故に、彼は大会に出る事はできず、今後サッカーを続けることは難しいだろうと思われた。
が、それから一週間と経たずに、少年は元気にサッカーをしている。
どういうことだろうか。
【ウミガメ】
彼の一番大切なものを特定する必要はありますか?
はい!! [良い質問]
一番大切なものとは、彼の体の一部ですか?
いいえ!
彼の一番大切なものは足ですか?
いいえ!
サッカーを続けられなくなったのは、精神的な理由ですか?
はい!
「元気にサッカーをしている」のは、「大切なもの」が元の状態に戻ったからですか?
いいえ!
一番大切なものは小物ですか?
いいえ。一般的に小物と呼ばれるものではありません
3行目のサッカーは1,2行目のサッカーと同じですか?
いいえ!! [良い質問]
直球ですが、壊れたのは友情ですか?
いいえ。
3行目はサッカーゲームですか?
いいえ!
大切なものは、トロフィーやメダルなど、彼の成果を示すものでしたか?
いいえ。
大切なものはゲーム機ですか?
いいえ! [良い質問]
大切なものは、形ある物ですか?
はい。
母親が洗濯ミスしましたか?
いいえ。
スパイクですか?
いいえ。
では「〇なずま〇れぶん」のゲームソフトですか?
いいえ。
1,2行目がサッカーゲームですか?
いいえ! どれもテレビゲームの類ではありません
全てのサッカーは比喩ではなく、一般にサッカーと言われるものですか?
いいえ! “サッカー”とは呼ばれません [良い質問]
大切なものはパソコンですか?
いいえ!
3行目サッカーが違うサッカーですか?
はい! [良い質問]
自転車でやるサッカーですか?
いいえ。
大切なものはメガネですか?
いいえ。
天国でやるサッカーですか?
いいえ。
動物は登場しますか?
いいえ!
3行目はサッカー観戦ですか?
いいえ。
彼と母以外に重要人物は登場しますか?
はい。
三行目のサッカーとは、スポーツとも呼べないものですか?
いいえ! れっきとしたスポーツです
大切なものサッカーに必要なものでしたか?
はい! これがなくてはできません [良い質問]
ロボットサッカーができなくなったため、リアルサッカーを始めました的な感じですか?
はい!! 解説行きます! [正解]
大切なものはボールですか?
いいえ。
ロボットといっても、人の姿はしていない。が、それは海野にとって、最高にして唯一の親友だった。
高校2年までの5年間、彼は親友に改良を重ね続けた。
そしてついに、ロボットサッカー大会の地区予選を勝ち抜き、全国大会への出場が決まったのだ。
海野は喜んだ。自分と親友の絆が、目に見える形で表れたからだ。
全国大会に向け、更に彼は親友に改良を重ねた。
しかし、その努力は結果として報われる事はなかった。
全国大会前日、海野が学校に行ってる間、彼の母親が彼の部屋を掃除している時に悲劇は起こった。
棚の上を拭いている最中、誤ってロボットを起動させてしまったのだ。母親は、気付かなかった。
動き出したロボットは、そのまま棚から転落してしまった。
海野の唯一の親友が動き出す事は、なかった。
海野は落胆し、新しいロボットを作る気など起きなかった。作ったとして、それとの絆は、どうしても偽物に思えてしまう。
もうロボットサッカーを続けるのは不可能であろう。周囲の人々はそう思った。
「残念だったな。俺、お前が優勝するの楽しみにしてたんだぜ?」
行かなければならないと、進まない気持ちで仕方なく行った学校で、海野を待っていたのは一人のクラスメート、亀岡の言葉だった。
「お前、もうやらないのか? ロボサッカー」
「うん。俺にとって、あいつだけなんだよ。俺のロボットは」
「ふーん……あ、そうだ!」
亀岡は、身を乗り出して海野にこう提案した。
「サッカー部に入らないか? 運動神経よかったよな、確か」
「まあ……そこそこは」
「授業で見てて、結構筋良いぜ、お前。よし、決まりだ! 今から入部手続きしてくる!」
「あ、ちょっ、俺はまだやると言ったわけじゃ」
海野の言葉を無視して、亀岡は半ば強引に海野をサッカー部に入れさせた。
最初は渋々というか、親友がいなくなった穴を埋めるために、彼はサッカーをやっていた。
しかしこれが中々楽しい。仲間がすぐ近くにいるサッカーが、海野にとっては新鮮で、とても楽しいと思えた。
「じゃあ部活行って来るよ。サッカーって、楽しいんだな」
棚の上のかつての親友。
海野は今日も、それに挨拶をして部屋を出るのだった。
もう起動されることのない、海野の部屋の机の上で閉じられたまま埃を被ったラップトップ。
その中に保存された、ロボットのプログラムがびっしりと書かれたメモの最後に、ある一文が付け加えられていた。
誰が書いたのか、誰が読むのか、分からない言葉。
しかし、数年後か数日後か、海野がこのラップトップを開き、この一文を見つけた時、同じ言葉を口にするだろう。
「君と共に歩めたことを、俺も誇りに思う。」
と。
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