皆さんは、ゴールデンウィークは楽しんでますか?
「連休を思いっきり楽しんでいるよ!」という人もいれば、お仕事をしている人もたくさんいると思いますが、ぜひこの企画を楽しんでいただけたら幸いです。
それでは以下問題文の発表です。
~~~~~~~~~~~~~~~~
それまで本にまったく興味のなかった女。
しかしある日、カフェオレを飲んだことがきっかけで1冊の絵本を熱心に探すようになった。
いったいなぜ??
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
この問題には解説を用意しておりません。皆様の質問がストーリーを作っていきます。
今回は、抽選ソフト「Bin5」(http://www.vector.co.jp/soft/winnt/game/se499919.html)を使用してあらかじめ決めた番号を採用します。
以下のルールをご確認ください
【ルール】
#####要素募集フェーズ#########
出題直後から質問を受け付けます。
皆様から寄せられた質問の中から、出題者(まりむう)が
#big5#15個#お応えし、良質化します。
※良質としたものを以下【要素】と呼びます
※良質以外の者は「YesNo?どちらでも構いません。」とお応えします。こちらは解説に使わなくても可 です。
各要素を含んだ解説案をご投稿ください。
※また、矛盾が発生した場合や、あまりに条件が狭まる物はMC権限で採用いたしません。(矛盾の場合は前者優先)
矛盾例)田中は登場しますか?&今回は田中は登場しませんよね? 前者優先
狭い例)ノンフィクションですか? 不採用
狭い例)登場キャラは1人ですか? 不採用
狭い例)ストーリーはミステリー・現実要素ものですよね? 不採用
など
その後、選ばれた要素を取り入れた解説の投稿フェーズとします。
なお、一応要素が揃った後、まとめもに要素を書き出す予定です。
#####投稿フェーズ#########
解説投稿フェイズでは、要素に合致するストーリーを考え、質問欄に書き込んでください。
とんでもネタ設定・超ブラック真面目設定などなどおすきなようにお創りください。
※説明が不十分な部分がありますが、過去の「正解を創りだす」もぜひご覧ください。
魅力のある銘作(迷作?)・快作(怪作?)等いろいろ先例がございます。
■時間割
・要素募集期間
出題~15個要素が揃うまで。
・投稿期間
15個揃ったあと~5月8日(日)21:59
・投票期間
5月8日(日)22:00~5月15日(日)21:59
そして今回は、以下3賞をご用意いたしました。
なお、見事シェチュ王になられた方には、次回の【正解を創りだすウミガメ】を出題していただきます。
■最も好きな解説に投票
・最優秀作品賞・シェチュ王(投稿毎 別々にカウント)
■最も組み込むのが難しかった要素(もしくは投稿してない人は、難しそうな要素)に投票
・最難関要素賞(最も票を集めた要素に与える賞)
■最も要素を使うのがうまいと思った人に投票
・最優秀要素組み込み賞(最も票を集めた人に与える賞)
なお、質問欄の文字数制限は全角300文字?のようです。
(でも編集すればもっとはいります。まあ、やや仕様バグ技っぽいのでいつか修正されるかもしれませんけど・・
あと、良質表示で大文字になることは覚悟お願いします。)
質問した人は、できるだけ正解を創り出すと投票にも参加いただけると盛り上がるかと思います。
通常の出題と違い、趣味丸出しで構いませんwお笑いが好きな人も、カニバが好きな人も、ミステリーだってOKです。
(まあ、要素的に難しいとは思いますがww)
それでは、今回もたくさんのご参加お待ちしております!
それでは~ Let's Start!~
結果発表!
カナブンを金分と書き間違いますか?
YesNo。どちらでも構いません。
雪が降り積もりますか?
YesNo。どちらでも構いません。
幼い日の味噌汁を思い出しますか?
YesNo。どちらでも構いません。
美脚の痴漢がいますか?
Yes!美脚の痴漢がいます!(要素1) [良い質問]
父の日に父は会社へ行きましたか?
YesNo。どちらでも構いません。
リア充が全員滅びますか?
YesNo。どちらでも構いません。
バスクリンを買いますか?
YesNo。どちらでも構いません。
田中の耳と鼻がくっつきますか?
Yes!田中の耳と鼻がくっつきます!(要素2) [良い質問]
漫画は噛めば噛むほど美味しいですか?
YesNo。どちらでも構いません。
足がしびれますか?
