「永久の夕焼けと紅の少女」

学校の、帰り道…　急いでいた少年は、近道の山道を通っていた。



…夕焼けに染まる山肌の半ばで、絵を書いている女の子がいる。



…少年は、その正体を知っていた。

雨や曇りの日は出ないが、夕日が出ている時には、必ずいるらしい。

一度であったら、少女が許可しない限り、帰ることはできないらしい…！



振り返った彼女は…　　想像以上に、きれいだった。



「ねぇ、絵は好き？これはね、夕焼けの絵よ。夕日に照らされたこの光景が、いつまでも終わらないように願いを込めて描いてるの…」



見せてもらったその絵は…あまりにも、真っ赤だった。

いや…夕焼けって言うか…この赤さは、まるで…！



「ね、ねぇ？夕日だったら、オレンジ色とか混ぜたほうが温かみが出るんじゃない？これ…何を使って描いてるの？」

「…いいのよ、これで。この夕焼けが、いつまでも続くように、この色を使ってるの…そう、いつまでも、暮れないように…」



「でも、そうね…同じ色使ってるから、すぐ無くなっちゃうのよ。…早速、あなたから頂こうかしら…ねぇ、貴方の血…くれない？」



やっぱり！　使われていたのは、血だったんだ。

古い絵は、黒ずんで夜の絵のようになっていた。



新しい絵を描くたびに、新たな犠牲者から血を奪っていたんだ…



だが、少年はそのことを知っていた。

山道を一人で通ると、少女に呼ばれるという噂を。

無事に帰るためには、紅のクレヨンをポケットに入れておくといいらしい。



「血をくれない？」と聞かれたら、「もっと可愛くお願いして！」というのだ。

そうすると、彼女が「くれないの？…くれよん♪」と言ってくるので、すかさず紅のクレヨンを渡すと逃げることができるらしい…





「あら…でも、これでもいいわ。これでしばらく、この夕焼けを描くことができる…」

彼女もまんざらでもないらしい。



そうして、絵がまた色あせる頃、次の犠牲者が「呼ばれる」のだ…。