桜の木の下に制服のあの人がいた。
私を見ると、その人は謝まりだした。
なぜ?
嘘はありません(゚ω゚)よろしくおねがいします
11年04月02日 22:15
【ウミガメのスープ】
[きのこ]
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高校3年生の新学期の朝だった。
新入生歓迎会のために早め学校に来て準備をしていたら、突如先生たちが慌しく廊下をかけていった。
どうやら近くの桜並木に、ダンプカーが突っ込んだらしい。
登校途中の生徒が巻き込まれたと校内放送が流れ、あたりは騒然となった。
「春香!小山君もそこにいたって…!」
付き合い始めたばかりの彼の名前を聞いて、
私は教室を飛び出した。
現場は悲惨を絵に描いたような情景だった。
煙を上げて横たわるトラック。
真新しい制服に身を包んで泣きじゃくる新入生たち。
けたたましく鳴り響くサイレン。
根からなぎ倒されてしまった桜の木。
トラックから崩れた積荷と、倒れた数本の桜の木の下に彼がいた。
「ごめんな…俺どんくさくて」
私をみつけるなり、そう言った。
何謝ってんの?あの新入生たち、あなたがかばってくれたって言ってるよ。
「ははは…足、挟まっちゃって抜けねーんだコレ」
いつもそうやって人のことばっかり心配して、貧乏くじばっかり引いて。
謝んないでよ。バカ。あなたは何にも悪いことしてないじゃない。
「そこの女生徒!危ないから下がりなさい!!」
トラックから、炎が上がる。消防隊員の人が私を彼から引き離そうとする。
いやだ、いやだよ。やっと好きだって言えたのに。ようやく両思いになれたのに。
彼は最後にもう一度、口の形だけで「ごめんな」って言った。
…それから10年。
私は彼と娘と3人であの桜並木を歩く。かつての事故の面影など、もう微塵もない。
娘と手を繋ぎ、少し前を歩く彼の足には、引き攣れたような大きな火傷のあとがある。
もう少し時間がたって娘が言葉を理解するようになったら、私は真っ先に教えるんだ。
あれはパパが勇敢だった証なんだよ、と。
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