クラスメイトたちからのプレゼントには、それぞれの心を込めたメッセージが書き込まれていた。
ユイナちゃんは感激のあまり深くため息をつき、次の瞬間、涙を流した。
そのせいで、メッセージは読めなくなった。
ぬぐってもぬぐっても、あふれ出てくる涙。
ふいてもふいても、メッセージはもっと読めなくなる。
なぜだろう?
15年02月11日 15:21
【ウミガメのスープ】【批評OK】
[牛削り]
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ユイナちゃんが事故に遭い入院したことを知った4年2組のクラスメイトたち。
ガキ大将コハクの呼びかけで、夏休みにもかかわらず、全員が教室に集合した。
「みんなでお見舞いに行こう」と、コハクは言った。
「でも、おみやげはどうする?」と誰かが言う。
「花束がいいんじゃない?」花屋のルミちゃんだ。
「でも、お金がないよ」ホームレスの武田。
「じゃあ寄せ書きとかどう?」ガリ勉ヒサオ。
「芸がないなあ」ゲイの横山。
積極的に意見が出るのが、このクラスの長所でもあり、短所でもあった。
「よし、こうしよう」
コハクはひときわ大声を出し、加熱していく議論を止めた。
「花束の寄せ書きだ」
「お邪魔しまーす」
つまらなそうに病室の窓を見ていたユイナちゃんは、クラスメイトの声を聞き、パッと顔を輝かせた。
「コハク君、ルミちゃん、みんな……わざわざ来てくれたの?」
「みんなユイナのことを心配してるってことだぜ」
「ありがとう……あれ、ハルノブ君、ハワイじゃなかったの?」
「コハクから国際電話を受けて、緊急帰国したんだよ」
プロ雀士ハルノブは得意げな顔をする。
「そうだ、おみやげがあるんだぜ」
コハクの言葉を合図に、ファッションリーダーのヒトミが代表してそれを渡す。
「はい、窓際とかに飾ってね」
受け取ったユイナちゃんは、感嘆の声を漏らした。
「うわあ、素敵な花束……じゃなくて、えと、かざぐるま……束?」
「そう、かざぐるま束。みんなのメッセージが書いてあるんだぜ」
コハクが提案したのは、"手作りのかざぐるま"
めいめいが折り紙でかざぐるまを作り、矢羽にメッセージを書き込み、束にした。
束にまとめるのは、花屋のルミちゃんが担当した。
親友からの心を込めたプレゼントに、深くため息をつくユイナちゃん。
するとその息で、かざぐるまは回り出した。
メッセージは折り紙の色に溶け合い、読めなくなった。
「綺麗……」
色とりどりに回る、21本のかざぐるま。
ユイナは思わず、涙を流した。
その涙にハッとするコハク。ポケットから丸まったハンカチを引っ張り出した。
「使えよ」
「ありがと」
拭っても拭っても、溢れる涙。
吹けば吹くほど、回るかざぐるま。
「元気になれよ」
コハクの言葉に、クラスのみんなが頷いた。
ユイナちゃんはもう一度涙を拭いて、笑った。
「うんっ」
簡易解説
プレゼントは矢羽にメッセージを書いたかざぐるま。
吹けば吹くほど、かざぐるまが回ってメッセージは読めなくなる。
総合点:1票 トリック:1票
トリック部門からてちょっぷ【
投票一覧】
「真相につながることはちゃんと書いているのにもかかわらず、こんなに綺麗に隠して、私たちの目を核心から逸らさせてしまう。こんな問題が作れるようになりたいです」
2016年01月05日22時