今回司会進行を務めさせていただきます、生姜蜂蜜漬けと申します。どうぞよろしくお願いいたします。
いや~今回で50回とは。創設者であるikoanoさんを始め、
たくさんのラテシンユーザーの方々が積み上げてきた歴史ですね。
この先は、誰がどんな物語を紡ぐのでしょうかね。
それでは、以下問題文です。
~~~~~~~~~~~~~~~~
「――へ行くのかい? それならあの人に言伝を頼めないか?
『縫い目のないシャツを作って寄越して欲しい』って」
鶴丸さんは言いました。叶うことがないとわかっていて、その上で。
何故でしょう?
(引用:イギリス民謡「Scarborough Fair」)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
この問題には解説を用意しておりません。皆様の質問がストーリーを作っていきます。
以下のルールをご確認ください
【ルール】
#####要素募集フェーズ#########
出題直後から質問を受け付けます。
皆様から寄せられた質問の中から、出題者(生姜蜂蜜漬け)が
15個、ダイスで無作為に出した番号を、良質化します。
※良質としたものを以下【要素】と呼びます
※良質以外の者は「YesNo?どちらでも構いません。」とお応えします。こちらは解説に使わなくても可 です。
各要素を含んだ解説案をご投稿ください。
※また、矛盾が発生した場合や、あまりに条件が狭まる物はMC権限で採用いたしません。(矛盾の場合は前者優先)
矛盾例)田中は登場しますか?&今回は田中は登場しませんよね? 前者優先
狭い例)ノンフィクションですか? 不採用
狭い例)登場キャラは1人ですか? 不採用
狭い例)ストーリーはミステリー・現実要素ものですよね? 不採用
など
その後、選ばれた要素を取り入れた解説の投稿フェーズとします。
なお、一応要素が揃った後、まとめもに要素を書き出す予定です。
#####投稿フェーズ#########
解説投稿フェイズでは、要素に合致するストーリーを考え、質問欄に書き込んでください。
とんでもネタ設定・超ブラック真面目設定などなどお好きなようにお創りください。
15要素が入っていることがわかりやすいよう、解説に番号を振っていただけるとありがたいです
また、質問欄への投稿になりますので、誰かの投稿中(複数質問に分けて投稿される方もいらっしゃいます)に割り込んでしまうことを避けるため、
投稿解説が仕上がってから一度に投稿する、投稿解説の終わりには終わったことが分かるような言葉を付ける(「終」でも「了」でも「END」でも、終わりだと分かればなんでも構いません)ことをお願いいたします。
※説明が不十分な部分がありますが、過去の「正解を創りだす」もぜひご覧ください。
魅力のある銘作(迷作?)・快作(怪作?)等いろいろ先例がございます。
■時間割
・要素募集期間
出題~15個要素が揃うまで。
・投稿期間
15個揃ったあと~7月7日(金)23:59
・投票期間
7月8日(火)0:00~7月11日(火)23:59
そして今回は、以下3賞をご用意いたしました。
なお、見事シェチュ王になられた方には、次回の【正解を創りだすウミガメ】を出題していただきます。
■最も好きな解説に投票
・最優秀作品賞(投稿毎 別々にカウント)
・シェチュ王(投稿者毎 でまとめてカウント)
■最も組み込むのが難しかった要素(もしくは投稿してない人は、難しそうな要素)に投票
・最難関要素賞(最も票を集めた要素に与える賞)
なお、質問欄の文字数制限は全角300文字?のようです。
(でも編集すればもっとはいります。まあ、やや仕様バグ技っぽいのでいつか修正されるかもしれませんけど・・
あと、良質表示で大文字になることは覚悟お願いします。)
質問した人は、できるだけ正解を創り出すと投票にも参加いただけると盛り上がるかと思います。
通常の出題と違い、趣味丸出しで構いませんwお笑いが好きな人も、カニバが好きな人も、ミステリーだってOKです。
(まあ、要素的に難しいとは思いますがww)
それでは、今回もたくさんのご参加お待ちしております!
それでは~ 開始~
【新・形式】
結果発表!!
パセリは重要ですか?
YesNo?どちらでも構いません。
挽肉を買って来てソーセージを作りますか?
YesNo?どちらでも構いません。
ラクダの背油は美容にいいですか?
YesNo?どちらでも構いません。
ローズマリーと一緒にタイムトラベルに行きますか?
YesNo?どちらでも構いません。
リニューアルで豪華になりますか?
YesNo?どちらでも構いません。
砂浜に巨大な穴を掘り、失敗して埋まりますか?
YesNo?どちらでも構いません。
あの人は「そんなつもりじゃなかったんですぅ~♪」と言いましたか? [編集済]
YesNo?どちらでも構いません。
畑を耕して筋肉痛になりますか?
YesNo?どちらでも構いません。
河童の皿は一枚足りませんでしたか?
YES! あと1枚足りない~ でした。 [良い質問]
お祭りにはエアギターが欠かせないですか?
YesNo?どちらでも構いません。
コーヒーカップには角砂糖が忍ばせてありますか?
YES! こっそり忍ばせてます。 [良い質問]
ことごとく外しまくりますか?
YesNo?どちらでも構いません。
素数の数を数えて絶句しますか?
YesNo?どちらでも構いません。
あの人は「あるんでちゅかあ!」と言いましたか?
YesNo?どちらでも構いません。
鍵は蜂蜜漬けの中にありますか?
YesNo?どちらでも構いません。
謎の音の正体を突き止めますか?
YES! カサコソカサコソ…… [編集済] [良い質問]
コップの中に生き物が入っていますか?
YES! 何がいるかな~? [良い質問]
コピー用紙には赤い液体が付いていましたか?
YesNo?どちらでも構いません。
本当の恋人は登場しますか?
YesNo?どちらでも構いません。
花嫁をかっさらったつもりが花婿でしたか?
YesNo?どちらでも構いません。
爪切りで世界進出を目指しますか?
YES! 天下奪ったるでぇ!! [良い質問]
写真には握りこぶしが映りこんでいましたか?
YesNo?どちらでも構いません。
つるまるうどんと丸亀製麺のどちらでお昼ごはんを食べようかと悩みますか?
YesNo?どちらでも構いません。
ボタンを探して走り回りますか?
YES! わ、脇腹痛くなってきた…… [良い質問]
50%の賭けに敗れますか?
YesNo?どちらでも構いません。
風が吹いたらゆりかごが揺れますか?
