私がカメコのことをもっと理解できていれば、カメオが死ぬことは無かったのだろう。
状況を補完してください。
17年06月09日 23:49
【ウミガメのスープ】
[貂馬]
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「私」は、都内一の進学校であるラテラル高校に受かるために、努力を重ねてきた。
小さい頃から親に勉強を強いられてきたけれど、元々取り立てて勉強ができるわけではなかった。
担任にはラテラル高校合格は厳しいとまで言われた私だったが、親がラテラル高校以外の高校への入学は許さない。
私は受験日まで死に物狂いで勉強した。
教室では男子グループに「ガリ勉」だと、馬鹿にされた。空の紙パックを投げられた。
女子グループはこっちをみてひそひそ喋っている。私の上靴はよくゴミ箱に入っていた。
でも、それでも、私は勉強しなければならなかった。すべては、受かるために。受からないと、誰も愛してくれないから。
受験日当日。不思議と緊張はなかった。あの地獄のような日々から解放される_____そう、思っていたからかもしれない。
【国語】大問4(5)
「上の物語の〇〇段落において、補欠メンバーであるカメコは、どのような心情で大会に出るカメミの背中を押したのだろうか。」
わからなかった。人の気持ちを考えるのはいつも苦手だった。わからない。カメコのことなんて私にはわからない。
結局、私はその問題を空白で出した。
そして、運命の合否発表の日。学校の黒板に貼られた受験番号。
私の番号は________無かった。
4回、見直した。私の番号は、どこにも無かった。まるで、居場所の無い私自身みたいだった。そんなとき、耳に入った男子の声。
「俺受かってるー!!っしゃあ!!!!!174点だったからダメかと思ってたんだけどw」
クラスメイトの、カメオの声だった。いつも紙パックを投げていたのは、彼だった。まさか志望校が同じだったとは思っていなかった。彼は受かったのだ。
私とは違って。
私は、173点。
……私がカメコのことをもっと理解していれば、私が合格していたのに。
違う。あいつが……カメオさえいなければ。私の方が頑張ってきたのに。許さない。許せない。私の未来を奪ったあいつは、許せない。
帰り道、気づけば私は彼の後を尾けていた。人気のない駅の階段で、彼はあまりにも無防備だった。
私は彼を突き飛ばした。
重力に従順らしい彼は、さかさまに堕ちていった。ぴくりとも、動かなかった。私は地面に広がっていく赤を、暫く見ていた。
はっとして辺りを見渡す。誰も、見ていなかった。私は逃げ出した。
(これで欠員ができるから、私は入学できる……)
そう信じて。
「邪魔なあいつの背中を押した私の心情は?」
総合点:1票 物語:1票
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投票一覧】
「初出題とのことですが、ストーリーも問題構造も大変秀逸だと思います。」
2017年06月10日11時