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ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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項目についての説明はラテシンwiki

そこから見上げたヒマワリは、とても大きかったのだ。(問題ページ

る夏の晴れた日。車椅子に乗った少女がヒマワリを見上げていた。

『向日葵』

それが少女の名前だった。


向日葵はヒマワリが好きだった。
向日葵の母親は、庭にヒマワリの種を植え、夏にきれいに開花するよう毎年育てた。
向日葵は言った。

「おかあちゃん。あたしこのヒマワリよりおっきくなれるかなあ?」


そして今、向日葵はヒマワリを見下ろしている。
嬉しそうに、枯れたヒマワリを見下ろしている。



どういうことか、状況を説明してください。

17年07月30日 20:06
【ウミガメのスープ】 [野生のキャベツ]



解説を見る
解説】

今、向日葵は宇宙から地球を見下ろしていた。
この時両者の間には数光年の距離があり、向日葵が見たものは数年前の地球の光景だった。
一方地球では母親が死に、向日葵がようやく見下ろせたと喜んだ満開のヒマワリは、もう枯れているのだった。



【以下、ストーリー】

ある夏の日。太陽の光に誘われて、一人の女の子が誕生した。
母親はその子に『向日葵』と名付けた。
ヒマワリのように伸び伸び立派に育ってほしいと。
それから母親は庭にヒマワリの種を植えた。
夏にきれいに開花するように、毎年育てた。

向日葵は生まれつき身体が弱く、車椅子で生活していた。
彼女はヒマワリが好きだった。
自分と違い太陽に向かってまっすぐに伸びるこの花は、彼女の憧れであり目標となった。
彼女は小学校に入る頃、ヒマワリを見上げてこう言った。

「おかあちゃん。あたしこのヒマワリよりおっきくなれるかなあ?」
「ふふ。きっとなれるよ。きっと、なれる」


それから何年か経ち、中学にあがった向日葵は新聞を読んでいて一つの記事に目を留めた。

“光速での移動に成功。新型宇宙船開発に向け実用化”

「宇宙......」

向日葵は呟いた。

「ん?何か言った?」
「おかあちゃん。私、宇宙飛行士になる」
「急にどうしたの?宇宙飛行士って、簡単になれないでしょう?身体も大変......」
「いいから!とにかくおかあちゃんはヒマワリ育てるのさぼらんといてね」

母親はこの時、向日葵が何をしようとしているのか理解していなかった。
ただひたすら向日葵は努力し、母親はヒマワリを育て続けた。

向日葵は宇宙飛行士の夢に近づくにつれ、母親と接する時間を減らしていった。
単に忙しすぎたのだ。
ついに夢が叶い、母親のもとを離れることになったときも、

「お母さん。行ってくるね」

そう言ったきりだった。


向日葵は母親のもとを離れた。
そして宇宙に飛び立った。
5年後の夏の頃、向日葵は地球から5光年離れた星の上にいた。
そこに設置された望遠鏡を覗く向日葵。
見るべきものは決まっていた。

「わぁ......見える......!」

向日葵はヒマワリを見下ろした。
自分の足で立って。
母親が育てた、庭いっぱいのひまわりを。


向日葵は母親のもとを離れた。
しかし母親はヒマワリを育て続けた。
毎年、毎年。向日葵がいつ帰ってきてもいいように。
向日葵が家を出て5年後の夏の頃、母親は倒れた。
向日葵に連絡はつかず、母親はそのまま息を引き取った。

向日葵が家を出るとき、母親は言った。

「お母さん。行ってくるね」
「ヒマワリみたいに、立派になったね」

そう言って、泣いたのだった。
今、向日葵は涙を浮かべ、その目でヒマワリを見下ろしている。
それは5年前の光。
向日葵が地球を、母親のもとを離れた直後の光だった。
向日葵は帰りの宇宙船に飛び乗った。
帰って、母親にずっと言いたかった言葉を伝えるために。

「お母さんが言った通り、私ヒマワリより大きくなれたよ」


枯れたヒマワリが待つ地球へ、宇宙船は動き出す。


総合点:3票  チャーム:1票  トリック:1票  その他:1票  


最初最後
チャーム部門からす山
投票一覧
「タイトルも問題文も非常に印象的で、謎とか抜きにしてもひかれます。なのでまずはチャーム部門に投票です。」
2017年09月07日22時
トリック部門からす山
投票一覧
「かなりベール厚めの、大掛かりなトリックがあります。好きな人はかなり好きなたぐいの問題でしょう。ぜひご賞味を。」
2017年10月26日19時
その他部門からす山
投票一覧
「チャーム、納得感、トリック、物語、いろいろな面が高いはずなのですが、それ以上に、何とも言えない雰囲気みたいなものが非常に独特で、いつまでも忘れられない話の一つです。同じ野生のキャベツさんの「大停電に見る光」と合わせて、ぜひどうぞ。その他投票です。」
2017年10月26日19時

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