YesNo。どちらでも構いません。
春が待ち遠しいですか?
Yes!春が待ち遠しいです!(要素3) [良い質問]
私利私欲のためにゴミ掃除をしますか?
YesNo。どちらでも構いません。
サンタクロースはいないと叫びますか?
YesNo。どちらでも構いません。
骨をいたわりますか?
YesNo。どちらでも構いません。
子育てが大変ですか?
YesNo。どちらでも構いません。
右目の長さが世界一ですか?
YesNo。どちらでも構いません。
靴下に穴があきましたか?
Yes!靴下に穴があきます!(要素4) [良い質問]
甘いカレーに涙しますか?
Yes!甘いカレーに涙します!(要素5) [良い質問]
シリアスなシーンで「君は」を「黄身は――」と言い間違いますか?
YesNo。どちらでも構いません。
昼間からビールを飲みますか?
YesNo。どちらでも構いません。
お気に入りのワンピースを汚しますか?
YesNo。どちらでも構いません。
待ち合わせは体育館裏ですか?
Yes!待ち合わせは体育館裏です!(要素6) [良い質問]
お弁当のニンジンを残しますか?
YesNo。どちらでも構いません。
ウミガメのスープは登場しますか?
YesNo。どちらでも構いません。
食べても食べても物足りませんか?
YesNo。どちらでも構いません。
トイレが親友ですか?
YesNo。どちらでも構いません。
あついものが苦手ですか?
YesNo。どちらでも構いません。
お皿が一枚足りませんか?
YesNo。どちらでも構いません。
父さんは古びたランプを残しますか?
YesNo。どちらでも構いません。
腹腔内が異様に発達していますか?
YesNo。どちらでも構いません。
ペットが活躍しましたか?
YesNo。どちらでも構いません。
黄金の夢は重要ですか?
Yes!黄金の夢は重要です!(要素7) [良い質問]
迷子になりますか?
YesNo。どちらでも構いません。
みんなグルですか?
YesNo。どちらでも構いません。
爆弾が200円で売っていますか?
YesNo。どちらでも構いません。
お腹が減っていますか?
YesNo。どちらでも構いません。
人形の指が一本たりませんか?
YesNo。どちらでも構いません。
グラスの中身がこぼれますか?
YesNo。どちらでも構いません。
数学Ⅱの教科書を棚の中から引き出しますか?
YesNo。どちらでも構いません。
ライフルが暴発しますか?
YesNo。どちらでも構いません。
仮死状態になりますか?
YesNo。どちらでも構いません。
日帰り旅行は関係ありますか?
YesNo。どちらでも構いません。
レシートが真実を語りますか?
YesNo。どちらでも構いません。
ガムテープが剥がれませんか?
YesNo。どちらでも構いません。
840円で家が建ちますか?
Yes!840円で家が建ちます!(要素8) [良い質問]
目の前にあるのに見えていませんか?
Yes!目の前にあるのに見えてません!(要素9) [良い質問]
歌詞が出てきませんか?
YesNo。どちらでも構いません。
三日月形の墓石がありますか?
Yes!三日月形の墓石があります!(要素10) [編集済] [良い質問]
深夜コンビニをうろつきますか?
YesNo。どちらでも構いません。
虐待は重要ですか?
YesNo。どちらでも構いません。
アルバムに涙しますか?
Yes!アルバムに涙します!(要素11) [良い質問]
夢うつつに棺桶の中に入りますか?
Yes!夢うつつに棺桶の中に入ります!(要素12) [良い質問]
あの日の夕焼けは美しかったですか?
YesNo。どちらでも構いません。
空から猫が降ってきますか?
YesNo。どちらでも構いません。
鉛筆をへし折りますか?
YesNo。どちらでも構いません。
頭からお風呂に突っ込みますか?
YesNo。どちらでも構いません。
スカートをはいて、クルッと回ってみせますか?
YesNo。どちらでも構いません。
スマホを水溜まりに落っことしますか?
YesNo。どちらでも構いません。
気がついたら、一人増えていますか?
YesNo。どちらでも構いません。
[編集済]
本当の友達は居ませんか?
YesNo。どちらでも構いません。
チェーンソーを振り回しますか?
YesNo。どちらでも構いません。
ブランコを漕ぎますか?
YesNo。どちらでも構いません。
神様は残酷ですか?
Yes!神様は残酷です!(要素13) [良い質問]
虹の橋を渡っていきますか?
