鉄に囲まれた意思の物語

カメミへのいじめは酷かった。主に容姿による暴言がひどく、日ごとにエスカレートしていく。

やがて耐えられなくなったカメミは、自殺を計画することにした。

「こんな醜い顔なんて、消えてしまえばいい。このまま、身体ごと焼いてしまおう」

そう思ったカメミは、早速遺書を書き始めた。しかし、ふと思った。現場に遺書を残したのでは、焼身自殺した際に遺書も焼けてしまう可能性がある。それに、自宅の近くにある憎きクラスメイトの家を放火し、その中で死のうと考えている。自宅まで延焼する可能性もなくもないため、自宅に置いておくのも危ない。

迷ったカメミは、計画実行当日に、学校のロッカーに遺書を入れることにした。よほどのことが無ければ燃えることはないだろうし、こうすれば、警察があれこれ調べる際にロッカーも調べるだろうし、少なくともカメミがいなくなったことで先生の誰かがカメミのロッカーを整理するはずだ。その時に発見されるだろう。



遺書を準備し、意を決したカメミ。クラスメイトが帰った時間を見計らい、ガソリンをばら撒き、放火する。幸いにも人通りが少ない場所だったので、作業しているところを見られずに済んだ。

火を放つと、カメミは自信にもガソリンを掛け、引火させる。



両親は早くに亡くし、身寄りはない。

他に迷惑を掛ける人はいない。

長い間、よくいじめてくれたね。

一緒に、地獄に落ちようか。





火災発生から数時間後、焼け崩れた建物から二人の遺体が見つかった。両方とも同じ歳くらいの女子高生のようだ。

警察は近くの高校に聞き込みを行うなど、身元を調べた。すると、ラテシン高校のウミコとカメミであることが分かった。

そして火事の原因や身元を調べる過程で、カメミのロッカーから遺書が見つかった。こうして、カメミは放火に巻き込まれたのではなく、焼身自殺であることが判明したのだ。



【遺書】

私は、不細工な顔を理由に、二年間いじめ続けられていました。

主にウミコ、カメタ、マリネの三人です。周りの人も助けてくれません。先生に言っても、取り合ってくれませんでした。

ずっと我慢し続けましたが、もう限界です。私は、一番いじめられたウミコと共に地獄に向かいます。

天国のお父さん、お母さん、一緒になれなくてごめんなさい。こんな顔だったけれど、私を産んでくれてありがとう。

カメタ、マリネ、いつもからかってくれてありがとう。あなたたちも、いつかは地獄に連れていってあげるから、楽しみにしてね。





次の夜にも、クラスメイトの家に不審火が……







要約：カメミは焼身自殺するため、遺書は焼けてしまわないように自身のロッカーに保管していた。それを誰かが発見したため、放火などの事故ではなく、カメミは自殺したことがわかった。