YesNo?どちらでも構いません。
車のタイヤには延長コードが絡まっていましたか?
YesNo?どちらでも構いません。
ゴミ箱が人命救助に役立ちますか?
YesNo?どちらでも構いません。
飲みすぎには工業用アルコールが効きますか?
YES! これぞダメな酔っぱらいのスパイラルである。 [良い質問]
風鈴を拾いますか?
YesNo?どちらでも構いません。
24 植物のボタンですか?
YesNo?どちらでも構いません。
糸の色が赤いですか?
YesNo?どちらでも構いません。
圧力釜のフタを開けますか?
YesNo?どちらでも構いません。
古代文字の解読をしますか?
YesNo?どちらでも構いません。
笹の葉をちぎりますか?
YesNo?どちらでも構いません。
男の右足には神が宿っていますか?
YesNo?どちらでも構いません。
機械を分解することを至上の喜びと感じますか?
YesNo?どちらでも構いません。
暗号解読に失敗したことに一生気づきませんか?
YesNo?どちらでも構いません。
どうしても泣けませんか?
YesNo?どちらでも構いません。
お盆で股間を隠しますか?
YesNo?どちらでも構いません。
新しい使い方を考えつきますか?
YesNo?どちらでも構いません。
著作権保護法が関係ありますか?
YesNo?どちらでも構いません。
5歳ですか?
YesNo?どちらでも構いません。
犬のコスプレをしますか?
YesNo?どちらでも構いません。
ボロボロですか?
YesNo?どちらでも構いません。
再再再々婚をしますか?
YesNo?どちらでも構いません。
パスタが食べきれませんでしたか?
YesNo?どちらでも構いません。
炊飯器の妖精には荷が重すぎますか?
YES! 役不足(誤用)です。 [良い質問]
「声優になったほうがいいんじゃない?」といわれますか?
YesNo?どちらでも構いません。
脱獄には黒板消しが足りませんか?
YES! 一家に一台黒板消し。 [編集済] [良い質問]
将棋で30連勝しますか?
YesNo?どちらでも構いません。
光が並んでいるのを見ますか?
YesNo?どちらでも構いません。
広告が下に表示されましたか?
YesNo?どちらでも構いません。
酷評に切れますか?
YesNo?どちらでも構いません。
性別が違いますか?
YesNo?どちらでも構いません。
双頭の猫はかわいさも2倍ですか?
YesNo?どちらでも構いません。
ルールを破って結婚することを発表しますか?
YesNo?どちらでも構いません。
ヨーグルトを作りますか?
YES! ケフィアでも可!! [良い質問]
ヒビが入りますか?
YesNo?どちらでも構いません。
猫の毛玉を取りますか?
YesNo?どちらでも構いません。
黒歴史が明るみに出ますか?
YesNo?どちらでも構いません。
ネトゲ廃人になりますか?
YesNo?どちらでも構いません。
リュックから引っ張り出したのは弁当箱でしたか?
YesNo?どちらでも構いません。
天の川で溺れますか?
YesNo?どちらでも構いません。
インスタグラムに投稿しますか?
YES! ぶれないように細心の注意を払いましょう。 [良い質問]
スズメに食べられてしまいますか?
YesNo?どちらでも構いません。
振り返ればそこにテロリストがいますか?
YesNo?どちらでも構いません。
苦いことが重要ですか?
YesNo?どちらでも構いません。
オークションで10億円の商品を落札しますか?
YesNo?どちらでも構いません。
床屋を味方につけますか?
YES! シャンプーも髭剃りもおまかせあれ! [良い質問]
緑色の鞄には弾薬を込めておきますか?
YesNo?どちらでも構いません。
私のBSは良かったですか?
YesNo?どちらでも構いません。
めっちゃ楽しかったです! 閃かなかったのは悔しいですが(-"-)くぅ~。
「ん?」と言われますか?
YesNo?どちらでも構いません。
イヤホンが耳から外れませんか?
YesNo?どちらでも構いません。
がんを克服しますか?
YES! ありがとうドクター! [良い質問]
正式名称で呼ぶので怒りますか?
YesNo?どちらでも構いません。
時間が足りなくて諦めますか?
YesNo?どちらでも構いません。
ピアノ線が1本切れてましたか?
YesNo?どちらでも構いません。
お馬さんにすべてをつぎ込みますか?
YesNo?どちらでも構いません。
うっかり受かってしまいましたか?
YES! 受からなかった人が隣で泣いてて気まずいです…… [良い質問]
主演俳優の不祥事によりお蔵入りの危機だったドラマの撮り直しが決定しますか?
YesNo?どちらでも構いません。
とらわれの姫には思い人がいますか?
YesNo?どちらでも構いません。
ラーメン三人前を平らげますか?
YesNo?どちらでも構いません。
目が真っ赤ですか?
YesNo?どちらでも構いません。
封筒にはナメクジが群がっていますか?
YesNo?どちらでも構いません。
芸能人の結婚にショックを受けますか?
YesNo?どちらでも構いません。
太陽神には東京ドームは狭すぎましたか?
YesNo?どちらでも構いません。
セクシーな服装をしますか?
YesNo?どちらでも構いません。
公用車で子供を保育園に送迎することは問題がありますか?
YesNo?どちらでも構いません。
電気が来ていないので、自分で発電しますか?
YES! ミカン電池か風車を作るか、それが問題だ。 [編集済] [良い質問]
人気でシリーズ化しますか?
YesNo?どちらでも構いません。
電車を止めるには片手で十分ですか?
YesNo?どちらでも構いません。
地下鉄でバトルを繰り広げますか?
YesNo?どちらでも構いません。
「半」は50ではなく30ですか?
YesNo?どちらでも構いません。
失神しますか?
YesNo?どちらでも構いません。
半袖しかなくて困りますか?
YesNo?どちらでも構いません。
ぎりぎりで時限爆弾を解除しますか?
YesNo?どちらでも構いません。
中途半端すぎますか?
YesNo?どちらでも構いません。
また髪の毛の話をしていますか?
YesNo?どちらでも構いません。
同じセリフを何度も繰り返しますか?
YesNo?どちらでも構いません。
長調より短調が好きですか?
YesNo?どちらでも構いません。
まとめられますか?
YesNo?どちらでも構いません。
遂にグラビアアイドルになりますか?
YesNo?どちらでも構いません。
そろそろ採用してくれますか?
YesNo?どちらでも構いません。
実況中継しますか?
YesNo?どちらでも構いません。
質問を締め切らせていただきます!
