「子育てのできない女」

私は、一部始終を見ていた。

だが、私は立場上、彼女を問い詰めることはできない。

彼女が、子を育てることのできない理由も知っている。



え？よその子が混じってて、親は気づかないのかって？

そりゃ、肌の色が違えばわかることもあるが…

生まれたての子の見かけは、そう変わらないものだよ。

本当の、生まれたての時にはね…。



大きくなり、自分の子でないと気づいた時には手遅れ。

…あるいは、気づかないままなのかもしれない。



それに、おそらく最終的には、あの家の親は…

彼女が置いていった子だけを育てることになる…。



…え？彼女が何を企んでいるかって？彼女がやったことが全てだよ。

彼女は、自分のやってることを悪いとは思っちゃいない…なぜなら、彼女は…



カッコウだからだ。



カッコウという鳥は、自分の生んだ卵をオオヨシキリやホオジロ、モズといった他の鳥の巣に紛れ込ませて、

子育てをさせる習性がある。これを「托卵」という。



他には、ホトトギスがウグイスに対して托卵をするようだ。



カッコウの卵は他のヒナより早く孵化するため、他のヒナが孵る前に、他の卵を巣から落としてしまう。



こうして親を独占し、親は疑問を持たず育ててしまうのだ。



なぜカッコウがこういう習性を持つかは、はっきりわかっていない。

ただ、卵を温めるのに体温が足りないから、という説がある。



なお、卵の色等で気づかれるのを防ぐため、卵の色や斑紋が仮親の卵に似るよう進化しているらしい…



それなら、体温調節のほうに進化してもよさそうだが…

自然とは、不思議なものだ。



他に、子育てに費やすエネルギーを卵を生むエネルギーに回すことで、より多くの子孫を残すという説もある。



複数の巣に１つずつ卵を産むことで、仮にある巣が襲われても、生存率を上げることも出来るわけだ。

（普通の鳥は自分の巣が襲われれば一家全滅）



また、卵を仮親の卵に似るように進化する過程では、ヒナは仮親（たとえばモズ）を本当の親と思っていて、

托卵する場合も、モズに育てられたカッコウはモズの

巣にしか卵を置かないそうだ。



ん？私か？私はしがない鳥類学者さ。



しかし、カッコウは本能に従った行動だが、これが人間だったらどうか。

育児放棄・ネグレクト、産みっぱなし…



我々はもっと、子供たち対して責任を持つべきだろう。

そのためには、母親に対する周りのサポートも大事だろうけどね。