YesNo。どちらでも構いません。
テレビに出演しますか?
YesNo。どちらでも構いません。
新しい機械を開発しますか?
YesNo。どちらでも構いません。
花火に振るえますか?
YesNo。どちらでも構いません。
今夜も一人ですか?
YesNo。どちらでも構いません。
イジメに遭っていますか?
YesNo。どちらでも構いません。
遅れてやって来ますか?
YesNo。どちらでも構いません。
2人で料理を作りますか?
Yes!2人で料理を作ります!(要素14) [良い質問]
眼鏡を外しますか?
Yes!眼鏡を外します!(要素15) [良い質問]
嘘がばれますか?
YesNo。どちらでも構いません。
真実を話しますか?
YesNo。どちらでも構いません。
金の亡者は重要ですか?
YesNo。どちらでも構いません。
当時田中姓だった私は高校生で登校のため電車を利用していました。
そこで①美脚の痴漢に遭い困っている私を助けたのが先輩です。
先輩は私と痴漢の間に入り身を呈して私を守ってくれました。
その時②私の耳に先輩の鼻が触れてすごくドキドキしました。
それが縁で先輩と交際するようになりその年の春に始めて先輩の家に招待されました。
これほど③待ち遠しい春は今にも先にもありませんでした。
出迎えた先輩の④靴下は穴あきで思わず笑ってしまい
私が辛いのが苦手だと言う事を知っていて作ってくれていた⑤甘口のカレーに涙しました。
学年の違う私たちの待ち合わせ場所はいつも⑥体育館裏。
彼はミュージシャン志望で音楽で⑦一発当てる夢を抱いていました。
そんな彼の路上ライブソング⑧『840円の価値』がヒットして家が建ちました。
私と彼の生活がこれから始まる、その矢先のことでした。
彼が⑨前方確認を怠り⑩三日月形の墓石に激突して帰らぬ人になりました。
一人残された私は彼の⑪アルバムソングを毎晩抱きながら聞き涙しました。
いっそのまま私も死んでしまおうかと⑫毎晩自殺を考えました。
⑬本当に神様って残酷です。
でも結局は私は死ぬことが出来ませんでした。
私のお腹の中には既に新しい命が宿ていたからです。
正直一人で子育てするのは自信がありませんでしたが
試行錯誤、四苦八苦しながら
私は一生懸命に娘を育てました。
今では娘もずいぶん大きくなって⑭一緒に家事や掃除をして生活をしています。
大変だったけど私はいま幸せです。
そう書かれている絵本を見て思わず目頭が熱くなり⑮眼鏡を外すと
カフェオレに肘がぶつかってしまい読書感想文のため適当に選んだ図書館の本を汚してしまい弁償のため同じ本を一生懸命探したのです。
[編集済]
要素の順番に短いながらもわかりやすくまとまっているのがいいと思います。 [編集済]
タイトル『夏休みの勉強は図書館かカフェで』
※でもカフェで勉強するときはこぼさないように! [編集済] [良い質問]
『常に月見し竹の姫』 [編集済]
日本の古典とラテシンはいかに融合できるのか・・・・それに挑んだ意欲作。 [編集済] [正解][良い質問]
保育園のときから、ときどき、黄金の夢を見る。
五百円玉よりもピカピカしていていて、妹のミリカだったら、きっと目をドルマークにして飛びつくだろう。と、思ってミリカに尋ねてみると、彼女も小さいころから黄金の夢を見るそうだ。
「何だか縁起が良いわねえ。きっと、あなたたちは、とってもお金持ちになるのねえ。兄妹あわせて頑張って頂戴」母は冗談めかして「それで、私を養ってね」と付け加えると、鼻歌交じりに台所に向かっていった。
わたしとミリカは顔を見合わせると、どちらともなく、くすくすと笑った。それから宝クジ当たるといーねだの、いや、宝クジだと可能性が低いから株か為替でしょ、だのと皮算用をし、布団に潜り込んだ。
ところで、ミリカの紹介をしよう。彼女は今まで読書が好きではなかったけれど、カフェオレを飲んでいる最中に文学少女って可愛いと思い絵本を好むようになり、今となってはぶっ飛んだ本が好きだ。たとえば美脚のお姉さんが女の子を痴漢しろと脅迫されて、しないと殺されてしまう設定の本なんかが好きだ。彼女の本棚から本を借りるときは細心の注意を払い、石橋を叩いて渡る覚悟が必要になる。だから、そんな彼女に設定がそこまでぶっ飛んでいない『竹取物語』の内容について説明しても馬の耳に念仏、猫に小判である。