皆様の力作、お待ちしておりますm(__)m
□解説とは別にタイトルは単体で質問欄に書く
□①~⑮の要素が全て入っている
□解説中の①~⑮の要素該当箇所にその番号が明記されている
□解説がひとつに纏まっている(一度質問欄へ投稿した後、編集すれば字数制限はかかりません)
□解説の終わりが明記されている(【終】【完】(fin.)など)
□長文にするならチェックをチェックして改行ができる状態である
□問題文の解説から大きく外れていない
*基本は前回の【正解を創り出すウミガメ】を参考に。
タイトル『アリス イン 炊飯器』 [編集済]
落ちた監獄で待ち受けるものは!?
少女の大冒険が始まる。
[良い質問]
「それでアリス。君は炊飯器の中に落ちてこの水晶監獄(プリズム・プリズン)にやってきたっていうんだね?」
炊飯器の妖精である鶴丸は目の前の少女の瞳に確認する。
少女は名をアリスという。ブロンドの長髪を揺らしながらアリスは鶴丸に続き歩いていく。
「一体ここはどこなの?」
「ここは不思議の国。河童の国王が爪切りで世界を獲るために【要素⑤】生み出した無限牢獄。一度入ったら出ることはできない――生きている間はね」
白米が巨大化したような格好の妖精、鶴丸の導きで部屋へと通されるアリス。
そこは不思議の国というにはあまりにも場違いな薄汚れた暗い6畳一間の部屋だった。
「適当に座ってくれ。ここは電気も通ってないから自分で賄わなければならないんだ」
そういって鶴丸はその短い肢体を駆使し発電機を漕ぐ【要素⑮】。その姿は滑稽に思えた。
「どうやったらここから帰れるの?」
「言っただろう。ここから生きて出られるものはいないと。君は河童の選別にうっかり受かってしまったんだ【要素⑭】。残りの人生、ここで爪切りを作り続ける以外に道はないよ」
鶴丸は疲れ切った顔でペダルを回し続ける。アリスにはけれどもこの現状がとても現実とは思えなかった。
「わかりました。鶴丸さん、さようなら」
「アリス、どこへ行くんだい?」
「河童さん……でしたっけ? その方のところに行って私たちを出してもらえるよう頼んでみます」
アリスは部屋を出て真っすぐに進んでいく。
「ちょっと待ってくれよ。君、殺されるよ? 河童のそばには怖いガンマンや気まぐれな床屋が控えていて河童に会いに行こうものならその身をすぐに穴だらけにされてしまう」
「ならば先にその人たちに河童さんに会わせてもらえるようお願いしなきゃ」
アリスは夜道を黙々と歩いていく。
必死に止める鶴丸の額からは研ぎ汁となった白い汗が流れ落ちる。
「ほかの皆さんはどこにいるの?」
「えっ、ああ。僕らと同じようにここに連れてこられた者たちのことかい? 彼らならほら、あそこ。爪切りを作っているよ」
そこにはたくさんのお米たち。
寸分たがわぬ統率された動きで目の前を流れていく部品をくみ上げていく。
「まあ、すごい。インスタグラムに挙げておこう【要素⑪】」
「いや、ここは電波すらも閉じ込める。外への連絡はできないよ」
「じゃあ、早く河童さんに出してもらわなきゃね。河童さんはこの先にいるの?」
「……ああ。そうだよ。ガンマンも床屋もこの先に控えているよ」
鶴丸は考えていた。この少女を守るには炊飯器の妖精一体では荷が重いな【要素⑧】、と。
アリスと鶴丸は工場の出口のボタンを探し回り見つけると【要素⑥】、ついに扉の前にたどり着いた。
~~~~~~~~~~~~
「酒は飲んでも飲まれるな、って言葉あるだろ? 酒に酔って自分を見失うなってことなんだろうけど。これ、よくよく考えるとおかしなこと言ってるよな? だって人生の目的は酒を飲むことなんだから」
赤ら顔した陽気な巨人。彼はアリスたちを見下ろしながら悠々と液体をコーヒーカップに注いでいく。
「えっ、職務中に飲酒はまずいって? バカ言うな。これはコーヒーだ。ブラックが飲めないから工業用アルコールで割ってるだけで二日酔いにはこれが効くんだよ【要素⑦】……それで、あんたらはお客さんか?」
「河童さんに会いに来ました」
ぐいっと喉を鳴らしコーヒーを飲み干す巨人。心なしかコーヒーが喉を通るとき悲鳴が聞こえたような気がする【要素④】。
「ああ。今のは角砂糖が溶ける音だ【要素②】、気にするな。それで、河童の奴に会いたいんだってな。いいぞ、通って。ただ、その前にそこの嬢ちゃん……俺に髪を切らせちゃくれねえか?」
巨人はコーヒーカップを置くと背後から巨大な鋏を取り出す。その刃渡り部分にはところどころ、赤い染みになっている。
「あら、いいですよ。ただあんまり切りすぎないでね」
「おい、アリス。やめっ、」
「おお、ありがたい。俺は『床屋』になるのが夢なんだが、ここに来る奴ら、みんな白米ばっかで毛がありゃしないんだ。ぜひとも――切られてくれ!」
バサッ
鶴丸が目を背ける。ああ、また守れなかったのだろうか。
そう思い薄目を開けた鶴丸の目にはきれいなショートカットの女の子の姿が。
「ありがとう、アリス。これで俺は床屋になれた! アリスは俺の恩人だ【要素⑫】」
「ふふふっ。素敵にカットして下さりありがとうございます、床屋さん」
床屋を味方につけたアリスは何事もなかったかのように微笑んだ。
~~~~~~~~~~~
「この先にいるのは河童、そしてガンマン。せいぜいガンマンには気を付けていくんだぜ」
巨人の力で巨大な扉が開いていく。
「俺は酒……じゃなかった。ここで床屋の仕事があるからついてはいけないんだ。だから代わりにこれ、あげるよ」
アリスは床屋から何か白いものを受け取った。
「この道を真っすぐたどれば河童のもとに行けるよ」
「ありがとう巨人さん」
「行こう、アリス」
2人は歩みだした。
道の両側には延々と高原が続いている。
殺風景。そんな中アリスだけは笑顔だ。
「そこのお二人さん? 道を尋ねたいんだけど」
鶴丸は驚き振り返る。すると彼の後ろにはすり切れた黒いマントを羽織った男が。
手に持つ銃が鶴丸の額に突きつけられる。
「お米に宿った魂も、人間と同じように天国へ行くのかなあ?」
「アリス、逃げ」
――ターーン
「あら、鶴丸さん? そんなところで眠ってたら風邪ひいちゃうよ?」
「アリスちゃんって言ったっけ。大丈夫、すぐに僕が君の血で彼を温めてあげるから」
銃を向ける男の手。けれどもその手は強い力で引っ張られる。
「……知らなかったよ。お米は銃で撃たれても死なないのかい? 白米ごときが銃(ガン)を一時的にでも克服できるとは恐れ入ったよ【要素⑬】」
「ああ。なんてったって芯が通ってるからな」
そこには頭部を撃ち抜かれ頭が穿たれた状態のまま、なんとか体制を維持している鶴丸の姿が。
「鶴丸さん?」
「なあ、アリス。この世界の外に行くのなら、一つ伝言を頼まれてくれないか?
