野良犬

家主は毎日テラスで紅茶を飲んでいた。その家主は高貴な感じの方で、テラスからは大きな庭が見え、他の住宅は全く見えず、小鳥の囀り(さえず)や風の音は楽しんで毎日を過ごしていた。

…そんなある日、いつものように家主は紅茶を入れていた。

家主はその日気分転換でテラスではなく家から離れた庭の真ん中にレジャーシートを敷き、紅茶を楽しんでいた。



暫くすると何か違和感を感じ始めた。いつも花のような良い香りが漂う庭に、何か異臭が…。

家主は後ろを振り向いた。すると納豆のような強烈な異臭が一層増した。

目に飛び込んできたのは大型の野犬たちだ。しかも５，６匹程度いる。何時の間に侵入していたのだろうか？

犬たちの目は血走っていて、どれも口角から涎が滴っていた。

家主は咄嗟に身の危険を感じ、お気に入りのティーカップをそこに置いたままにして家に駆けだした。

野犬達は家主を追い駆けだした。ティーカップは野犬に蹴られ、土の上をゴロゴロ転がり、やがて割れてしまった。

家主は途中足が縺れ不幸にもこけてしまった。足を擦り剥き、血が出てきた。

すると野犬達は血の匂いにかられ、より攻撃的に、より腹を空かせた体に血と肉を求め始めました。

野犬は家主がこけた隙に素早く家主に集り、服ごと肉と骨を引き裂き始めました。

それも四方八方からだ。



…言うまでもなく、今の結論に至る。犯人は、血と肉をその体内に収めた野犬達であった。



これでは裁判にかけられても、どうしようもない気がする。なぜなら、人間ではないから…だ。