東日本大震災。
倒壊した家屋の中で、田中は視力と、妻を喪った。
一人生き延びた田中はそれ以来ずっと右手だけ手袋をしている。
いったい何故?
鬼を封じていますね?
オゥ!中二病!
「田中」は人間ですか?
YES!
左手も失った田中は右手に結婚指輪をして手袋をすることで紛失しないようにしてますね?
NO!
田中は右利きですか?
YES!
妻の手の感触を忘れないようにカバーしていますか?
YES!!! 正解です!!! ありゃ、メッチャはやかったw [正解]
妻の右手を少しづつ栽培していますか?
怖い! ホント怖い!
右手は怪我をしていますか?
NO!!! [良い質問]
最後に妻を触った手を洗わないで保護しているので異臭がしますか?
YES!!! くっさいです! 正解!!! [正解]
目が見えなくても運命の赤い糸は繫がっているのでそれで手袋を編みましたね?
なんか素敵な話やないか!
もしも妻が生きていたならば田中は手袋をしないのですか?
YES!!! [良い質問]
その手袋は妻で作った手袋ですか?
怖い!また怖い!
視力を失っていることは重要ですか?
YES!!! [良い質問]
等価交換と人体錬成は重要ですか?
だから怖い! 三度怖い!
視力と妻以外にも、「田中」は何か喪いましたか?
NO!
視力くんは田中の一人息子ですか?
それで目が悪かったら息子グレるぞ!
東日本大震災以外の大震災でも成立しますか?
YES!
妻の右手だけ瓦礫からはみ出していたので、保存していますか?
怖いのばっか!
田中が視力を失った理由と妻を失った理由はどちらも、倒壊した家屋に潰された外傷が原因だと考えていいですか?
YES!
家屋が倒壊せず、妻と視力を失っただけ(だけというのも酷い言い回しですが)でも右手に手袋をしますか?
NO!!! [良い質問]
サンドイッチを妻の手に選ばせますか?
選ばせなーい
目が見えなくなったので自分一人じゃ片手でミトンが外せないのでそのままにしていますか?
しなーい。
手袋の中に妻の左手を忍ばせて恋人繋ぎしてますね?
怖いの通り越してドン引きだよ!
その袋は妻だったものですか? (((;゚д゚)))
その袋ってなに怖い
右手を模した孫の手にカバーをしていますか?
ひーまじーん
わかぁ~たのです! 妻と言うのは田中の右人差し指(妻指)のことで指がないのが恥ずかしくて手袋で隠していますね! (゚∀゚)
なにその顔文字w 目以外は五体満足!
妻は二次元の存在ですか
悲しすぎるだろ!
23革袋となった妻の皮膚ですか?
やっぱ怖いやつやないか!
点字を左手の指で読みますか?
そんな感じっす。うん。
妻とはあの伝説のボクサー「ピストン吾妻」の事ですか?
無理くりすぎるだろ!
視力を喪った分、触覚は敏感になりましたか?
NO! 目が見えないぶん、他の思い出が大事になったんですね。
わからぬ!
オッケー! ちょっと長いけど解説読んで!
東日本大震災は田中が引き起こしましたか?
んなことぁない。
東日本大震災。
35年ローンの慎ましい佇まいのマイホームで、
田中夫婦が営んでいたささやかな幸せが一瞬で崩れさってしまった。
倒壊した家屋の下敷きになってしまった二人。
足場が崩れ落ちた時に気絶して、それからようやく目を覚ました田中。
今目の前が真っ暗なのは、瓦礫が日光を遮っているのではなく、
瓦礫の破片が目に突き刺さってしまったからであることに気付いてしまった。
不幸中の幸いなのか、目以外に怪我はなかった。
しかし瓦礫に挟まれて全く身動きのできない状態だった。
田中は自分の視力が失われたこと、身動きがとれないこと以上に大きな不安を抱いた。
妻は、どこだ?
そう思った瞬間、田中の身動きの音に混じってか細い声が聞こえてきた。
妻の声だ。
田中は必死で妻に呼びかかけた。
目は見えないがどうやら妻は近くにいるらしい。
妻も同じく瓦礫に挟まれており、身動きが取れない状態だった。
そのか細い声を頼りに田中は唯一可動範囲の大きい右手を妻の方に伸ばした。
右手に感じた頼りない温もり。
田中は妻の手をみつけて、それを握ることができた。
妻がここにいる。繋がった手から放射線状に安堵が広がっていくような感じがした。
どちらも動けない。大声で叫んでみたが誰一人応答するものはいなかった。
助けを呼ぶことを諦め、二人はとりとめのない話をはじめた。
どれだけの時間が経ったであろうか。
二人の会話も止まってしまっていた。
心なしか妻の手が冷たくなってきたように感じる。
田中が不安を感じていると、妻からしりとりをしないかと持ちかけられた。
二人は遠距離恋愛だった。
電話での会話が二人を繋ぐ唯一の手段。
話題が尽きて沈黙が続いた時。
話すことはないけど、でもまだ繋がっていたい。
そんな思いが溢れてしまい、田中は「しりとりをしよう」と小学生のような提案を妻にしたのだった。
終わることのないしりとり。
時には徹夜してしまうこともあり、登ってくる朝日に気付いて二人でゲラゲラと笑いあった。
田中も妻もその時のことを思い出していた。
妻からの提案を受けた田中は
「じゃあ、僕から・・・地震」
と不謹慎なジョークをいい、あの時のように笑いあった。
何百回のやりとりが何千回のやりとりになった。
しかし二人はしりとりに関しては実績がある。
田中の「り」で終わる単語攻めに対し、妻は「ろ」で攻め続けた。
しかし段々と妻の声がか細くなっていく。
そしてついに妻の声が止まり、田中が握っている妻の手からも力が抜けた。
その手はいつの間にか温もりを失っていた。
田中は妻の手をしっかりと握り直し、大きな声で妻に呼びかける。
そしてまわりにも助けを求め続けた。
声が枯れても叫び続けた田中。そして田中は意識を失った。
目を覚ました田中。
目の前が真っ暗なのは変わりがないが、身体は温もりに包まれていた。
田中は救助され、病院に搬送されていたのだ。
ふと我にかえり大声で叫ぶ。
その声に近づいてきた看護師に妻の所在を聞いた。
かえってきたのはしばしの沈黙。
妻は田中の隣でその命を失っていた。
それから6年が過ぎた。
街は復興が進み、人々は震災の傷を癒そうと努力を続けている。
その中で田中の右手だけは時が止まっていた。
あの時以来、田中はずっと右手に手袋をはめ、一度も手を洗っていない。
6年の間で大体のことは左手でできるようになり、右手はほとんど使わなかった。
写真も何も見ることができない、目が見えない田中に残された大事な妻の記憶。
あの時の妻の手の温もり。感触。
それが流れて消えてしまわぬよう、田中は右手を洗わなくなったのだった。
皆が前を向いて進んでいる中、田中は進むべき前が見えない。
今日も自分の右手を胸に抱いて静かに眠る。
夢の中で妻に会えるのを待ち望みながら。
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