ヒウィッヒヒー

俺の名はカメオ、かつては美大に進学し画家を目指した男だ。

まあ、今はしがない一介のフリーター。絵は趣味だ。



今日はバイト帰りの真っ暗な夜道、幻想的な風景を見かけた。

池にきれいな満月がポッカリと反射して浮かんでいる。

「あ～、今度はこれを絵にしてみようかな？」そう思い、携帯で写真をとった。



家につき、PCに画像を転送してモニターに映す。

これを、見ながらイーゼルに立てかけたキャンバスに描き込んでいくためだ。

まあ、本来なら感動したその場に出向いて写生すべきなんだが・・さすがにこの糞寒い中そこまではしたくない。

・・・まあ、そう思っちゃう程度の根性の無さが画家になれなかった原因なのかもなぁ・・

そう思いつつ、モニタに映った景色をキャンバスに描く落としていく。



思ったよりも熱中してしまったようで、喉の渇きも気にせず、ペットボトルを開けることもなく描き続ける・・

夜の絵だけにキャンバスはどんどん暗色にうめつくされていく。月とその反射だけが煌々と明るい　そんな絵だ。

気が付くといつの間にか寝ていて朝になっていた。



「・・え！？今何時だよ！」

時計を見て真っ青になり急いで着替えて

とにかく今日のバイトに遅刻しないようにそのまま部屋を飛び出した。



・・・その日の午後・・・

バイト帰り、今日は早めにバイトが終わったので、久しぶりに友人と呑みにでも行こうかと考え

連絡を取るために携帯を取り出す。

すると・・twitterはすでに友人たちからダイレクトメッセージまみれだった。



■お前んち今炎上中。すぐ帰れ。

■お前んちの方に消防車いったけど。燃えてんのお前んち？

■なんか火事みたいだけどぶじかー？

：

：



急いで帰っていると、まさにアパートは大炎上中で

消化後、どうも火元は俺の部屋らしく消防士に心当たりを聞かれた。

前の日にやっていたことをおもいだしつつ逐一説明していくと



「あー。もしかして収斂火災かもしれませんねぇ。水が入ったペットボトルが凸レンズになって

キャンパスに焦点があって自然発火したのかもしれません」



だそうだ。



あー・・のどが渇いてたんだから、ちゃんと飲み干しておけばよかった。そう後悔したが

まあ後の祭りでした(´・ω・｀)