気まぐれサラダ

男はいつも同じ職場で仲のいい社員達と一緒に昼食を食べていた。

男は自分で弁当を作り昼食の食事代を浮かせていた。



そんなある日、

「あっ、お箸忘れちゃった…。」



そう言ったのは、男の隣に座る女子社員だ。

彼女は今年入社したばかりにもかかわらず

実家に仕送りをしているしっかりものだ。

しかし、仕送りをするためには普段から節約をしなければならないわけで、

彼女も男と同じように手作りの弁当を持参することで、

昼食の食事代を浮かせていた。



彼女が普段から健気に努力していることを知っている男は、

辺りを見回してサラダを食べている社員を見つけると、



「あっ、海野くんのサラダうまそー！それってそこのコンビニのだよね？ちょっと買ってこよ！」

と言ってコンビニへ走った。

そしてサラダを大急ぎで買ってきた男はこう言った。



「やべっ、割り箸断るの忘れた！あっ、そういえばさっき箸忘れたって言ってなかった？良かったら使って！」



男は袋から割り箸を取り出すと、隣に座っている女子社員に手渡した。

男はサラダが特別好きな訳ではなかったが、

女子社員が先輩である自分に余計な気を使わずに済むよう、

たまたま近くの社員が食べていたサラダを選んだのだった。



「あっ…、お箸…！ありがとうございます！」



女子社員は男に感謝して、弁当を食べることが出来た。

男も割り箸を貰う口実にしたサラダを食べた。



次の日から女子社員が箸を忘れる事はなく、

男がサラダを買いに行く必要も無くなった。