密室殺人

「なんだ、お前たちは！　Ａ、恩を仇で返すつもりか！？」

　Ｏは自らの書斎に押し入ったＡ、Ｂ、Ｃの三人を睨みつけた。Ａの手にはナイフが光っている。

「いやぁ。利害が一致したものでねぇ？　あなたがいなくなれば私が社長だ。それに、あの事業を進めればわが社はもっと躍進できるのだ！　それを下らないなどと……」

　Ａはナイフを握る手を震わせる。

「何をふざけたことを。私を殺したところでどうせお前は無能だ」

「……！　何を言うか！」

「まぁまぁ、抑えなよＡさん。どうせこいつがいなくなればあんたを無能なんていう奴はいなくなるでしょ」

　Ｂはそう言いながら、Ｏの座る椅子を蹴り飛ばした。

「あんたが死ねば、借金の話はチャラだ！　借用書なんかも書いてないしなあ？　ハハッ！」

「Ｏ、お前……」

「ククッ。僕の益のために死んでくださいよ。ほら、Ｃ君、取り押さえなよ」

「……はいッ！」あ

　Ｂの言葉におびえるようにして返事をしたＣは、Ｏの後ろに回り、羽交い絞めにして立たせた。

「Ｃ、お前、娘との結婚は私を殺しても成らんぞ！」

　Ｏの言葉にＣの身体が跳ねる。

「いいんだよ、これで。あんたがいなくなりゃ……」

　Ｃの顔は悲痛であった。

「じゃあ、さよならですね。Ｏ社長！」

　ＡはＯの首筋にナイフの刃を立て、引いた。

　瞬間、Ｏの目が見開かれるが、すぐに力を失い、崩れ落ちる。

「よし、鍵閉めろ。出ましょう」

　Ｂの声とともに、ＡとＢは書斎の外に出、Ａは持ってきていたゴルフバッグの中へとナイフを放った。

　カチャリ。Ｃは書斎の中で鍵をかけた。

「Ｏ！　Ｏ！　どうした！　くっそ！　ドアを破ります！　Ｂさん、手伝ってください！」

　その声ののちに何度かドアにぶつかる衝撃音が聞こえた。

　ドアが破られるとＡとＢは書斎になだれ込み、Ｏに駆け寄る。

「おい、Ｏ！　どうした！」

「社長！」

　二人の白々しい演技にＣは戦慄した。

「Ａさんどうしたの！？　え――？」

　Ｏの娘と妻が書斎に入り、声を失う。



　この後ＡとＯのゴルフバッグは融通の利かぬ宅配便の職員によってゴルフ場へ届けられ、中のナイフは処分された。



　この後、詭弁による密室が駆けつけた捜査員に語られた。



　ラテシンユーザーたちの協力により、ＡＢＣは逮捕された。