鏡を見た私は、
ああ、ほんとうのことだったんだなと思った。
どういうことだろう?
16年06月26日 19:51
【ウミガメのスープ】
[水瓶のスープ]
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親友のカメコちゃんは言いました。
○○○○○○○なんていないのだと。
そんなのは絵本や映画の中だけのつくり話だと。
その夜。
私は部屋の小さな樅の木を飾り付けました。
可愛いジンジャーブレッドのぼうやに、ステッキのかたちをしたキャンディー。
それから、優しいほほえみを浮かべる、彼の人形。
部屋を暗くして、色とりどりに揺らめく電飾の灯りを見つめていると
ほら、
素敵な魔法だって、当たり前に起こる気がするでしょう…?
キィ…と、部屋の扉が開きました。
彼だ。
疑いもなくそう思いました。
彼は煤けた赤いコートを手で払いながら入ってきましたが、私と目が合うと驚いた顔をしました。
まいったなあ、というふうに頭をかいて、
それから少しいたずらっぽい笑みを浮かべ、しーっと人差し指を口元に当てる仕草をしました。
「メリークリスマス、お嬢ちゃん。君は何が欲しいのかな?」
私は笑って首を振りました。
「いいんです、何にも。
あなたに会えたから。
あなたがいたから、それでいいんです。」
彼は、あのツリーの人形と同じにほほえんで頷きました。
そうして、私の頬をやさしくなでてくれました。
「私はいるよ。君らが信じてくれるかぎり。」
翌朝、洗面台の鏡に映った自分の顔を見て、私は気がつきました。
頬にうっすらとついた煤のあと。
あの温かい、大きな手を思い出しました。
私は思いました。
ああ、昨晩の出来事はほんとうのことだったんだな、と。
だから今でも私は、彼はいると信じています。
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伏線・洗練さ部門モニコ【
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「鏡を見ることが存在の証しになる。映っているものは間接証拠、という点にセンスが溢れています」
2016年07月30日03時