「竹取物語の讃岐の造は、黄金を、竹の中から手に入れることになるんだよね。わたしたちも、光り輝く竹を割ったら、お金持ちになれるかも」
「ちっちっち、お姉ちゃん、光り輝く竹なんて論理的、科学的にあり得ないよ。そのトンデモ本はあたしが引き取ってあげよう。ぎぶみーたけとりものがたりふぉーみー」
「トンデモ本じゃないよ。かぐや姫って知ってるでしょ? アレの元となった話だよ」
「はーん? ま、中学生になったらやるでしょ。小学生のうちから小難しいこと考えてたら、一周回って天才になっちゃうよ?」
「サンキューソーマッチじゃないのそれ。大歓迎よ。……って待って、一周回ってってことは、あなた、婉曲的にわたしのこと馬鹿にしたでしょ」
「じょししょーがくせーに婉曲なんて言葉分かりませーん。難しすぎですー。簡単に言い換えてくださいー」
「……ムカつくなあ」
「へへーん」
そして、わたしたちは小波めいた微睡みの中、ゆっくりと眠りに落ちてゆく。
再び黄金の夢を見るまで、わたしたちは今日のことを忘れている……
そして、その時がくる。
ミリカがもぞもぞと布団の中で身動きするものだから、わたしは目を覚ます。
「どうしたの?」
「黄金の……夢……」
「わたしも見たよ。黄金の、夢」
「行かなきゃ……」
「何処に?」
「……公園。有香乃公園に、彼女が……」
「彼女? 有香乃公園?」
わたしは、ふらふらと千鳥足気味に歩くミリカを追って、寝間着姿のまま、夜の道を歩いて行った。
*
その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。
怪しがりて寄りて見るに、三寸ばかりなる人、いと美しうて居たり。
(竹林の中に、根の光る竹が一本あった。訝しげに覗き込むと9センチほどの少女がとても可愛らしく座っているのであった。)
*
「月から……わたしは、月から来ました」
9センチばかりで、
烏の濡れ羽色の長髪がとても美しい、
血が通ってなさそうなほど真っ白な肌とのコントラストが大和撫子という言葉を真っ先に想起させる少女は睫毛の下で目を伏せ、幽かに瞬いた。
「――かぐや姫」
わたしとミリカ、どちらが先にいったのかは、分からなかった。
二人同時だったようにも思えるし、そうでもないように思える。
ただ、彼女の存在がひどく脆く儚いものであると一瞬にして想像がついた。
「名前は?」
「……分かり、ません」
「名前が、ないの?」
ミリカが首を傾げた。
「はい。月では、この国の言葉では72番と呼ばれていましたが」
「72番?」
「わたしは檻の中で育ちました。生まれてきただけで、罪人だったのです」
「どうして?」
「さあ。政治的駆け引きでもあったのかもしれませんが、わたしの知ることではありません」
「大変だったんだね」
「いえ、特には。外を知らなければ、自由を知らなければ、辛いことは何もありません」
「そっか。あなたのこと、カグヤって呼んでもいいかな?」
「……はい。どうぞご自由に」
わたしは一言も喋らなかった。喋れなかった。
彼女のまとう寂しげな雰囲気に、
わたしはすっかり、魅入られてしまったのだ。
*
おのが身は、この国の人にもあらず、月の都の人なり。それをなむ、昔の契りありけるによりなむ、この世界にはまうで来たりける。
(わたくしは、この国の者ではなく、月の都の者です。月の都の者でありますけれど、昔の約束事のため、この国にやって参りました。)
*
ところ変わって、学校である。エレメンタリー・スクールである。
わたしはカグヤをランドセルの中ではなく肩に乗せて歩いている。
カグヤの姿はふつうの人には、見えないんだそうだ。
だから、学校で話しかけると変人扱いされる。というか、9センチの女の子を連れている時点で、かなりの変人というか――。
2時間に渡る体育の授業を終えた後、「見学をしたいので」といって何処かにひょいといったカグヤと待ち合わせしていたので、体育館の裏へ向かう。
「踏み潰されたら堪りませんから」
とカグヤはいう。
「触れるの?」
「いいえ。でも、精神的に嫌なんです」
