うわっ!くらえ[↓↘︎→+強パンチ](問題ページ)
とあるゲームセンターにて。
格闘ゲームで無敗を誇る猛者がいた。
彼は既に99連勝を達成しており、その勢いを止められる者など現れないと思われた。
この日、彼は100連勝目を賭けた大勝負に挑む。
「久しぶりだな。相棒」
そう言って彼は愛機に語りかける。
椅子に腰掛け、意識を目の前の画面に集中させる......ついに、勝負の火蓋が切られた。
戦いは熾烈を極めた。
焦りと緊張。猛者の全身を冷や汗が伝う。
彼は得意の必殺コマンドを入力し、一気に勝負に出た。
「ふぉぉぉおおおおお
おおおおお!!」
カチャカチャガチャガチャガチャガチャ
ガチャガチャ!!!
震える指で最後にボタンを押した後、猛者はついに敗れ、
歓喜の雄叫びをあげた。
さて、どういうことか。
17年10月19日 00:57
【ウミガメのスープ】
[野生のキャベツ]
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【解説】
猛者は就職活動中で、応募先の企業から吉報の電話があり歓喜した。
【以下、ストーリー】
猛者(42)は巷でもちょっと知られた誇り高きニートであった。
彼を有名にしたのは他でもない、”ゲーム”だ。
猛者は地元のゲームセンターに入り浸り、格闘ゲームに人生を捧げて久しい。
相手がヤンキーだろうが小学校低学年の小童だろうが手加減はしない。
その無慈悲な戦いぶりは観るものを遠巻きにした。
さて、そんな猛者にも転機が訪れようとしていた。
彼の経済的側面を全面に担っていた母親から勘当を言い渡されたのである。
「もうあんたに金はやらん」
母はそれだけ言うと猛者との一切の交易を断ってしまった。
すなわち猛者はすぐにでも働き口を見つけなければ下宿先の四畳半すら失うことになる。
彼は最新ゲーム『路傍の戦士2』の100連勝目を目前に控えていたが、就職活動のため中断することにした。
その日を境に猛者は生まれ変わったように努力した。
ぼさぼさの髪をポマードで撫で付け、慣れない剃刀で髭を剃り流血した。
一張羅のTシャツを着込み駅前の写真機で驚くべき不気味な写真を撮り、腱鞘炎になる寸前まで履歴書を書いた。
こうして無闇やたらと世に解き放った彼の履歴書はあらゆる企業を恐怖で震撼させたという。
履歴書を送って満足していた猛者はこの日、久しぶりにゲームセンターに足を運んだ。
「俺の100勝目の勝鬨をあげようぞ」
猛者が意気込みそう言うと、一人の修行僧のような若者がそれに名乗りをあげた。
猛者は相手を一瞥すると、愛機に語りかけた。
「久しぶりだな。相棒。ちょっと野暮用で無沙汰になっちまった。許せ」
こうして切られた勝負の火蓋。
猛者の圧倒的勢いの前に修行僧は劣勢を強いられていた。
しかしその勢いがある時をもってはたと止まったのである。
その時、猛者の身体は震えていた。
ブブブブブ......ブブブブブ......
(何だこんなときに......電話なんて誰からも来なまさか!)
そう。猛者は気付いたのだ。
この着信が履歴書応募先の企業からのものである、と。
彼の携帯はポケットの中でその振動を確かに刻み続けている。
こうなると最早ゲームどころではなく、猛者は焦り、緊張し、全身を冷や汗が伝った。
その当然の帰結として戦いは熾烈を極めることとなる。
焦った猛者は一気に勝負をつけようと、得意のコマンドを繰り出した。
「ふぉぉぉおおおおおおおおおお!!」
カチャカチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!!!
コマンドは成功し勝利を確信した猛者は急いでポケットから携帯を取り出した。
そしてその振動が伝わる指で、通話のボタンを押す。
「あ、もしもしー猛者さんのお電話で間違いないでしょうか?私株式会社カップコーンの採用担当の者ですがー」
「猛者だ」
「是非とも一度面接に来ていただきたいのですが、日程のご連絡を——」
「ォォォオオオオオ!」
彼が歓喜の雄叫びをあげていた頃、ゲームの画面上では猛者が修行僧のヨガの炎で焼き尽くされていた。
数日後、猛者は祈りを捧げられ鬼神のように強くなり、あっという間に100連勝を達成したそうだが、その後の彼を知る者はいない。
~ BAD END ~
総合点:1票 斬新さ:1票
斬新さ部門からす山【
投票一覧】
「えっと……何でしょうこれは……。よく分からないけど、いろいろと斬新。よく分からない勢いがあります。とりあえず読んでみてください。」
2017年10月19日21時