『縫い目のないシャツを作って寄越して欲しい』って。どうやら僕の一張羅、穴が開いちゃったみたいだから」
鶴丸は笑顔でアリスにそういうと、再びガンマンの方に視線を戻す。
顔面蒼白なのは明瞭だ。アリスが伝言を伝えるよりも早く自分の死期が来ることなどわかっている、でも。
「さあ、行ってくれアリス!」
「うん。わかった。お母さんに頼んでみるね!」
アリスの背を押す鶴丸。
アリスは河童のもとへと駆け出した。
~~~~~~~~~~~~
「河童さん、河童さん。どうかここをお開けください」
「お前は、誰だ? 俺は今、頭の皿を探すので忙しいんだ【要素①】」
「お皿ってこれのことですか?」
アリスは床屋から受け取った白いものを差し出す。
「! あいつ。俺の皿をコーヒーカップの受け皿にしていたな。あとでとっちめてやる……とはいえ、ありがとう、少女よ。名前は?」
「アリスです」
「おお、アリス。それでお前は何しにここへ? まさか休暇届でも出しに来たんじゃないだろうな?」
「鶴丸さんから河童さんがここを作ったと聞きました。私、どうすれば帰れますか?」
「帰る? ハハハハハッ。それなら簡単だ。ここ、水晶監獄から抜け出すには黒板消しがあればいい【要素⑨】」
「なるほど……えっ?」
――コツン
頭に走る疼痛。
アリスは目の前がくるくると回りだすのを感じた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
シャッ シャッ シャッ シャッ。何かを混ぜるような音。
目を覚ましたアリスは気づくと自分の部屋のベッドで寝ていた。
枕元には目覚まし時計が。頭の痛みの原因はどうやらこれがおでこに当たったからのようだ。
アリスは音につられて階段を下りる。
台所を覗くとそこにはヨーグルトを作る母親が【要素③】【要素⑩】……あれ?
母親に何か伝えなければならないことがあったはず。いったい何だったか……
ぼんやり浮かぶ白いシルエット。けれどもそれは漂ってくる香ばしい香りに打ち消されてしまう。
「お母さん、朝ご飯まだ~?」
やっぱり朝はご飯じゃなくて、パンだね。
アリスはそう思い食卓の席に着くのだった。
【完】
[編集済]
――と思ったら、
胃と額に穴を開け、記憶から忘れられようとも、命を懸けて少女を守った妖精の献身だったでござる。
表情豊な妖精さんです。お米なのに。
タイトル『スイを待ちながら』
鶴は千年、亀は万年。
再開を夢見て今日も待ちぼうけ。
[正解]
スイってのは、とにかく変なヤツなのだ。
本名は『炊飯器の妖精』というらしい。
「ボクのことは『スイちゃん』って呼んでね」と言っていたが、オレは単に『スイ』と呼んでいる。
自分は河童だと言い張るスイだが、頭に皿がない①
皿はないけど甲羅はあるので、スイはカメ人間なのではないかとオレは思う。
スイは、よくパチンパチンと音を立てていた。
何かと思ったら爪を切っている音だった。③
「爪飛ばし大会の世界選手権出場を目指しててね。」⑤
ホントにあるのだろうか?そんなもの。
スイはヨーグルトが大好きだ。⑩
コップに牛乳と少量のヨーグルトを入れて放置する。④
そのうち乳酸菌が増えて固まってくると、コーヒーカップに仕舞われた角砂糖を入れて混ぜて飲む。②
そして「ウエー!ヨーグルト飲み過ぎた!腹の中で乳酸菌が増えているぅ!」と叫んでは、工業用アルコールをぐびぐび飲む。⑦
「殺菌にはこれだよね」と言いつつ。
……結局、スイが好きなのはヨーグルトなのかアルコールなのか、よくわからない。
『スイ』とは「酸い」なのか「酔」なのか?
ある日、スイには仲間がいることがわかって驚いた。
スイにそっくりなヤツが傷だらけの姿で現れたのだ。
ただし、こちらには皿があった。
彼女は「『電子レンジの妖精』こと『デン』です。カメ人間です。」と名乗った。
いや、むしろスイがカメで、デンが河童だろ?とオレは思った。
「どうした?デンちゃん!誰にやられたんだ!?」
スイが呼びかけると、デンは答えた。
「うん……脱獄しようとしたんだけど……黒板消しが足りなくて……」⑨
「何言ってるんだかわかんないよ!デンちゃん!」
デンの話をよくよく聞くと、「黒板消し」というのは脱獄仲間の床屋の名前らしい。⑫
一緒に脱獄しようと出口を開くボタンを探して走り回っているうちにはぐれたのだとか。⑥
「脱獄」と言うからにはデンは犯罪者なのかと身構えていたら、脱出ゲームの話らしく、ちょっと安心した。
「ちょっとネットで黒板消しを探すから……私をパソコンのある場所に運んで……スイちゃん……」
デンに言われてスイがデンをお姫様抱っこする。
と思ったらあっという間にひっくり返った。
スイは非力なのである。⑧
仕方なくスイはパソコンを持ってきた。
最初からそうすれば……と思うかもしれないが、コンセントが無い場所だったから、デンを運ぼうとしたスイは正しい。
充電器つきのノーパソなら良かったのだが。
スイは自転車の発電機にパソコンをつなぎ、カッチャカッチャとこぎ出した。⑮
デンはしばらくパソコンをにらんで何やらやっていたが、やがて悲痛な悲鳴をあげて突っ伏した。
「何やってんのよ黒板消し……床屋のクセに……」
古来、床屋は医者の役目を兼ねていた。
そんなノリで受けた大学の医学部にウッカリ受かってしまったという話が書いてあったらしい。⑭
この勢いで、ガンに良く効く治療法を探したいのだそうだ。⑬
でも本人が行方不明では意味がない。
「一応ラテドンとインスタには情報提供のお願いを投稿しておいたのだけど。」⑪
インスタはわかるが、ラテドンって何だ?とオレが思っていると、スイが自転車のスタンドを蹴っ飛ばして言った。
「じゃあ、ボクがちょっくら探してくる。」
そのままスイは、自転車もろとも加速して遠ざかっていった。
「あああああ! パソコンが使えないじゃなーーーい!」
デンが嘆いた。
それっきりスイが帰ってこないので、「鶴丸さん、私、スイを連れ戻してくるわ。」とデンは言った。
鶴丸さんとはオレのことらしい。
「わかったよ。じゃあ、スイに伝えてくれ。『縫い目のないシャツを作ってよこせ』って。」(問題文)
『縫い目のないシャツ』ってのは、実は手編みのセーターのことだ。
スイはなぜかそう呼んでいた。
編地なら、縫い目ナシでいくらでも服が作れると力説していたのだ。
オレは鶴だから機織りが生業なのだが、「布なんて古い!」というのがスイの持論で、オレ達はいつもケンカしていた。
まだ決着はついていない。
オレは、「縫い目があっても最高の服」を作って待っているつもりだ。
でも、セーターは届かないだろう。
デンには……鶴の言葉がわからないのだ。
だけどオレは、スイが帰って来さえすればそれでいいのだ。
オレは、手を振りつつ遠ざかるデンを、見送った。
あれからもうすぐ1000年になるが、2人は帰ってくるだろうか?