なんとなく、分かる気がする。3D映画で巨大なティラノサウルスに踏み潰されるシーンがあったとき、偽物だと分かっていても仰け反った経験があるわたしとしては、少し納得できた。
「あれー? 何やってんのー?」
同級生のサラちゃんだった。
サラちゃんの苗字は田中で、
彼女は自分の名字が嫌いだった。左右対称が――嫌なのだそうだ。わたしにはその感覚が分からないけれど、世の中には色々な人がいるものだ。
「誰かと話していた?」
「ううん、独り言だよ?」
「ふーん。あ、肩に糸くず付いてるよ。取ってあげるね」
「ありがと……あっ」
そこにはカグヤがいると思って静止しようとしたけれど、彼女の腕はカグヤをすり抜けてわたしの肩に触れる。
――ホントに、見えないんだ。こんなに近くに、目の前にいるのに。
「疑っていたんですか?」
カグヤが首を傾げる。
サラちゃんの耳に、カグヤの鼻がついて、でも、サラちゃんに気づいた様子はない。
カグヤが本当にこの世界の人間じゃないんだ――
わたしは納得すると同時に、どこか寂しい気がした。
でも、カグヤのほうが、ずっと寂しいのだろう。
彼女はこの寂しさを、地球まるごと持っている。
*
いみじうからむ心地もせず、悲しくのみある。
(月に帰れるということが、ただただ悲しいのです。)
*
「秘密基地を作ろう」
と、ミリカがいった。
「秘密基地? どうして?」
「カグヤは人が苦手なんだよね?」
「……はい」
「じゃあ、私たちの両親ともあまり会いたくないわけだ」
「……はい」
「じゃあ、秘密基地でしょ」
「ミリカ、それはちょっと分からない」
「えー。どうしてー? いいじゃん秘密基地。楽しそうじゃーん」
「楽しそうってのが本音でしょ? まあいいわ、付き合ってあげる」
「なーんだ、ホントはお姉ちゃんも作りたかったんでしょ」
「ば、馬鹿。そんなこと、ないわよ」
「動揺してる動揺してる」
ミリカが嫌らしい笑みを浮かべ、カグヤに話しかける。「お姉ちゃんがこういう反応をするときは、だいたい嘘をついているときなのよね。覚えておいたらあとあと便利だよ~?」
「心に留めておきましょう」
「カグヤ、覚えなくていいからっ!」
カグヤは微笑むと、どこか遠くを眺め始める。
それがいつもの癖だった。
秘密基地を作り、わたしたちは放課後、そこで話をした。
色々な話だ。
それがとても楽しくて、
木の枝を掴んで汚れた手を石鹸で落とす日が続いた。
そして、カグヤの身体がうっすらと透けてきているのを、見ないふりをした。
月の住民の特徴なのだろうと、
強引に自分を納得させて。
カグヤと三人でカレーを作った。甘くて美味しかった。
カグヤと三人でピクニックに行った。カグヤはお花畑を気に入ったようだった。目をキラキラと輝かせてパタパタと腕を振ってはしゃいでいた。
カグヤと三人で――
そんなある日の夕方、
カグヤは、いなくなった。
秘密基地には手紙が一葉あった。
*
かぐや姫、きと影になりぬ。
(かぐや姫は、突如として光と化した。)
*
カグヤからの手紙を読んだわたしは、靴下に穴が空いても、走った。
カラスの死体はどうして見つからないのか? 一説には巣で死ぬからだというけれど、
カグヤはきっと、自分の居場所で死んでいない。秘密基地にはきっといない。そこで死んでしまうと、わたしたちが一生、あなたのことを忘れられないと、そう思って。
きっと綺麗なお花畑で、彼女は溶けた。
「突然ですが、わたしはいなくなります。
ある日、月の牢獄で。夢うつつに、棺桶の中に入りました。
そうしたら、穢れているといわれる下界にいました。
きっとわたしは追放されたのです。わたしは嘆きました。
そしてあなたたちに会いました。
地球の月光は薄いので、
月光を力の源としているわたしは、
日に日に衰えてゆくばかりでした。
身体が透けてきていたのは、
わたしたちがいなくなるときの特徴です。
あなたたちには酷かもしれませんが、
わたしには、あなた方のことが好きでも何でもありませんでした。
ただ、追手から逃げるために利用したにすぎません。
匿ってくれてありがとう。わたしはいなくなりますが、いなくなることを後悔していません。むしろ、あなた方を含め、このどうでもいい世界にお別れできたことを心から歓迎します。
カグヤより」
「最後に、嫌われ文句を吐くなよぉ……」
カグヤ、それは優しさでしょう?
