兎美ちゃんときらきーは一緒にご飯を食べていた
すると兎美ちゃんは突然怒り出し、
きらきーの持っているぬいぐるみを壊してしまう。
するときらきーはあることに気付き、泣き出した
状況を説明せよ
13年10月23日 00:10
【ウミガメのスープ】【批評OK】
[kirakoku]
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私の兄、水平亀夫は死んだ。きらきーを庇って、車に轢かれた。
きらきーが悪かった訳じゃない。仕方の無い事だったのだ。
たとえそこにいたのが見知らぬ人だったとしても、兄は助けに行っただろう。
しかし、きらきーは兄が死んだ事実に耐えられず精神が病んだ
ぬいぐるみに兄を投影して、ずっと妄想と幻覚に浸っているのだ
「ほら、亀夫君。あーん」
きらきーがスプーンでスープをすくい、
薄汚れたぬいぐるみに押し付ける
「美味しいかしら?」
…違う。兄はそんな汚いぬいぐるみなんかじゃない。
違う、兄が守りたかった人はっ、こんな狂った女じゃない!
私はきらきーの前からぬいぐるみを取り上げる。
まだ妄想に浸ったまま何も認識できていないのか
きらきーは持っているスプーンを行き場無く彷徨わせる
ようやく状況を理解できたのか、こちらを睨みつける。
「返して!亀夫君を返して!」
…返してほしいのはこっちの方だ!
あの時私をどれ程の絶望が襲っただろうか
だが、こいつは逃げた。過去に縋ったのだ。
私はきらきーの目の前でぬいぐるみの首を千切った。
きらきーの瞳が戸惑いに染まる
彼女にはきっと首の取れたぬいぐるみと亀夫君がどうにも結びつかないのだろう
私はぬいぐるみを床に放り投げ、スープをぶちまける
赤く、スープの色に染まる床に沈む首の取れた人形
あの日の光景がフラッシュバックする
きらきーの瞳が揺れる。
「ぁ…、ぃゃ…ぁあ、ぃゃぁぁ…」
「逃げないでください、目を逸らさないでください」
逃げるように、耳を塞ぎ、首を振る。
「いや!いや!いやぁぁぁぁっ!」
「兄は…亀夫君は、もういません!死にました!」
そして、幻想は崩壊した
「あああああああああああああああっっっ!!!!」
こうして彼女は過去を取り戻した。
やっと、兄がもう居ない事に気付き、泣き出した。
この後彼女はどうなるのだろうか
立ち直ることができるのだろうか
それとも、今度こそ壊れてしまうのだろうか
…きっと立ち直るだろう。
悔しいけど、兄が好きになった人なんだ。
だから、彼女は大丈夫。
総合点:2票 伏線・洗練さ:1票 物語:1票
伏線・洗練さ部門からす山【
投票一覧】
「この葛藤の物語を、この問題に仕上げたことが凄いです。それほどチャームとしては高くない問題からこの解説が出てきたとき、衝撃を受けました。あえて、完成度、高い、と言わせてください。」
2017年10月15日18時
物語部門からす山【
投票一覧】
ネタバレコメントを見る
「現実にもきっとあるのであろう、目を覆いたくなるようなつらい病気の話、一生このままなのかな……と思いきや、つらい現実をストレートに突き付けて立ち直らせるハードな物語でした。そもそも問題文からして、そういう物語であることは明かされているのですが、解説を読み始めた時には冒頭の解説の悲劇感に目が向き、その辺を失念していて、病気のバッドエンドにしか感じませんでした。そこから、こんな、もしかしたら立ち直れるかもしれない、ハッピーなのかもしれないエンドを見せつけられて、こういう病気を持つ人たちに対する、ある種あきらめにも似た感覚を、ひっくり返らせてくれたような気がしました。きっと、立ち直るのでしょう。自分もそう信じてみたくなりました。強くて深い物語です。」
2017年10月15日18時