あるところに貧しい暮らしをしている夫婦がいました。
二人の名前はジョンとサラ。彼らは互いのことを深く愛していました。
ある日、サラはジョンのために長く伸ばした美しい髪をバッサリと切りました。
同じ日、ジョンはサラのために高価な時計を売りました。
彼らは幸せな生活を夢見ていましたが、二人ともほどなくして死んでしまいました。
状況を説明してください。
14年10月30日 18:47
【ウミガメのスープ】
[金田一]
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「いない振りしたって無駄だからな!必ず金は返してもらうぞ、身ぐるみ剥がしてでもな!」
ジョンとサラは借金に苦しんでいました。セオドアという男に騙され、高金利で金を借りてしまったのです。そしてこの男は金を回収するためならいかなる手段も用いるという、狡猾で残忍な男でした。
セオドアが帰ったのを確認すると、ジョンが言いました。
「もう限界だ・・・。さっきのやつは弱者から巻き上げた金で豊かに暮らしている一方で、俺たちはこんなにも苦しんでいる。不平等じゃないか。」
「あなた一体何を・・・」
「俺は明日あいつの家に行く。貧しい人々が本来持っているべきものを取り戻すんだ。そこで君にも手伝ってほしい。いや、ただ家の外を見張ってくれるだけでいいんだ。」
サラは迷いました。ジョンがどんな言葉を並べようと、罪を犯そうとしている事には変わりはないからです。しかし彼女は夫が苦しむ姿もこれ以上見たくありませんでした。彼女は決意しました。
翌日の夜、二人はセオドアの家に向かいました。その日にセオドアが家にいないことはわかっていました。
ジョンは上手く中へ忍び込み、金目の物を盗めるだけ盗みました。そして外へ出ようとした時、突然「誰!」という声がしました。
そこにはセオドアの妻がいました。ジョンは焦りました。(まずい、顔を見られてしまった。このままだと・・・)
彼はとっさに目に入った壺を手に取りました。そして・・・。
家から出てきたジョンを見て、サラは驚愕しました。ジョンの服が血に染まっていたからです。しかし立ち止まっている場合ではありません。二人は急いで逃げ出しました。
その翌日、町はその話題で持ち切りでした。セオドアの妻が殺されたこと、犯人は二人組で一人は髪の長い女だということ。どうやら目撃者がいたようです。ただ幸い、二人の顔まではわからなかったみたいでした。
サラはこのままだと自分たちが犯人であることがばれてしまうと思い、自慢の美しい髪をバッサリと切ってしまいました。
いえ、彼女は自分が捕まることを恐れたのではありません。むしろ罪を償おうとも考えていました。しかし自分のせいで、愛するジョンが捕まるのだけは許せなかったのです。
一方ジョンは手に入れた物、高価な時計や宝石などを売って金にしました。サラと幸せな生活を送るために。
しかし二人の時間は長くは続きませんでした。
「すいませーん。いらっしゃいますかー?」
玄関から警官の声が聞こえてきます。とうとう二人が犯人であることがわかってしまいました。
サラはジョンに言いました。
「私はあなた無しでは生きていけない。それにやっぱり罪を償わなきゃ。」
ジョンは静かにうなずきました。
二人は毒の入ったカプセルを同時に飲みました。その後警官が中に入ると、互いが互いを抱きかかえるように倒れている二人の死体があったそうです。
要約
・二人は強盗殺人を犯した。
・サラは目撃情報の特徴であった髪を切り、ジョンは盗んだ時計を売って金にした。
・犯人であることがばれ、また良心の呵責に耐えかねた二人は、自殺した。
総合点:1票 物語:1票
物語部門牛削り【
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「オマージュの妙とは、元ネタに存在するアイテムを"消化"することではない。それに新たな意味を与え、それなくしては成立しないほどそのアイテムに縋った真相を開発することである。この問題は「賢者の贈り物」の見事なオマージュの妙を見せてくれる。」
2015年04月28日21時