わたしたちが、悲しまないように。
あなたの存在を唾棄できるように、わざと嫌われようとしているんでしょう?
どうして――。どうして、こうも神様は残酷なの?
月に閉じ込められていなかったら、
そしてわたしたちと会っていなかったら、
カグヤ、あなたは死なずにすんだでしょう。
ごめんなさいとはいえない。あなたと過ごした時間は紛れもなく楽しくて、
わたしたちは、あなたのことが、とても好きだったから、
ごめんなさいということは、
きっとあなたにも、わたしにも、よくないことなのだろうと思うから。
ありがとう、カグヤ。
ホコリひとつ被っていないアルバムに、
その切なさに、
わたしは涙を拭うため、メガネを外す。
カグヤの姿は写っていなかったけれど、彼女を意識しているわたしたちが、カグヤの存在を明らかにしている。まだカグヤは消えていない。そして、これからも。
「お墓を……作ろう」
と、目を赤くしたミリカがいった。
「……お墓?」
「うん、お墓。三日月型の、お墓。まん丸だと地球と変わらないし、カグヤは月から来たから」
「……そうだね。お墓を作ろう」
840円で作った秘密基地。其処にもう、彼女はいない。
秘密基地の中で、カレーを作った。
二人で作ったカレーはとっても甘かった。だから、また泣いた。
*
――帰るさの御幸物憂くおもほえてそむきてとまるかぐや姫ゆゑ
(――あなたのせいで、帰れなくなりました)
*
夏が来て、秋が来る。そして冬も来るのだろう。
それでも、春。出会い、別れの春がまた巡ってきますように――。春が来る限り、わたしは絶対に忘れない。
この季節の、切なくも楽しかった思い出を、ずっと。
(了)
[編集済]
カグヤさん、行かないで! [編集済]
タイトル『田中 in わんだぁらんど』
田中が迷っちゃった!さあどうする!? [編集済] [良い質問]
いや、全く意味が分からない。
なぜカフェオレを飲みながら(問題文)、部屋のドアを開けただけで、
よく分からない世界につながってるんだ…?
そう、まるで、不思議の国のアリスみたいな……
『田中 in わんだぁらんど』
俺は今、謎の空間にいる。
お気に入りのカフェオレを飲みながら自室のドアを開けると、俺の部屋の代わりに謎の空間に繋がっていた。ぼーっとしていた俺はそのままその空間に足を踏み入れてしまい、気が付いたら飲み終わった空の容器を持って突っ立っていた。慌てて、戻ろうと振り返ったが、そこには入ったはずのドアは既になかった。周りを見渡しても無機物らしきものは1つもなく、まるで西洋の庭のような空間だった。
「とりあえずこのまま歩いてみるか…」
「ねぇ、ちょっとアンタ」
「うわぁぁああ!?
ち、痴漢だぁぁお尻触られたぁあぁ!?」
「うるさいわね、ちょっと触ったくらいで大声なんか出しちゃって。
新入りの…田中のくせに」
めっちゃ美脚のオカマに痴漢された(①)。
しかもなんか名前もバカにされたっぽい。
「大声なんか出して失礼ね、アタシはマッドハッターよ。
あとオカマじゃないわ!」
どうみてもおっさんのエスパーオカマに話しかけられた。オカマ…もといマッドハッターの名前を聞き、ようやく俺は、ここがアリスが迷い込んだというあの世界と酷似していることに気がついた。
まぁ本なんて興味もないし、字を読むのは嫌いでしかないので、あやふやな知識でしかないが…。(問題文)
ふと足元を見ると、穴の開いた靴下がもぞもぞと動いていた(④)。
「なんなのぉ~? 新入り君なのぉ~?
あ、僕ねぇ、イモムシだよぉ、よろしくねぇ~」
靴下の中から顔を出した人面虫を見て、俺は吐き気を催した。
いやいや、芋虫に人の顔とか気持ち悪…うおぇっ………
「もぉ~新入り田中君~、結構失礼だねぇ~」
「そうよねぇ!? オカマだなんて、まったく、失礼しちゃうわっ」
「オレっちのことも忘れんなよー、ケケケケッ」
今度は、姿の見えない声の主が俺を嘲った。
「よう、オレっちはチェシャ猫ってやつさ!
