まさに大人の方々から見ると人生の最盛期のように映るかもしれないがそんなことはない。
そりゃ、彼女がいて「一緒にここの大学入ろうね」とか甘甘な青春を送っている奴がいるのかもしれないが、俺みたいに特に目標ややりたいこともなく、何のために学校に来ているんだろう……とかいまさらになって思いはじめている学生も、少数派ではないはずだ。
そんな時、席替えで俺の隣に座ったのは、郭 茜という女子だった。
確か今年から同じクラスではあったはずだが、隣になって思い返してみると、彼女とは会話という会話をしたことがないことに気付いた。
彼女はおとなしい性格なのか、あまり人と話しているのを見たことがない。
いつも休み時間には本ばかり読んでる───とまではいかないかもしれないが特に何の変哲もない、普通の女子……
それでも、俺は彼女について一つだけ知っていることがあった。
それは、彼女が極度の寒がりだということだ。
ふと、窓の外を見る。
まだ遠くの山のほうにチラッと紅葉が見えるが、もう秋の終わりも近そうだった。
ふと、これは彼女との会話のきっかけになると思った。
「このまま冬が来なければいいのにね」
「え……っ、な、なんで……?」
何でとは予想外の反応だ。
「だってこれからもっと寒くなるし。俺も寒いのは嫌いなんだよね~」
「……でも私、冬が一番好きだな」
それは、もっと予想外の反応だった。
「え? なんで……!?」
俺が驚いた表情で言うと、彼女はこちらを見て静かに笑った。
「理由、知りたい……?」
なんというか、今までに見たことがない彼女の表情。
少し恐ろしさも感じたが、俺は首を縦に振った。
「じゃあさ、当ててみてよ。私にYesかNoかで答えられる質問をして。それで、理由を当ててみてよ」
「は、はあ?」
そう言ってクスッと笑う彼女。
質問をして、一体どうして、彼女が冬が一番好きなのかを当ててみてください。
【ウミガメ】
寒い暑いは関係あります?
No! 茜「関係ないわ。だけどね……」 [良い質問]
郭さん、あなたは極度の寒がりですか?(女性を名前で呼べないシャイボーイより)
No!! 茜「違うよ、……別に、寒がりじゃない」 [良い質問]
「このまま冬が来なければいいのにね」とは今のご自身の心境ですか?
Yes! 俺「そうだよ」
名前は重要ですか?
No!
カニバリますか?
No! 茜「ちょっとぉ、真面目に質問してよ~」
あなたは厚着をしていますか?
Yes!! 茜「うん。見れば分かるでしょ?」 [良い質問]
郭さん ご出身は日本ですか?
No! 茜「生粋の日本人よ」
あなたは寒がりですか?
No!! 茜「全然」
冷たくなった手を彼氏のポッケに入れて「えへへ」ですか?
No! 茜「彼氏なんていないけど……」
腕をさする癖がありますか?
No!! 茜「別に、ないよ」
郭さんが、冬を好きなのは過去の出来事に理由がありますか?
Yes!! 茜「うーん、まあ、関係してるね」 [編集済] [良い質問]
あなたは生きていますか?
Yes! 茜「え? 何? 目の前にいてその質問?」
あなたは本当に人間ですか?
Yes! 茜「え? だから、地味に失礼じゃない?」
冬が好きなのではなくて、春夏秋が嫌いですか?
YesNo 茜「別に、好きでもなければ嫌いでもないかな……あ、でも、秋と春は好きかな」
熱燗に一杯がたまらないからですか?
No! 「未成年ですけど、え? なに? 君飲んでるの!?」
寒がりではなくて寒ガールですか?
No! 茜「ああ、なんだか寒くなってきた……」
冬になると服を重ね着など、いろいろ着られるから好きなのですか?
No! 茜「別に、おしゃれとか興味ないし……」
「なんで?」は何で私が見えるの?という意味ですか?
No! 茜「え? どうしてそんな実は死んでました、って落ちにくっつけたいのよ」
親戚に雪女がいたりします?
No! 茜「人間よ。ってもしかして今、親族バカにされてる?」
茜ちんは高校3年生ですか?
Yes! 茜「これでもクラスメイトなんだけど。ってちんってなによ、ちん、って!」
郭さんが冬が好きな理由に、他の人物は関係ありますか?
No! 茜「私自身の問題かな」
あなたはいつでもコートを着ていますか?
YesNo! 茜「これ、コートとはいえないかもね」
念の為、茜ちんは生きてますか?
Yes! 茜「ちょっとしつこいってばー」
厚着の理由は、長袖やタイツで何かを隠すためですか? [編集済]
Yes!!! 茜「……その通り」 [良い質問]
失礼なことを聞くようですが、長袖を着ることで昔受けた傷あとを隠していますか?
