【ラテクエ43-2】日頃の行いが大事です

「やっべー、寝坊した！遅刻だ～～～！」

今日は、会議の準備でいつもより早く出勤予定だったのに、いつもと同じ時間だ！

上着を掴み、ネクタイは首にかけたままで、とにかく駅へ向かって走る！

普段は通らない公園だけど、駅までの道のりの僅かなショートカットにはなる！

そう思って走り込んだ直後・・・



「あれ～？田中君～？」

と、聞き覚えのある声に呼び止められた。

急いでるのに、と思いつつ声の方を向くと、公園前交番の警官だった。

一瞬ギクリとしたが、人懐っこい笑顔を見てると

行きつけの飲み屋の常連客・カメオだとわかった。

「すいません、急いでるんで。また・・・」と行こうとすると、

「あれー？怪しいなぁ。僕を避けてる？」

ハッとした。服も息も振り乱して、道路ではなく公園を駆け抜けようとする男・・・

今の俺って、アヤシイのか！？

いや、まずい。捕まるとか、遅刻以上にまずい！と思った田中は、

「そんなことないですよ。ただ、電車に遅れそうで、急いでたんで。」

と、相手をすることにした。



「そんなことないじゃん？いつもよりちょっと早いくらいだよ。

いつも道路側から通勤してるの、見てるから知ってるよ？

あ、まさか・・・夜遊びして外泊？やるねぇ、この、このー。」

世間話で解放してもらえると安心した田中は、うっかり地雷の一言を口にする。

「まっさかー、僕なんて相手にしてくれる女性いませんよ。

　飲み屋やキャバクラの女の子ぐらいですよ、話し相手なんて。」

それを聞いたカメオ、顔色を変えて田中に突っかかる。

「はっ、まさか！僕のカメコちゃん（注・飲み屋のアイドル的存在）と昨夜、

どっか行ったりとかしたんじゃないだろうね！

ま、まさか、カメコちゃんに何かしたりしてないだろうね！？

それで今、僕を避けようとしたんじゃないだろうね！？」



「いや・・・何もやってませんよ。。。」

（何だよ、犯罪を疑われてんじゃないのなら、さっさと行かせてもらわないと・・・）

「じゃ、急ぐんで・・・」

「何？　逃げるの？

そういえば！この前、カメコちゃんの家の傍で、田中君に似た人を見かけたけど」

「いや、僕はそんなところへ行ってませんよ！」

「そんなところって、何で知ってるのさ・・？」

「いや、僕じゃないっすよ。」

（勘弁してくれよ～、マジ遅刻しちゃうって・・・）

延々小一時間、職務「外」質問攻めに遭わされた田中だった。



しかし、遅刻＆上司の大目玉の不安は田中の不幸の序章でしかなかった。







・・・その様子を目撃していた人物がいた。



ん？あれは、営業の田中じゃないか？

なんだ？職務質問されてるのか？こんな朝早くに？

あんなに慌てて、押し問答してるみたいだな・・・。



『何もやってません！』？

『そんなところ、行ってません！』！？

『僕じゃない』！？！？



・・・上着で隠れている手首は、・・・Σ(;ﾟдﾟ)もしや既に手錠が！？



いつか、何かやらかすんじゃないかと思ってたんだ。

痴漢とか盗撮とか下着ドロとか、けしからんことを。

む、いかん、これは・・・先手を打っといたほうが・・・。



『あ、もしもし、部長ですか？実はですね。。。』





30分後、会社から田中の机が撤去された。。。。