動画内など、他所でラテシンの問題を扱う(転載など)際について
ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
いらっしゃいませ。ゲスト様 ログイン 新規登録
項目についての説明はラテシンwiki

ある王子の死(問題ページ

る王国の王子は、弱冠6歳にして王位を継いだ。
彼は容姿も声も大変美しく、そのカリスマ性は国の誰からも強く愛されていた。
心優しい召使いと大臣、強い国軍、明るい国民達と治安も非常に良く、王子はとても恵まれた生活を送っていた。

数年後、王子は自らの命を絶った。
物語を補完せよ。
13年01月31日 18:10
【ウミガメのスープ】 [Arcanum]



解説を見る
る王国の王子は、弱冠6歳にして王位を継いだ。
両親と4人の兄が、流行り病で次々と亡くなってしまったのである。
彼は容姿も声も大変美しく、そのカリスマ性は国の誰からも強く愛されていた。
心優しい召使いと大臣、強い国軍、明るい国民達と治安も非常に良く、
王子はとても恵まれた生活を送っていた。

国民達はその王子に強い同情を寄せていた。
年端のいかぬ美しい王子が両親と4人の兄を一度に全て失い、
王位後継者としての教育もほとんど受けないまま国王となったこと。
国民はこの幼き王を守ってやらねばならないという異様な信念を持ち始めた。
大臣達は王子が政治を動かせる人格者になるまで、代わりに国政を執り行うことになった。

王子は賢王となるための清く正しい教育を受け、真面目で聡明な少年に成長した。
やがて思春期を迎えた彼には国王としての自覚が芽生え始めていた。
そんな矢先、成長した王子は大臣達に黙って国政についての記録を初めて閲覧した。
そして彼は、そこに書かれていたことに言葉を失った。

そこには自国と貿易を結ぼうとして衝突した数々の異国を一方的に侵略して滅ぼしたことや、
その王族を見るも無残な刑に処したこと、その影響で他国との一切の交流が無くなったために食糧が不足し、
食糧を王族最優先にして国民が困窮した生活を強いられていること、
自国でデモが起こった際にその国民を武力で抑え込んだこと、他にも数々の残酷な記録がそこにはあった。
そのような政治はもう何十年も行われていなかったのに、それらの記録は彼が王位に就いてから急増していた。
王子は困惑して大臣に問い詰めた。
すると大臣は、とても優しい笑顔で言った。

『全てはあなた様のため。先代の王様と妃様、4人の王子達の美しい忘れ形見を守るため。
 そのためにこの国は強くなくてはならない、決して弱みを見せてはいけないのです。
 王が幼いことに付け込んだ異国も全て排除致しましたし、その国が復活することも二度とありません。
 食糧不足に関しましては、今自国で食糧生産をもっと盛んにできないかと国民が努力しております。
 一度は愚かにも信念を失った非国民が反乱を起こしましたが、今はもうご心配はいりません。
 そもそも、そやつらは少数派なのです。彼らは愚かで、あの武力制圧は正しかったと、今の国民達は思っております。
 王が健やかでいられることが国民の一番の願いなのです。皆あなた様を強く愛し、守ろうとしているのです。』

王子はただ絶望するしかなかった。
今までそんな話は一切聞いたことが無く、聞かせてもくれなかった。
自分は他国の侵略など望んでなどいない。ましてや、自国の民を手にかけるなど。
それも自分が幼かったせいで。国王としての意識がまだ幼く、国政に関われなかったせいで。
そして、全ての残酷な所業は、『愛する王子を守るため』という名目で行われていた。
本来なら自分が守らなければならない愛する国民達を、知らずのうちに手にかけていたのだ。

翌日、国民全員が傾聴するようにと強く命じられた王子の演説が行われることになった。
やがて国民の前に王子が現れると、彼は泣きながら国民に許しを請う言葉を叫んだ。
自分が幼いせいで、数えきれない犠牲が払われたこと。
一生償っても償いきれない、取り返しのつかないことをしたこと。
大臣や国民達は、王子が一体何のことを言っているのか全く理解できず困惑した。
その様子を見て全てを悟った王子は、懐に隠し持っていた短剣で自らの首を切って倒れた。


全てが狂った王国で、その狂気に過保護にされた王子は、ただ独りまともな存在であった。
総合点:1票  物語:1票  


最初最後
物語部門米野郎
投票一覧
「この終わり方が好きです」
2015年05月15日23時

最初最後