そろそろオレも寿命なんだがな。
【終】
[編集済]
カオスな展開なのに、やり取りや台詞がコミカルで、読んでて楽しめました。
自転車で遠ざかるスイの絵面が、何故かものすごく様になって見えます。
「髪の毛は人を救う!?」
不可能を可能にする熱意。サポートするのは閃きと優しさ。 [良い質問]
その日、カメオは自宅でいつものように朝を迎えていた。朝食用にヨーグルトを作り、炊飯器の妖精・・・もとい機能では少し難しいかなと思う量の米を炊きそして角砂糖を入れたコーヒーを飲む・・・・あ、コップの中に虫が入っているや。(2)(4)(8)(10)
そう思いつつも、かつて暴走族に入っていた時とは比べ物にならないぐらい平穏な朝だなあと思っていると、音が鳴った。「なんだろう?」彼は音が出た場所を探そうとすると声が聞こえた。(3)
「おーい、ちょっと依頼したいことがあるんだが・・。」その声は友人の鶴丸だった。鶴丸は今、爪切りメーカーの社長として世界シェア1位を目指して頑張っている。(5)そんな彼がどうしてここに?カメオはそう思いながらもドアを開けた。
鶴丸が部屋に入るとカメオはお菓子をテーブルに置こうとした。あいにく鶴丸が好きなカッパのデザインの皿は割れてしまっていたので、別の皿を用意した。(1)
「いやーお前すっかり変わったな。昔はお前少年院にいて脱獄しようとしたけど黒板消しが足りなくて諦めたんだよな。(9)そんなお前が今じゃ立派に社会復帰しているんだよ。俺でも感心だよ。」」
「ははは、そんなことないさ。第一今の生活を得られたのも、たまたま有名大学に合格しちゃったからだよ。(14)
それで・・・・今日の用事は何だい?」
「なあお前ってラテラル街に行くだろ?」鶴丸が言った。
「まあたまに行くけど・・・・何のために?」
「よかった。それならあの人に伝言を頼めないか?
『俺のために縫い目のないシャツを作って寄越してほしい。』って。」
「なんで?っていうかあの人って誰?」カメオが言った。
「ああ悪い。別居してしばらくたつからつい「あの人」って言ってしまったが俺の妻だ。」鶴丸は言った。
「で、ラテラル街のどこへ行くんだ?」
「ラテラル病院だ。」
「病院?なぜわざわざ?」
「とにかく、あとで病院の場所を教えてやるから。」
「わかった。」カメオはこういった。しかし、鶴丸は内心、その願いはかなわないと思っていた。
鶴丸が妻と別居しているのは別に仲が悪くなったからではない。鶴丸の妻はがんに侵されており、余命いくばくもないと言われているからだ。鶴丸はそんな妻に少しでも生きる希望を持たせてやりたいと思い、妻の好きな洋服づくりをやらせようと思ったが、もう妻の体力も限界だ。きっと洋服を完成させられないまま妻は死んでしまうだろう。鶴丸はそう思っていた。
そのころ、カメオは縫い目のないシャツをうまく作れるようにするためにどうすればよいか考えていた。
「ところでなんで鶴丸はあんな頼みごとをしたんだろう・・・・そういや鶴丸の奥さんって前から病気だって聞いたことあるぞ・・・・。まさか・・・。だとしたら、少しでも負担を減らさないといけないな。縫い目のないシャツを作るように頼めっていうけど生地はどうするんだろう・・・・・。そうだ!あの床屋に髪の毛をもらってその髪で編み込みを行えば縫い目を作らずとも髪の毛が生地になるぞ!」(12)
早速男が床屋に向かうと、床屋の主人は酔っぱらって寝てしまっていた。そこで男は床屋の主人に工業用アルコールをかけた。「うわっ!痛いじゃないか!」案の定、皮膚の刺激で床屋の主人の酔いがさめた。(7)
「あ、今着ている服のボタンがないじゃないか!」と言って慌てる床屋の主人にカメオはこういった。(6)
「なあ、髪の毛の残りかかつらはないか?ちょっとある人にシャツを作らせたいんだが・・・・。」
「え?」もちろん床屋の主人が面食らうのも当然だ。しかしカメオはなおも床屋の主人に頼んだ。
「しゃあないなあ・・・・。」床屋の主人はそういうと、家の倉庫に行こうとした。そこには廃棄するための髪の毛が大量にあるのだ。しかし、ここで問題が発生した。
「あっれー?倉庫の電気つかないや。」そう床屋の主人が言った。
そこでカメオは車から懐中電灯をもって倉庫の中を照らし出した。(15)
「あ、髪の毛だ。」そういうとカメオは廃棄前の髪の毛が入った袋を取り出し、髪の毛を結び始めた。少しでも鶴丸の妻の負担を減らそうと思ったための行動だった。
こうして何万本もの髪の毛を束ねた生地をもってカメオは鶴丸の妻がいる病院へ向かっていった・・・。
その1年後、あるインスタグラムのアカウントにこのような投稿があった。(11)それは1人の女性が笑って写っている写真だった。インスタグラムのメッセージにはこのように書いてあった。
「がんが治りました。(13)縫い目のないシャツを作ったおかげで生きる希望が湧き、また大好きな洋服づくりができるようになりました。カメオさんに感謝です。」(終)
[編集済]
