私は悲しい。

私はＢ君に、毎日毎日いじめられていた。いきなり殴られた。蹴られた。教科書に「キモイ死ね」と書かれた。

数万円単位でかつ上げされた。みんなの前で全裸にされた。人間サンドバッグのように扱われた。

誰も見て見ぬふりだった。



私は引きこもった。



私は何とか外に出ようと思ったが、苛められたトラウマで結局外に出ることはできなかった。





それから十年の時が立った





私は引きこもりのままで、全く社会性のない、コミュ症で、人間不信で、ネットで人を叩くことしか能のない、親不孝のクズニートになっていた。引きこもっていた私は本来得ていたであろう色んなものを失った。

Ｂ君は更生して、結婚して子供もいる立派なサラリーマンになっていた。







ある日ニートの私が部屋でＴＶを見ているとあるニュース番組がやっていた。

「いじめで自殺。」。ニュースはその話題で持ちきりだった。

コメンテーターと言うコメンテータが全員いじめっ子を叩いていた。

ネットではいじめっこが晒されていた。

自分がいじめられた時には、周りの誰もが何も言わなかったのが、まるで嘘のようだった。

私はコメンテータの言葉を信じた。「苛める側が悪いんだ！社会もみんなそう思っているんだ！」と私は思った。

私は久しぶりに部屋を出た。







私は部屋を出て家族に言った。「私がニートになったのはＢ君にいじめられたせいなんだ！」

「苛められてなかったら自分も立派な人間に育っていた！」。







家族は私に言った。「久々に部屋から出てきたと思ったら、いい年してそんなことしか言えないのか」

「Ｂ君は立派に結婚して働いて子供もいるのに、お前と言ったら。いい年して何でも人のせいにするな！」









私は十年ぶりに家を出た。Ｂ君に復讐するために。



私は会社帰りのＢ君を強襲した。



殴ってやった。蹴ってやった。カバンに「キモイ、死ね」と書いてやった。財布からお金を抜き取ってやった。

服のボタンを引きちぎった。

しかし引きこもって筋力のない私が何をしてもダメージはほぼなかった。





私は周りの人間に抑えられ警察に突き出された。



私は警察に「昔いじめられた復讐だ！」と言ったけど、

警察には「いい年してそんな事しか言えないキモイ電波ニートの逆切れ」としか思われなかった。





Ｂ君は軽傷で、次の日から同じように生活した。





私は「無職男の暴走」として本名と顔付きで全国に大々的に報道された。

糞ニートに残されていた「いつかは社会復帰できるかもしれない」というわずかな可能性も失った。家族にも絶縁された。





私は考えた。苛められて自殺したら相手が叩かれるのに何で僕は。私と自殺した子は何が違うのか。

私は気付いた。

私も自殺すればいいんだ。

自殺すればみんな僕の味方になってくれるんだ。

私は自殺した。



ニュースでは「無職男の暴走。」の後に「意図不明の自殺」と付け加えられた。Ｂ君は反省したけど社会は何も変わらなかった。