ゴルゴンゾーラ・アニバーサリー

「あなた、ゴルゴンゾーラあるけど食べる？」

アヤノは風呂上りの夫のダイチに声を掛けた。

「いいね。こないだのワインと一緒に味わおう」

チーズに目がないダイチ、髪を乾かすのもそこそこに、脱衣所から戻ってきた。

アヤノはチーズを切って、ワインと一緒に出してやる。

「お前は食べないのか？」

一人分のフォークを見て不思議に思ったのか、ダイチはそう尋ねてきた。

「あ、うん、ちょっとお腹いっぱいで。ワインだけにしとく」

「そうか、俺だけ悪いな。じゃあ乾杯」

「乾杯」



賞味期限切れのゴルゴンゾーラにかぶりつく夫を見て、アヤノは密かに思った。

（味は問題ないようね。でも念のため明日まで待って、ダイチがお腹を壊さなかったら食べよう）



明日は土曜日。

会社は休みだから、体調を崩しても欠勤の心配はない。

夫想いのアヤノの、素晴らしい心遣いである。





「この味がいいね」

「そう、良かった。じゃあ今日はチーズ記念日ね」









【要約解説】

賞味期限切れのゴルゴンゾーラを夫に食わせて毒見させるアヤノ。

すぐには結果が出ないだろうから、念のため明日まで待つことにしたのである。