床屋→髪の毛→シャツの素材という繋がりが、思考のキレを感じさせます。これは私は絶対に思いつかないですね。
族上がりの強面青年が手作業に没頭する姿が微笑ましいですw
「ざっくりギャンブル」
ざわ…ざわ…… [良い質問]
職場で保管していた河童の皿を一枚割ってしまった(1)カメジ。このままでは、爪切りで世界を取りたい(5)なんぞと志望動機で熱く語ったところ、うっかり受かった(14)看守の仕事をクビになるどころか、莫大な借金を背負ってしまう。
想像するだけで、喉の奥から酸っぱいものがこみ上げてきた。嫌な匂いが鼻腔をくすぐる。カメジが以前ヨーグルトを作ろうとして(10)、カビの楽園の創造主となった時とて、もう少しマシな匂いだった。
「飲み過ぎに工業用アルコールが効く(7)なんて嘘だ! 面接の時二日酔いだったぞ俺っ!」
騙されやすいカメジはよく知り合いにからかわれたり、悪い時にはカモにされていた。よく味方になってくれたのは、行きつけの床屋くらいだった(12)。
カメジは河童の皿を割ったことが表沙汰になる前に、逃げることにした。
ざわ……ざわ……
その決心を嘲笑うかのように、小さな物音が聞こえた。機械のそれではない。もっと温かみのある、不規則な生き物の出す音だ。
「うん、なんの音だ!?」
ざわ……ざわ……
カメジは廊下をゆっくりと進む。変な音に注意しながら。
カメジの職場であるここは、重罪を犯したもの達を収容した刑務所であり、同時にその警備の厳重さから、裏では曰く付きの高価な品物を一時保管したりしていた。
看守の中にはカメジのような雇われの他に、模範囚も紛れているのだ。邪の道は蛇ということか、彼らはよく侵入者の心理を心得ていて、以前も危うく刑務所から脱獄しそうになった男を捕まえた。
先日など、いつもの備品点検の際に黒板消しが足りなかった(9)ためにトリックに気づいたのだという。
なんとも、カメジには想像もできない、嗅覚を持っているのだろう。
「なんなんだここは!?」
ざわ……ざわ……
音の正体は扉の向こうから聞こえる声のようだった(3)。
重厚な扉の前には黒服が二人立っていた。
「む、貴様待て!」
黒服がインスタグラムに投稿(11)している隙に逃げようとしたカメジは、もう一人に呼び止められ、あれよあれよと言う間に捕まってしまった。
「伊藤カメジだな、貴様なんてことをしてくれたんだ!」
カメジは必死で不審者を知らせるための非常ボタンを探して走り回っているつもりだった(6)が、それは気を失うまでの刹那の現実逃避だったようである。
事実カメジは黒服に捕らえられ、扉の向こうに連行された。
「はっ!」
カメジが目を覚ますと、目の前にテーブルがあった。テーブルの向こうには、トランプを切っているディーラーと思しき人物が一人。
「目は覚めたかねカメジ君……?」
ざわ……ざわ……
カメジが周囲を見回すと、ここはカジノのような場所であることがわかった。
「ここはどこだ?」
カメジの質問に、ディーラーはにこやかな笑みを浮かべた。
「君は知らなかっただろうがねカメジ君。この刑務所は、様々な理由で捕まった大物達の収容所なのだよ。表向きは刑務所となっているが、裏では賭博に薬物、ピーやピーなどやりたい放題の無法地帯。それこそ、パン派の私たちの家に住む、炊飯器の妖精が過労死するほどの深淵だ(8)」
「なんの冗談だ、それ?」
青少年に聞かせられない言葉を、聖人のような声音で語るディーラーの手の上でトランプがもてあそばれている。
目にも留まらぬ速さで自在にカットされているのだ。
「時に、君は壊したそうだね、河童の皿を。私の雇い主から、請求書だよ」
トランプの間からぴっ、と飛んできた請求書には、たくさんのゼロが並んでいた。
「こんな金額……横暴っ、払えるわけがない!」
「なら、折角だ。賭けて行くか、ね?」
「なに?」
「ここは賭場だ。一夜にして億万長者にもなれる場所。いくらでも望みはあるだろう。いくらでも、絶望もあるが、ね」
ディーラーはなにがおかしいのかクスクス笑うと、カメジと視線を合わせた。
「さあ、まずは初めの質問に答えたまえよ」
ディーラーは獰猛な笑みを浮かべた。
「目は覚めたかねカメジ?」
トランプを切る音が止まった。
「その提案乗ったぜオッサン」
「オッサンじゃない、鶴丸だ」
自然な動作でトランプを机に置こうとする鶴丸を、カメジは制した。
「お断りだぜ、トランプなんざイカサマし放題じゃねぇか」
「失礼だねカメジ君。私がイカサマをーー
「目印(ガン)、バレバレだぜオッサン」
カメジは手の甲に爪で十字を描いた。果たして、鶴丸の手が一瞬震えた。カードの背には、言われても気づかないほどに小さな傷があった。
「悪いがトランプはやめてくれ。目印(ガン)カードを全て見破らない限り(13)、オッサンには勝てねぇ。こんな横暴、常勝、認めねぇっ!」
ざわ……ざわ……
「ふぅむ、炊飯器の妖精に頼んで、天衣無縫を持ってきなさい」
鶴丸の一言で持ってこられたのは、不思議な服だった。
