コンビニに現れる男

とある金曜日の午前2時、A（男）は大学の友人たちと飲み会をした帰り道、たまたま大学近くにあるコンビニに立ち寄った。明日の朝食でも買おうと適当にパンを選び、レジへ向かった。その時レジ対応をしていたバイトのB（女）にAは思わず見とれてしまった。Bは直球でAのタイプだったのだ。



それ以来、Aは金曜日、午前2時になると決まって大学近くのコンビニへ向かう。目当てはやはりバイトのBだった。AはBの印象に少しでも残るように、頑張って世間話をしたり、商品を受け取るときに笑顔で「ありがとう」と言ったりするようにした。AがBに何か話すとき、いつもBは笑って聞いてくれていて幸せな気分になれた。



そしてBに完全に恋してしまった事に気付いたAは、思いきった行動に出た。Bにいつものように会計をしてもらうと同時にAの携帯のメールアドレスと一言「あなたが好きです」と書いたメモを渡した。そして帰り際に「よかったら返事ください。」と伝えたのだ。

帰り道、Aは意気揚々としていた。自分の気持ちを伝えることができ、すがすがしい気分になれたのだった。



一方、メモを渡されたBにとっては正直迷惑な話だった。実は以前からAが嬉しそうに何回も話しかけられていた事でAは自分の事が好きだということに薄々気付いていたのだ。しかし、BにとってAとの会話はつまらないものだった。愛想笑いにも疲れてきていた。何より仕事中に話しかけられても面倒なだけだった。ただこうなった以上、全く無視するというわけにはいかない。何しろ相手は毎週毎週コンビニにやってくるのだから。



「これからどうしよう・・・。」



　この日以降、やっかいな客に惚れられてしまったBはAとの関係に頭を悩ませる日々を過ごすことになるのだった・・・。