新しくて清潔だし、広々としていて、程良く静かだ。
天井のエアコンは空気清浄機を兼ねていて、24時間正常に稼働し、過ごしやすい温度と湿度を保っている。
だが、この部屋に入る奴らのほとんどは、元々健康であっても、1週間ほどで死んでしまう。
何か危険があるわけではない。
奴らが拘束されていたわけでも、監視や脅しがあったわけでもない。
扉や窓は開閉自由で、出入りも自由だ。
水も食べ物も充分あり、仮に俺がこの部屋で過ごすことになっても、1ヶ月は余裕で生きられる。
それなのに奴らは死んでしまった。
一体なぜだかわかるかね?
※これは亀夫君問題風【ウミガメのスープ】です。
YesNoで答えられる質問をお願いします。
回答者である「俺」は、問題解決に必要な情報はすべて知っています。
時々余計なことまで喋るかもしれないので、全体的にミスリード注意です。
【ウミガメ】
奴らは蝉ですか?
No 一応人間だよ。
「奴ら」の死因は寿命ですか?
No 当分死にそうにない感じだったね。
俺、と奴らの種族は同じですか?
Yes 同じだな。
「俺」は人間ですか?
Yes 人間だ。
「俺」は今その部屋にいますか?
YesNo 関係ないね。
死因は、他殺ですか?
YesNo 解釈次第だが、奴らに直接手をかけた人はいない。 [良い質問]
「奴ら」の人数は5人程度ですか?
YesNo 重要じゃないよ。もっとたくさんかもな。
カニバリますか?
No 食わねえよ。
「俺」ではわかりづらいので、あなたとお呼びしても問題ないですか?
Yes お好きなように。
奴らの死因は皆同じですか?
Yesと考えても差し支えないかな。 [良い質問]
「奴ら」はその部屋から出入りしていましたか?
No 出入りはしなかったね。 [良い質問]
一か月は生きられるという事ですが、一年でも生きられますか?
Yes 食料の補給があれば大丈夫だろう。
何か不満や満ち足りないものはありませんか?
そうだな。決定的に足りないものがあったようだよ。 [良い質問]
中には死なない奴もいますか?
Yes 俺は出入りしているよ。もちろん生きている。 [良い質問]
新鮮な酸素が次々来るので酸化しやすくなりますか?
No 酸化はしないね。酸素過剰でもない。
次々人がやって来るので圧死しますか?
No 人はやってこないんだよ。 [良い質問]
奴らはすることがなくて、ネトゲ廃人になって1週間で死にますか?
No そうそう誰もがネトゲ廃人にはなるまいよ。
死因は自殺ですか?
No 自殺したやつもいないことはないが、気にするな。
外は普通に草とかありますか?
Yes 外の環境には全く問題ない。
扉や窓の外に危険がありますか?
No 全くないよ。
むかし楽園を作ったことがあるのですが苦痛も苦悩も生きる気力も目的も存在意義も見失ってただ息をしては寝て腐りましたか?
No 苦痛はあるようだね。 [良い質問]
「奴ら」は部屋から出られる事を知っていましたか?
YesNo 知っていても知らなくても関係ないね。 [良い質問]
「奴ら」も自分は1ヶ月は余裕で生きられると思っていたのではないですか?
YesNo どうだろうね。あんまり関係ないよ。
性別とか関係ないですか?
Yes 性別は関係ない。
死ぬ奴らは必ず一週間ほどで死にますか?
Yes 最長記録は12日だよ。
その部屋には明かりがなく、外の音も聞こえず、気が狂ってしまいますか?
No 照明はあるんだよ。音は聞こえないかもしれないが、関係ないだろう。 [良い質問]
部屋には明かりがありますか?あったとして点きっぱなしでOFFできないとかってオチはありませんか?
Yes 照明はある。OnOffもできるハズなんだがなwww [良い質問]
猫は1日おしっこを出さないと膀胱が圧迫して死んでしまうことは重要ですか?
No まあ、ここだけの話だが、普通に垂れ流しているぜw
「奴ら」は部屋に一人でいましたか?
Yes 必ず1人だけだ。 [良い質問]
(゚д゚)部屋にある食べ物と部屋に入って来る人は同義ですか?
No 食べ物は保存食だ。生き物じゃない。
部屋の中の奴らは、部屋が快適に保たれ続けるという確証がなく、いつ死んでもおかしくないというストレスで死んでしまいますか?
No ストレス? まあ、それどころじゃないね。
27 真っ暗すぎて照明のスイッチがわからず、当然水の場所も食料の場所も分からないために死にましたか?
Yes いいだろう。正解だ。 [正解][良い質問]
その部屋に1日1時間滞在したとして、それでも1週間たったら死にますか?
YesNo 条件次第かな。
それって、私達の世界(現実)でもありえますか?
Yes ありうるよ。
電気は奴隷が回る石車みたいなやつで一日中回していないと水も食料も機能しませんか?
No 労働の強制はないよ。
ぶっちゃけ部屋は死刑囚の収監室ですか? + 「俺」は監守で「奴ら」は死刑囚ですか? [編集済]
Yes そう言って差し支えない。もっとも俺達の国に死刑制度はないがな。特別に正解を進呈しよう。 [正解]
床がありませんか?