見た目は何の変哲もない服であるにもかかわらず、縫い目がない。
「炊飯器の妖精って、何かのあだ名か?」
「ああ、そんなところさ」
鶴丸がその衣服を羽織ると、体にフィットし袖口やポケットに何かイカサマの材料を忍ばせることは不可能になった。
「それでイカサマができないとでも言うつもりか?」
「ああ。もっとも、縫い目のない服というものも、イカサマでもしなければ作れないが、ね?」
さて、そのようなやり取りをしている間に、カメジはコーヒーカップを用意させていた。
「ふぅむ、漫画で見たことある、ね。コップに交互にコインを入れて、中の液体をこぼした方が負けの賭博」
「解説をどうも。これならシンプルだし分かりやすい。これでひと勝負どうだ?」
「この鶴丸、誘われたギャンブルを断ったことはない。受けよう。
ただし、掛け金はその額だ。それでもやるか、ね?」
「! いいぜ、面白ぇ!」
鶴丸が示したのは、カメジに渡された河童の皿の請求書の額だった。
ゲームが始まる。
ぽちょん。
ぴちゃん。
ひた、ひた。
ぺちょん。
地味である。
やっている二人こそ額が額なので真剣だが、地味である。
「そろそろ限界か、ね?」
鶴丸はゆっくりとコインをカップの中に入れる。
「いいや、これで最後さ」
カメジも負けてはいない。その時カメジはコインと一緒にこっそりと虫を入れた。虫はあらかじめ叩いて気絶させられており、鶴丸の出番で暴れると言う寸法だった(4)。
「む?」
気づいた鶴丸だがもう遅い。
カメジが入れたと言う証拠がないのだ。今更指摘しても、自然に入ったのではと言い逃れられてしまうだろう。
「仕方がない。奥の手だ、ね」
鶴丸は席を立ち上がった。
すると鶴丸の陰にかかっていたカップが照明に照らされる。
鶴丸の読んだ漫画にあった手口だ。カップの底には角砂糖のカケラが仕込まれていて(2)、それが照明の熱で溶け出すことでカップが水平になり、表面張力にも余裕が戻る。
その、はずだった。
「させるかよ、俺も愛読者だ」
「なんと!?」
カメジは自らが鶴丸のいた場所に回る事でイカサマを回避。
「カメジ、きさまあの漫画読みこんでいるな?」
「答える必要はない」
ノリノリの二人であったが、カメジは勝者の笑みを浮かべていた。
「ええい、かくなるうえはこうだ!」
鶴丸は隠そうともせずに、手元に機会を取り出した。ハンドルを回すとライトがつく仕組みだ。発電しているのか(15)。
「テメェ卑怯な!」
戦いは佳境を迎えていた。
虫が暴れカップの中身がこぼれだすのが先か。それとも、鶴丸の発電パワーが先か。
本来のギャンブルとは全く方向性の違う運否天賦に、鶴丸は不思議な高揚感を感じていた。
その目の前で、カメジは必死で鶴丸のライトをガードしていた。
「こぼれろぉ!」
「させるかぁ!」
ぴちゃん、と。
その時逃げようとした虫が確かに、羽で一滴の液体を弾いた。
「お、お、おおおお! 勝った! 勝った!」
カメジは歓声をあげた。
「ふぅむ、負けだね」
悔しげに、しかし晴れ晴れとした表情でこの場を去っていく。
「待てよオッサン!」
カメジが何かを言う前に、彼は殴られて気絶した。
気がつくと、カメジは職場の事務所に倒れていた。
あれは夢だったのかーーそう疑うカメジだったが、確証がない。
「強いて言うなら、」
鶴丸の姿は、彼の行きつけの床屋のオッサンに似ていた。
了
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お前ら緊迫した空気出してるけど、情報源漫画やん!
て言うかお前ら類友やん!
とツッコまずにはいられない、カオス&怒涛の展開でございました。
これより投票フェイズに入ります。
投票方法(以下の①②どちらでも受け付けます。どちらか一方を選んで投票して下さい。)
①雑談欄の[出題者のみに表示]
②私、生姜蜂蜜漬けのプロフィールページからミニメを送信
投稿一覧
滝杉こげおさん「アリス イン 炊飯器」
えぜりんさん「スイを待ちながら」
まりむうさん「髪の毛は人を救う!?」
風木守人さん「ざっくりギャンブル」
投票は7月11日(火)23:59までです。
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まずは、最難関要素賞の発表です。
8 滝杉こげおさんの「炊飯器の妖精には荷が重すぎます」です!
8番と13番と一票ずつの投票だったので、
私が個人的にものっすごい苦労したわい!! という思いを込めて
こちらを選ばせていただきますw
そして、最優秀作品ならびに今回のシェチェ王は……
えぜりんさんの「スイを待ちながら」です!!
4票中2票を獲得されました。おめでとうございます!!
えぜりんさんは、次回の「正解を創り出すウミガメ」の出題をお願いいたします。
それでは、最後に私の解説を持ちまして、閉幕とさせていただきます。
要素を作っていただいた皆さま、
回答を投稿してくださった皆さま、
投票してくださった皆さま、
誠にありがとうございました!!
