 23:00
【ウミガメのスープ】【批評OK】
[のりっこ。]
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受験を控えた息子。
自宅にいる時は部屋に鍵を掛けて閉じ籠り、
ずっと机に向かってノイローゼ気味に勉強ばかりを続けている様だ。
心配する母親がドアの外から声を掛けてもろくに返事はなく、
時に“うるさい”“黙れ”“今大事な時期なんだ”と怒鳴り声が聴こえてくる。
食事をドアの外に置いておくからね、と声を掛けた時も、
“余計なお世話だ”“飯ぐらい自分でコンビニに買いに行くからほっとけ”と、
聴こえてくるのはそんな返答ばかりだ。
最近は、息子の顔すらまともに見ていない…
何が息子をこんな風に変えてしまっているのだろう…
“受験戦争”とは、
一体何なのだろう………
母親は心底悲しくなり、
いつまでも姿の見えない息子の部屋のドア前にへたりこみ、
せめて愛する息子の邪魔にならない様に、
ただ静かに涙を流した。
むせび泣く母親の膝先には、
ドアの下のごくごく狭い隙間からこぼれてくる微かな照明の光。
息子がいつまでも手を付けないままの冷めきった夜食を脇に、
座り込んだ母親は思った。
息子と私を隔てる、この僅かな隙間から私が息子に差し出してあげられるものは、
ガム位しか無いんじゃないかと。
静寂と、いつまでも溢れ出す涙。
母親は、まだ幼い頃の息子と手を繋いで微笑み合っていた日の小さな想い出を、
ただ締めつけられるばかりの胸に、そっと浮かべていた。
総合点:6票 納得感:3票 物語:3票
納得感部門からす山【
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「確かに、状況的に、ガム以外となると……ええと……どうにも思いつかないな……。ガムぐらいしかあげられない、でもそれならせめてガムでも……と悩み苦しみ悲しむ女の心情に納得です。」
2017年10月07日22時
納得感部門牛削り【
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「誰もが容易に想像できる光景。それは確かに、ガムくらいしか与えられない。」
2015年05月09日13時
物語部門からす山【
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「ガムぐらいしか与えられなくさせる、受験戦争の殺伐、切なさ、理不尽さ。胸がしめつけられるような思いをしながら解説を読むことになる人も多いことでしょう。」
2017年10月07日22時
物語部門からてちょっぷ【
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「たかがガム、されどガム。ガムが導く悲しい物語。切ないです。」
2016年01月24日12時
物語部門牛削り【
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「ガムしか与えられないことの意味に気づいた時、二人の登場人物それぞれの切なる思いが同時に判明します。物語をただ淡々と綴っただけの小説では、この地上から屋上まで一気に登り切ってしまうかのごとき感動は得られなかったでしょう。」
2015年05月09日13時