魔球

「お父さん、遊園地連れてってよ！」

プロ野球界のスター、中島茂男（３４）。

彼には息子がいたが、多忙によりなかなか遊んでやることができなかった。



「ごめんなあカズ茂。ちょっとお父さん忙しくてなあ」

「じゃあ勝負してよ！野球で勝負！僕が勝ったら遊園地連れてってよ！」



茂男は自分が息子に負けるわけがないと思い承諾した。



「じゃあ僕が放る玉を打てたら僕の勝ちだよ！」



カズ茂はまだまだ野球に関しては素人。

茂男に打てないはずがなかった。

二人はグラウンドに立った。



バットを構える茂男。

カズ茂はボールが届くくらいの距離から玉を放った。



遅い、遅すぎる。

茂男はその玉をしっかり見定めて、フルスイングした。

バットは玉の真芯を捉えた後・・・・、玉が消失し、空振りとなった。



実はカズ茂、野球のボールは使わずに、シャボン玉を父に向かって飛ばしたのだ。



「お前・・・、そりゃねえよ」

「だってお父さんと絶対行きたかったんだもん！」



結局茂男はカズ茂の熱意に負け、二人で遊園地行ったようだ。

そして今度は真剣勝負ができるように、毎日息子と練習するようになった。