人形好きだよ！兎美ちゃん！

人を模した形に切った紙を少年の胸に当てる。

苦しげに荒げていた少年の呼吸はそれだけでみるみる収まり、穏やかな顔で眠り始める。

それを確認すると、彼女は少年の胸に当てた紙人形を剥がす。白い紙でできた紙人形の胸は、そこだけがどす黒く変色している。

紙人形を破り捨て、彼女は両手を差し出す。



「はい、終わり。病気治したからぎゃらんてぃぷりーず」



ここは少女の生家。

平安時代から続く旧家の屋敷で、今ではすっかり少なくなった…科学とは異なる技術を継承する場所。

少女はここで、現代の医療ではどうにもならない病に冒された患者を相手に治療を行っている。

代金はそれこそ法外だが、たとえ末期の癌であっても癒せる彼女のもとに客は絶えなかった。

体の悪い気を、身代わりの紙に移して癒す。

人形（ヒトガタ）を使わせたら右に出るものなしの陰陽師。

彼女の名は兎美ちゃんといった。