【無茶振り三題噺14】過去も未来も心の底はいつも一人

誕生日だが、祝ってくれる奴などいない。

そりゃそうだ。友人とは疎遠になってしまった。

家族にすら愛想尽かされているだろう。



もう、目出度いという歳でもないし、

ただ虚しさを確認しただけだった。



周りの反対を押し切って追いかけ続けた夢も、

薄々駄目だと気づいていた。

つまらない大人に成り下がった友人達を蔑んで、

意地を張り続けてきたのに、この様だ。



もう潮時か。

夢どころか生き甲斐も見失った。

鬱屈とした気持ちを誤魔化すかの様に始めたゲーム。

こんな物で暇を潰すしかない人生なんてうんざりだ。



後10分足らずで今月も終わり。

ぎりぎりまでゲームして、有料登録を解除しよう。

その後に…





その時、急に携帯が着信を告げた。

知らない番号だ。

切れるのを待つが、意外としつこい。



早く切ってくれよ！

登録解除が間に合わなくなるじゃないか。

今更そんな事でむきになるのも可笑しいが、

苛立ちながらも何故か電話を取ってしまった。





「カメオ！誕生日おめでとう！」



「……誰？」



「えー！カメコだよ！忘れたの？」





カメコは故郷にいる幼馴染だ。

上京してから全く連絡をとってなかったのに、

タイミングが良いんだか、悪いんだか…





「どうしたんだよ、急に」



「うん。カメオの誕生日だって思い出したから、なんとなく今なにしてるのかなって…」



「………」



「なんてね！おじさん達が心配してたから私が代わりに電話したんだよ。

たまにはさー、顔見せたらどうなの？」



「あー…うん、そのうち帰るわ」



「約束だからね！ じゃ、おやすみー」



「…ああ、おやすみ」





10月1日 AM 0:00:38。

カメコのせいで来月の有料登録も解除出来なかったし、

もったいないからもう少し頑張るしかねーな。



苦笑して、布団に倒れこむ。



いつまでも、うだうだゲームで遊んでた奴が良く言うよ。

電話がなくたって、どうせうっかり忘れたふりしてただろ。

貧乏性を言い訳にして、また同じ毎日を繰り返していたに違いない。



それでも…

脳天気なカメコにつられたのか、重苦しい気持ちが少しだけ軽くなった気がした。





明日も仕事だ。

俺は疲れた体を闇に沈めた。













【要約】

月末ギリギリまで遊んでから有料登録を解除しようと思っていたのに、

電話のせいで間に合わず、月契約の登録が自動更新されてしまったから。