No 床はあるよ。
ラテシンますか?
No ラテシンは関係ない。
孤独死は関係しますか?
No 孤独に強くても死ぬ。病気じゃなくても死ぬ。
死に至るきっかけは精神的なものですか?
No 身体的なものだ。 [良い質問]
内緒で拉致って来たので死に物狂いで脱出しようとして全力を尽くしますか?
YesNo 拉致ではないよ。全力は尽くすけどダメみたいだなw
俺以外に1ヶ月は余裕で生きられる人間はいますか?
Yes 俺のように、部屋内部の構造を知っていれば問題ない。
電気のスイッチの部分が漏電しており、暗いからと電気を付けようとしたものが死んでいきますか?
No それだと俺も危ないw
部屋に入れられた奴らは手探りで動き回るが、今まで生きて照明のスイッチに到達した者はいない。
水や食料を摂取することができた者も、誰もいない。
ここはそういう独房だ。
以下、無駄に長い解説。
この独房に「よく似た」部屋は、完成直後に、一度だけ一般に公開された。
地下に作られた丸い部屋。
床の直径は約10メートルくらいだ。
「角のない形のおかげで、隅の暗がりがなくなり、囚人の気持ちを安定させるのです。」
案内役の俺は、テレビカメラに向かってそう言ったよ。
ビジネスホテルとしても充分使えそうな部屋だった。
囚人の人権を大切にし、更生を促すという名目だった。
「ここは一番狭い部屋です。複数人収容可能な広い部屋もあります。」
……まさかその説明がこんな意味だとは、誰も思わなかっただろう。
この部屋は最も広い独房で、床が直径が200メートルの円形だ。
大規模な野球場が観客席ごとすっぽり入る広さだ。
「複数人の収容」は確かに可能だが、実際はたった1人だけが収監される。
収監対象者は、特定の重い罪を犯した囚人。
「独房禁固刑」が確定したその日のうちに薬で眠らされ、部屋に運び込まれて隅の方に放置される。
そのまま、ただ、放置される。
目を覚ました囚人には、自分がどのような状況に置かれているのかが全くわからない。
あたりは完全な暗闇。
囚人は最低限の衣服だけを身に着けていて、持ち物などは一切ない。
手探りしつつ、もぞもぞと動くうちに、囚人は自分のすぐそばに壁があることに気づく。
叩いても蹴っても、一枚岩のように何も響かない壁であるが、囚人にとっては「拠り所」になる。
実はそれが罠。
生きるのに必要なものは、すべて部屋の中心にある太い柱の周りに集められているのだ。
水も、食料も、トイレやシャワーの設備も。
照明のスイッチも。
そして、柱の周りにつけられた螺旋階段を昇ると、外に出られる扉と雨戸がピッタリと閉められた窓がある。
開閉は自由である。
施錠なんかしていない。
光や風を取り込むこともできるし、逃げることさえできる。
俺なら、この部屋で生きられるのは当然だ。
部屋のどこに何があるか、よくわかっているからな。
たとえ真っ暗でも、歩けるなら打つ手はあるさ。
だが、何の情報もなく、不規則で大きな凹凸を付けられた壁を手探りするだけの囚人には、壁が大きな円を描いていることを想像することさえ難しい。
多くの囚人は壁がどこかに続いていると思い、手で伝いながら何十周も回る。
勇気を振り絞って壁から離れたとて何も見つけられず、中心には程遠い場所であきらめて壁に戻る。
怒鳴ったり、泣いたり、叫んだりする者もいる。
時には狂ったように笑ったり、自傷行為に走る者もいる。
3日もすると、囚人は脱水症になって判断能力が低下し、幻視や幻聴に苦しめられるようになる。
やがて筋力もすっかり落ち、ほとんど身動きできなくなり、たいていは1週間も経たぬうちに死んでしまう。
生存最長記録は12日と16時間ほどである。
幻覚による錯乱が幸いとなって中心にたどり着けた囚人が、過去に2人いる。
1人はペットボトルを手にしたが、蓋を開けることができず、ただ抱きしめて眠り、そのまま事切れた。
1人は缶詰をさぐり当てたが、もはやそれが何だかわからなかったらしく、放り出してまた歩き、やがて倒れた。
こんな部屋が他にもいくつかある。
独房禁固刑は、死刑のないこの国での、実質的な死刑だ。
しかし表向きは誰もそんなことは言わない。
「拘束も監視もなく、出入り自由な監獄に入っても囚人が外に出ないのは、彼らが深く反省して罪を償おうとするからです。おかげで私たちの仕事も楽なのです。」
世界でもっとも人道的な監獄なのだ、と、俺は何度も言わされた。
実は、独房内の様子は巧妙に隠された赤外線カメラで撮影され、どこかの心理研究所で分析・研究しているらしい。
※ この解説はもちろんフィクションです。
「Goodスープ認定」はスープ全体の質の評価として良いものだった場合に押してください。(進行は評価に含まれません)
ブックマークシステムと基本構造は同じですが、ブックマークは「基準が自由」なのに対しGoodは「基準が決められている」と認識してください。