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ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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チェーンかスタッドレスタイヤがないとあぶない(問題ページ

つもなら歩いて行くようなスーパーに、
寒いから、とタト子は車で買い物に行った。

その間に夫のカメオが帰ってきたのだが、
車がなく右往左往しているカメオの様子を見て、
息子のシル太は悲しんだ。

お陰でカメオはクラスでからかわれなくなったというのだが、どういう事だろう?
15年05月04日 20:55
【ウミガメのスープ】【批評OK】 [セルス]



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解説が無駄に長いです。
要点は赤字で示しておりますので、面倒な方は赤字のみご覧ください。
また、一番下に要約版解説も掲載しております。



その日は雪がちらつくクリスマスイブだった。
小学生のシル太は休憩時間の最中、クラスメートたちとこんな会話を交わしていた。

-シル太、お前サンタさんなんて本気で信じてるのかよ?
サンタさんはいるもん!
 今夜だって、きっとプレゼントを届けに来てくれるんだ!
-ヒャハハ、だっせー!サンタなんていねーのによ!
 そんな子供みたいな夢を持ってるの、お前しかいねーよ!

クラスメート達にいくら笑われたって、シル太は信じていた。
サンタさんはきっといると。ただ、純真無垢に信じていた。



クラスメート達にからかわれた、いやな気持ちを引きずったまま、
シル太はマンションの一室にある自宅に帰ってきた。

-ただいま。
-おかえりなさい、シル太。
 帰ってきてすぐで悪いけど、お留守番お願いしてもいい?
-出かけるの?
-うん、折角のクリスマスイブなのに、ママったらチキン買うの忘れちゃって。
 これからスーパーに行ってくるわね。

そう言うと、タト子は車のカギを持って買い物に出かけてしまった。
いつもなら歩いて行くような距離なのに、
今日は雪も降っていて寒いから、と車で行くのだそうだ。

一人で留守番をしながらベランダに出て、
シル太は雪の降る景色をぼうっと眺めていた。
-今夜、サンタさんはきっと来てくれる。
 こんな雪なんてものともせず、トナカイにソリを引かせてやってくる。
 そして、僕の枕元に吊るした靴下の中に、プレゼントを入れてくれるんだ・・・

考え事をしながら、ふと眼下を見やると、仕事帰りらしい父のカメオの姿を捉えた。
どうやら、マンションの駐車場でオロオロしているようだ。
一体何を困っているのかと思いながら見ていると、ふと、父が手に持っている物に気付く。

-あれって・・・サンタさんにお願いしようと思ってたおもちゃ・・・?

シル太は、カメオには語った覚えがあったのだ。
テレビで放送中の特撮ヒーロー・ウミガメックの変身グッズ。
今年、自分がサンタさんにお願いしようとしていたプレゼントを。

どうして父がそれを持っているのか。
それは、シル太にとって信じ難い、信じたくない真実であった。

-・・・そう・・・か・・・
 クラスのみんなが言ってたように・・・
 パパがサンタのふりをして・・・これまでプレゼントを・・・

信じていたのに。
誰よりも純粋に、誰よりも真摯に、サンタの存在を信じてきたのに。



信じてきたものが、幻想として打ち砕かれた。



カメオは持っていた車のキーで車のトランクを開け、
夜、『サンタ』としてプレゼントを届けるまでの間、
トランクの中に『サンタ』のプレゼントを隠しておくつもりでいた。
しかし、タト子が車で買い物に行ってしまったために隠し場所たる車がなく、
プレゼントを持ったまま右往左往しているうちにシル太に見つかってしまったのである。



翌朝、枕元にあったものは、シル太が予想した通り、ウミガメックの変身グッズだった。



-シル太ー、サンタさんからプレゼントもらえたか?ヒャハハ
-いなかった。
-あ?
-そうだね。みんなの言う通りだったよ。サンタなんていなかった。
 ホント、僕ってバカだよね。
 いつまでそんなおとぎ話、信じているつもりだったんだろうね。
-・・・・・・お、おう

その朝、シル太はただ、感情を込めず、淡々とクラスメートに告げた。
強く信じてきたものが幻想と知り、シル太は失意の中に堕ちていた。
その変わりようは、これまでシル太をからかってきたクラスメートをも躊躇わせるほどだった。










その日の夜、シル太は夢を見た。
誰もいない、光も差し込まない真っ暗闇の中に佇んでいると、
何かの声が唐突に響いた。
『シル太くん、聞こえるかい?』
直後、シル太の目の前で光の粒子が生成され、
光は一つの何かを形作ったあと、一人の人物へと姿を変えた。
白い毛で縁取られた赤い服と帽子。長く生やした白い顎鬚。
-・・・サンタ?
シル太は呟いた。
『そう、私はサンタだよ。』
-・・・サンタなんていないよ。
 あなたは幻だ。いないものなんだ。存在するはずのないものなんだ。
 僕は、それを思い知ったばかりだもの。
『いいや、私はサンタだよ。ホレ。』
そう言うと、『サンタ』は持っていた白い布袋の中から何かを取り出した。
それは、実はシル太がもう一つ欲しがっていた、ウミガメックの武器のおもちゃ。
-・・・でも、これは夢だもの。
 僕が見ている夢。
 だから、僕にとって都合のいいものだけが姿を現す。
 現実にその姿を見せてくれたらよかったのに。
『そうだな・・・現実に姿を現すことは難しいかな。
 でも、ここでなら、いくらでも君の前に姿を現せる。
 君が夢の中にいる限り、私はいくらでも君の望む物を与えられるよ。』
-・・・本当に?
『本当だとも。ほら。
 サムライライダー・ウエスギの人形に、サソリハンター・オリオンの銃・・・
 他にも色々あるよ。』
-でも、眠りが覚めたら、夢も覚めてしまうでしょう?
『そんなことは気にしなくていいんだよ。
 君は、私が存在するこの世界の中にずっといることができる。
 この世界の中でなら、私は君の現実であり続けられる。』
-本当に?
『本当だとも。私は嘘はつかない。』
-わぁ!じゃあ、これからはずっとサンタさんと一緒にいられるんだね!
『ああ。そうとも。
                永遠にね』

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海亀病院・入院患者カルテ

氏名: 海堂 シル太

性別: 男性

年齢: 9歳

病状: 2014年12月26日より、睡眠から目覚めない

経過: 薬物治療など行うも、2015年5月4日現在、一向に改善の兆しなし




※要約版解説
タト子が車で出かけたせいで、
サンタとしてプレゼントしようとしていたプレゼントを車のトランクに隠すことができず、
そのために右往左往していたカメオがシル太に見つかったことによって、
シル太はサンタなどいない、と気付いた。

シル太はサンタを信じていることでからかわれていたのだが、
サンタがいないことに気づき、それをクラスメートが知ったのでからかわれなくなったのである。
総合点:1票  物語:1票  


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物語部門かきかき
投票一覧
「問題の本質部分も、オチも、シル太の心情が悲しくなるほどよくかけています。」
2015年05月04日21時

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