【笑い話をはなむけに】
「お断りします。俺炊飯器の妖精なんでしゃもじより重い物持てないんすよ」【8】
「何、心配いらんさ。手紙はしゃもじよりずっと軽いぞ」
「……さっきのタライでこぶができましてね。痛くて動けません」
紐を引っ張れと言われて素直に引いたらこの仕打ちを受けた。
ドッキリの予行らしいが、この家に客など来ないことを亀雄は知っている。
「それな。ほんとは黒板消しにしたかったんだが、あいにく持ち合わせがなくってな」
黒板消し差し入れとけばよかった。そうつぶやいて亀雄はため息をついた。
「消毒液いるか? 工業用のアルコールだけど」
「結構です。鶴丸さん悶絶してたじゃないですか、この前」
「切ったの額だったしな。酔いが一発で醒めた【7】」
頭を冷やしている間に外は真っ暗になっていた。脱出の機会は失われたようだ。【9】
「ま、日雇いで配達員に採用された【14】と思って、頑張ってくれ」
己の素直さと迂闊さを呪いながら、亀雄はため息を吐いた。
鶴丸の無茶振りはいつものことだが、今回はさすがに気が重い。
当の本人は、亀雄が睨み付けるのにも構わず、上機嫌でコーヒーを入れている。
鼻歌に合わせるかのように、二匹の犬がしっぽを振ってうろつき回っている。
動物病院に運ばれたものの、行く当てのなかった彼らを、鶴丸が引き取ってきたのだ。
鶴丸がトリマーとして務めている動物病院で二人は出会った。
亀雄はその頃飼い犬の躾に悩んでおり、鶴丸は親身になってアドバイスをくれた【12】。
自分の時は散々暴れていたのに、座って大人しく爪を切られている飼い犬に、「裏切り者め」と歯がゆい思いをしたものだ。
鶴丸の腕は確かだった。爪切りでなら世界を狙えると豪語する【5】姿に、冗談でなくあり得るんじゃないかと思ったほどだ。
それから色々と相談をするうちに、個人的にも親しくなっていった。
親子ほどの年齢差があるが、その気さくな性格から、二人は学校の先輩後輩のような付き合いを続けていた。
いや、気さくというのは語弊がある。かの人物を形容するにもっとふさわしい言葉があった。そう、
「変わり者」だ。
鶴丸の住まいは、半径五㎞内に民家が一軒も建たないド田舎だ。
電気が通らないので、屋根にはソーラーパネルが並び、庭には自家発電のモーターが回っている【15】。
人間より動物のほうが訪れる頻度が多い。夜中変な音がするので、冷蔵庫が故障したかと思ったら、犬が蛇と喧嘩していたこともあったらしい【3】(さすがに噛まれていないか慌てたそうだ)。
人間関係に煩わされるのが嫌だというのがその理由だ。
が、その割には、しょっちゅう演劇を見に行ったり、飼い犬の姿をインスタグラムに投稿したり【11】、片道2時間かけて動物病院に毎日通っている。
必要な買い物は週一で買いこんでいるが、どうしても都合がつかない時や、家からの差し入れがある時に、亀雄が泊りがけで運んでくるのだ。
今回は炊飯器が壊れたと連絡を受け、その他差し入れを含め持ってきたのだが……
「せめてもうちょっと内容考えてくださいよ」
「何だ、スカボロフェア知らないのか? 有名なんだが」
「知ってますけど。
『そうしたら付き合ってやろう!!』って怒るに決まってるじゃないですか」
「怒るかな?」
「前とは状況が違うんですから。仕方ないなでは済まされませんよ」
「そうか。怒るか」
鶴丸は、トレイにコーヒーのセットを載せて戻ってきた。
角砂糖があらかじめ入ったコーヒーカップ。【2】鶴丸は一つで亀雄は二つ。
河童の皿をモチーフにしたお皿には(鶴丸が衝動買いしたらしい)、ヨーグルトケーキが載っている。
用意された食器は両方とも二つ。
三か月ほど前は、そこに三つ並んでいた。【1】
「その方がいいんだ。あの人は少しでも気持ちを吐き出したほうがいい」
褐色の液体がカップに注がれる。中の角砂糖が、同じ色にじんわりと染まっていき、すぐに沈んで消えた。
「いいんですか? 本当に。もう二週間もないんですよ?」
「何がまずいんだ?
雇われのトリマーと、親を癌から救った名外科医【13】。どっちがいいかなんて言うまでもない」
「損得の問題じゃないでしょう。お互いの気持ちが大事なんじゃないですか?」
「言うねえ。若造が」
年の差を考えれば、生意気でしかない亀雄の発言なのに、鶴丸は気にしていないようだ。
カップに息を吹きかけて、冷ましたコーヒーを口に注ぐ。
「気持ちというなら尚更さ。
こっちがいくら無茶を吹っかけても、あの人は笑って受け入れてくれた。
でもそれは我慢していただけだ。本当は笑顔じゃなかったのさ。
本音が出ないことにいら立って、私はさらに無茶を言う。あの人はずっと我慢し続ける。
堂々巡りだ。情けなくなるな」
二匹のうち大きい方の犬が、亀雄のそばでごろりと寝転がった。
頭を撫でてやると、心地よさそうに目を細めて頭を伏せる。毛並みはとても柔らかい。
「そんなの、単なるボタンのかけ違いでしょう。
話し合えば済むことじゃないですか」
「最初のボタンがどんなだったか、もうわからん」
鶴丸は笑っていた。自分を嘲るような薄い笑顔だった。
「出会った頃の気持ちを思い出そうとした。二人でどうなりたかったか。
でもわからなくなった。理想を探せば探す【6】ほど、
今まで重ねてきた時間とかけ離れていく。
最初からボタンなんざなかったのかもしれん」
小犬がコーヒーカップをのぞき込み、首を突っ込んで匂いを嗅いでいる。【4】。
鶴丸は、小犬を引き戻し、胸元でそっと抱きしめた。
さりげなく視線が亀雄から逸れる。
「だから、あの人には怒って欲しいのさ。
怒って呆れて、こんな奴に振り回されていたのかと、笑い話にしてほしい。
我慢せずに、対等になれる相手と幸せになってほしい【問題文】」
鶴丸は顔を横に向けた。見つめる先には、座る者のいないソファがあった。
「私は、あの人を幸せにできない」
「そういう繊細なところ、見せておけば良かったのに」
「乙女心は複雑なんだ。覚えておくと役に立つぞ」
それで話は終わりのようだった。
何事もなかったかのように、鶴丸は河童の皿のケーキを口に運ぶ。
「これ、美味いな。手作りか?」
「そうですよ。母が最近ヨーグルト作りに凝ってまして【10】」
「作れるものなのか?」
「種になる菌があれば誰でも出来るみたいです。温度管理が大事だって。今度豆乳でもやってみるって言ってましたね」
「へえ。お袋さんに美味しかったって伝えておいてくれ」
「わかりました」
「たんこぶまだ痛むか?」
「見た目目立たなければ別に問題ないです」
「君は中々懐が広いな」
「広いですよ。無茶振りされても付き合ってあげてるんですから。感謝してくださいよ」
「ああ、ありがとう」
「どういたしまして」
「みたらしは最近どうだ? 少しは――」
「ようやく爪切りを――」
その後の会話は脈絡なく、とりとめなく、ゆったりと。
幻想的で可笑しな歌のように続いていった。
1.河童の皿は1枚足りません。
2.コーヒーカップには角砂糖が忍ばせてあります。
3.音の正体を突き止めます。
4.コップの中に生き物が入っています。
5.爪切りで世界進出を目指します。
6.ボタンを探して走り回ります。
7.飲みすぎには工業用アルコールが効きます。
8.炊飯器の妖精には荷が重すぎます。
9.脱獄には黒板消しが足りません。
10.ヨーグルトを作ります。
11.インスタグラムに投稿します。
12.床屋を味方につけます。
13.ガンを克服します。
14.うっかり受かります。
15.電気が来ていないので自分で発電します。
「Goodスープ認定」はスープ全体の質の評価として良いものだった場合に押してください。(進行は評価に含まれません)
ブックマークシステムと基本構造は同じですが、ブックマークは「基準が自由」なのに対しGoodは「基準が決められている」と認識してください。