密やかな悪意

私の夫は会社の社長だった。

昔は家族想いの良い人だったけれど、会社が大きくなるにつれ徐々に家庭を顧みなくなった。

私には暴言まで吐く始末・・・私はこれまで必死になって家庭を支えてきたというのに。

耐えかねた私は、何とかしてあの人との関わりを絶つ方法を考えた。



－離婚する？

でも何の理由もなしに離婚は難しいだろうか。調停には時間もお金もかかるかもしれない。



－いっその事、あの人を殺してしまうか？

確かにそれは手っ取り早いけれど、殺人の罪で捕まってしまったら一生を棒に振ることになりかねない。

私にはそこまでの度胸は無い・・・



ふと、ある計画を思いついた。それは、あの人を死に至らしめる計画。

時間はかかるだろうし、確実な方法とも言えない。

でも成功したところで、私が罪に問われることはきっとない。

このまま指をこまねいているよりはマシだろう。そのぐらいの気持ちで、私は計画をすぐに実行に移した。



家で台所を預かる私。

あの人は外食することもあるけれど、食事は家で摂ることも多い。



私が思いついた計画とは、あの人に不健康な食事をさせて、早死にしてもらう事。

油分や塩分をバレない程度に敢えて高めにした。

怪しい農薬の使われている野菜や、食品添加物を含む加工食品を、わざと料理に使うようにした。

あの人は何も疑う事無くその料理を食し続けた。



成果が現れたのは意外と早かった。

それから数年後の現在、あの人は病死した。



私は合法的にあの人を死に至らしめたのだ。

病死は病死。殺人になんてなりっこないのだから。