Yes!!! 茜「……何の傷跡だと思う?」 [良い質問]
寒がりじゃなのに厚着をしてるってことは、何かしらの理由があるの?
Yes!! 茜「まあ、理由がなければこんなかっこうしないよ」
夏でも長袖を着ていますか?
Yes!!! 茜「あなたも見てたじゃない。だから、『寒がりだ』って思ったんでしょ?」
冬だったら厚着していても不自然じゃないから好きなのですか?
Yes!!! 茜「その通りよ」 [良い質問]
昔つけた「Winona Forever」の入れ墨を隠していますか?
No!! 茜「ナニソレw でも、考え方は悪くないよ」
あなたは35歳のJKですか?
No! 茜「ちょっと話し合おうか。ん?」
茜ちんが読んでいる本は重要ですか?
No! 茜「関係ないよ」
昼と夜だったら夜の方が好き?
YesNo!茜「関係ないよ。でもどっちかって言うと、夜かなあ……」
戦争は関係ありますか?
No! 茜「この平和な日本で、関係を持つほうが難しいね」
家族とは仲がよろしいので?
Yes! 茜「まあまあ、かな?」
昔手術を受けたときの傷跡ですか?
No! 茜「なら、おおっぴらに出来るけど……」
昔女子プロレスラーだった頃の傷が残ってますか?
No! 茜「もう一回話し合おうか? ん?」
あなたはリストカットした事はありますか?
Yes!!! 茜「何でプロレスラーから当ててくるかな……まあ、ちょっとだけ違うけど、正解でいいよ」 [正解]
スケバn・・・中学の荒れていた時期についた傷を隠していますか?
YesNo 茜「あれは、荒れてたっていうのかなあ……?」
29より、その後、いろいろあってWino foreverに変えましたか?
No! 茜「君、それ好きだね」
スネに傷を持っていますか?
No! 茜「何でスネになったのさ」
生まれたころからその傷跡ってあったの?
No! 茜「ないよ、私がつけたの」
腕にあるツベルクリン検査の痕の6つの穴を使ってクリリンの絵を描いたのが消えなくて恥ずかしいのですか?
No! 茜「君、ちょっと表出る……?」
いじめの跡を隠せる厚着ができるからですか?
No! 茜「いじめの後は消えたよ……運よくね」
厚着だと、体のライン隠れますからね。わかります。ですか?
No! 茜「なんも分かってないよね、それ!」
根性焼きの痕ですか?
No! 茜「え? ナニソレ。1900年代の遊び?」
とりあえず、サッカーは冬ですか?
茜「うん、私野球派なんだよねー」
お腹が空いて自分の腕をつまんじゃった痕が残ってますか?
No! 茜「最後の最後までしつれいねー」
昔舞台女優だった頃照明が落ちてきて、顔に酷い火傷の後が残り、紅天女が演じられなくなりましたか?
茜「あなた、私のこと、どう見えてるの!?」
スカートをウエストで曲げるとくびれがなくなるのは重要ですか?
茜「もともとくびれてるもん!」
彼女はそう言って、少し寂しそうな顔をした。
正解を当てたのに、なんだか聞いてはいけない闇に触れてしまったようで……俺はなんて声をかければいいか分からなかった。
「中学生の頃、いじめられていてね……世界の何もかもが嫌いになったの。……今はこうして立ち直れて……後悔してる。だってもう、長袖しか着れないんだもん。ホラ」
茜がチラッとめくった手首から見えたのは、大きな傷跡だった。
「だから、冬は好き。夏だったらどうしても好奇の目で見られるし。リストバンドじゃ隠せない大きさだから……それに、やっぱり少し暑いしね!」
そう言って笑う茜。
だけど、僕はまだ気持ちが晴れない。
「……なんで教えたの?」
「ん?」
「隠すために、今まで長袖を着てたんだろ!? なら寒がりの振りをしてれば……」
「初めてだったから!」
「え?」
「こうやって、普通に話しかけてくれたり……私のゲームに付き合ってくれた人。あ、でも、35歳だとか、プロレスラーとか、実は死んでるんだーとか、失礼なとこもあったけどね」
「あ、ご、ゴメン」
「あはは、ウソ! じゃあ、私もう変える時間だから。またね! みん君!」
そういって、彼女は教室から出て行った。
あそこまで立ち直るのに、どんな苦労があったのだろうか……どんな出来事があったのだろうか……どんなイジメを……
「……やめよう」
これ以上の詮索は、誰も喜ばない。
お互いに傷つくだけだ。
真実は、求めてはいけないものもある……そう、彼女から教わった気がした。
ふと、窓の外を眺めて、気付いた。
「……雪だ」
冬が、来た───。
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