「リンゴが入ったカゴが8こあります。1つのカゴには7このリンゴが入っています。ぜんぶでいくつでしょう? しきとこたえをかきなさい」
この問題に対し、何人かの児童は以下のように解答した。
しき:8×7=56 こたえ:56こ
掛け算には「交換法則(A×B=B×A。かける数字とかけられる数字を入れ替えても答えは変わらない)」があるため、通常はこの式と答えでも間違いではない。
小学校の先生であるカメオは当然そのことを知っているが、上記の解答を書いた児童にはあえて式の方だけに×をつけている。
カメオ先生の狙いは何だろう?
【ウミガメ】
出題された問題文に出てくる数字の順は重要ですか?
YESNO ある意味重要といえるし解説としてはどうでもいいとも言えます。
先生がつけた×は 不正解のバツですか?
YES
×をつける、とは掛け算の×(かける)を補足しているということですか?
NO 2の意味です。
しき:7×8=56 こたえ:56こ にはマルをつけましたか?
YES
7×8は正解になりますか?
YES 4の通り
バツがついた原因はしきが8×7の順だったからですか?
YES
かごとりんごが重要ですか?
YESNO 重要と言えば重要ですが解説としてはどうでもいいとも言えます。
こういう問題の模範解答 について7×8にするように授業で教えていましたか?
YES
かけ算を単なる計算としてではなく、意味(7つのリンゴが8セット)で理解してほしかったからですか?
YES
交換法則をしらない人が世の中にいることは重要ですか?
YES! 小学生では知らない人もいるでしょう。 [良い質問]
事前にこの問題を生徒に解かせたことがありますか?
YESNO 無いと思いますが関係ありません。
学習塾の存在は関係しますか?
NO 別に舞台が学習塾でも構いません。
いつか交換法則をしらない人に採点されても確実に正解が取れるように教えるためですか?
YESNO 解説ではそのように教えていますが狙いとしてはあまり重要ではありません。
解説する時に「7×8って解説だったけど8×7でも○ついてるのはどうして?」といちいち質問されるのが面倒だからですか?
NO
小学校ではたまに「隣の人と交換採点してー!」ということがあるからですか?
YESNO 関係ありません。
まちがえた問題は記憶にのこるので 交換法則を教えるチャンスだと思いましたか?
YES! その通り! [正解]
この後で交換法則の授業をやる予定なので、今OKにしてしまうと説明がややこしくなるからですか?
NO! ですが…… [良い質問]
ねらいは先生としての指導といえますか? [編集済]
YES
カメオ「はい、テストはどうでしたか? 特に最後の問題、×になっている人が結構いましたね」
児童1「せんせー、このもんだい、しきはどっちでもいいんじゃないですか?」
児童2「7×8も8×7も、りょうほう56じゃないですかー」
カメオ「そうですね。では、7×8の式でも8×7の式でもどちらでも構わない理由を説明出来る人はいますか?」
児童1「え、せつめい?」
児童2「そんなこといわれても……」
カメオ「たしかに、答えが同じになることは分かっていると思います。でも、数字を入れ替えても同じ答えになるということはどうやって説明しますか?」
児童1「えーっと、うーんと……」
児童3「はい、わたしわかります! 1つのカゴに7こずつになるように8このカゴにリンゴをおいても、8このカゴに1こずつ7こになるようにリンゴをおいてもおなじになるので、7×8でも8×7でも同じです」
先生「はい、よくできました。そうですね、例えば○を12こ並べた時、たてに3個、よこに4個並ぶように書くと、たて×よこにしても、よこ×たてにしても同じ12個になります。このようにA×BとB×Aが同じになることを、掛け算の交換法則といいます」
児童2「なるほどー」
児童1「えー、じゃあなんで8×7はまちがいなんですかぁ?」
カメオ「本当はどちらも正解ですが、何故先生は8×7=56と書いた人を間違いにしたと思いますか? 誰か分かる人!」
児童4「はい! かける数とかけられる数が逆になっているからです!」
カメオ「そうですね。掛け算は(1つ分)×(いくつ)=(全部の数)というふうに教えましたね。今回はカゴ1つ分には7個のリンゴがあり、それが8個分あるので、7×8=56、としなければ間違いとしました。8×7、とすると、カゴが56個あることになってしまいますから、意味が違ってきます」
カメオ先生の説明を聞いて、8×7派の児童も納得したようだ。
カメオ「さて、先ほども教えたように、掛け算には交換法則というものがあり、本来は逆に書いてあっても正解となります。しかし、大人の中には絶対に掛ける数と掛けられる数を逆に書いてはいけない、という人もいます。理由は先ほどの通り、逆に書くと意味が違ってくるからです。そういう大人もいますから、みなさんは文章をよく読み、出題者がどのように考えて問題を出しているかということを考えながら、式を作ったり答えを書いたりしてください。では、交換法則が理解できた人は8×7=56と書いていても○をつけますので、並んでください」
ただ単に正解不正解をつけるだけでなく、何故正解なのか、何故不正解なのかを理解させることが、正しい教育者なのだろう。
要約:授業で交換法則を教えるきっかけにするため
【カメコの豆知識】
小学校の算数レベルでも、式による論争はよくあるの。掛け算を導入する際に、教科書では「(かけられる数)×(かける数)」というふうに、数字をどちらに書くかによって「役割」を与えているの。だから問題文にあるような問題の場合も、「(1つ分)×(いくつ)」で計算するよう指導しているらしいわ。
8×7=56が間違い派には「文章の意味をきちんと理解しているかの確認のために必要」や、「式と計算では意味が違う」という意見が、正しい派には「交換法則が成立するのは当たり前」や、「そのようなことにこだわっていても教育の時間の無駄」という意見があるの。
先生の中には、「学習指導要領に従っているだけ」という人もいれば、「理解している上で誤答としている」という人もいると思うけれど、私としてはきちんと「何故間違っているのか」「何故こう書かなければならないのか」「これで正解である根拠は何か」ということを教えることができるのが、本当の先生だと思うの。
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