おおっと、キミの目の前にいるんだぜ?
キミが見えていないだけだからな?」(⑨)
「あらぁ、あなた、本当に見えていないのねぇ?」
「ほんとだぁ~、どうりで、全然驚かないんだねぇ~」
そうは言われても、全然見えない。
(ってか、ここは結局どこなんだ…?)
「ここはね、絵本の世界だよ。
素直じゃない君のために、ボクが君を、ここへ招待したんだ」
いつの間にそばに来たのか、俺の耳に鼻がくっつくくらいに寄せて、小さな柔らかい声で、そう囁かれた(②)。
驚いて隣を見ると、白いウサミミの生えた、華奢で可愛らしい少女が立っていた。ん? ウサミミ?
「ようこそ、ボクは三日月ウサギさ!
この世界は、君のためにできているんだ。
さぁ、その曇った眼鏡を外して探してごらん!
すぐに君の家が見つかるはずさ!」
ウサミミ少女に言われるがまま、俺は眼鏡を外して(別に曇ってはいないし、そもそもだて眼鏡だが)キョロキョロと周りを見渡した(⑮)。すると、やっぱり不思議なことに、いつの間にできたのかちょっとボロめの小屋がすぐそこに立っていた。
「……まさか、あれか?」
「そう! よく見つけたね!
ボクが君のために作ってあげたのさ!」
「……なんかボロくないか?」
「材料費税込840円だよ」(⑧)
「安いな、オイ」
******************************
まぁせっかく俺のために作ってくれたと言うので、小屋に入ってみた。しかし、入った瞬間に扉にガチャリと鍵がかかり、出られなくなった。慌てて部屋を見回すと、壁にタペストリーらしきものがかかっており、色々なものが床や棚に置いてあった。
しばらく部屋を物色したあと、どうやらこのタペストリーに記された文章の謎を解かないと、この部屋から出られないらしいことが分かった。タペストリーには、先程会ったマッドハッターとイモムシと三日月ウサギがお菓子を食べている絵と、暗号らしき文章が描かれていた。
『待ち合わせ場所はS体育館裏(⑥)
必要な物は、二つの道具と彼女の名前』
ふむ…部屋の中に置いてあるものから、該当する物を選ぶのか。しばらく考え込んだあと、俺は突然ひらめいた。
(…なるほど、そういうことか)
要はこういうことである。
(1)待ち合わせ場所は体育館
⇒meeting place is behind S gymnasium
(2)アナグラムを使って、
『get a huge bin and sinple ice
(大きな瓶と混じりけのないアイスを手にいれろ)』
(3)残った文字を並び替えると、
『miss mmy』
『彼女の名前』というのは、どうもMMYであるらしい。彼女というのが誰かは分からないが、とりあえずこれが答えなのだろう。部屋の中を探したが、ice(氷)らしきものはない。恐らく氷ではなくice cream(アイスクリーム)のことだろう。探してみると、チョコもイチゴも混ざっていない、それこそシンプルなバニラアイスがあった。タペストリーの絵からしても、これで正解なのだろう。答えの指示通り、大きな瓶とバニラアイスの入った容器を、乱雑している部屋から探し出して手に取ると、扉がひとりでに音を立てて開いた。
「よく分かったね!
よし、じゃあ早速だけど、一緒にお料理しようよ!(⑭)
うーん、そうだ、カレーを作ろう!」
なぜそうなるのか。
そもそもなぜ俺は閉じ込められたのか。
それからなぜ扉の前にさっきのウサミミ少女が立っており、料理を勧められているのか。
そしてなぜそれを俺は受け入れてしまっているのか。
よく分からないまま、俺はウサミミ少女に腕を引っ張られ、どこかへ連れていかれた。
******************************
「はい! じゃあそのバニラアイスとこのカレー粉をその瓶に入れて!」
(少なくとも俺の知ってるカレーは、こんな作り方ではないはずなんだけどな…)
どこから出したのか謎だが、とりあえず渡されたカレー粉と、バニラアイスを瓶に突っ込んでみた。すると、瞬く間にほかほかの美味しそうなカレーが出来上がった。
………うん、きっと夢なんだな、これは。
「おお! すごいよ! 一瞬で出来ちゃったね!
じゃあじゃあ、早く味見してみてよ!」
(毒味をしろと?)
まぁ見た目は美味しそうなので食べてみた。………甘い、甘すぎる。もはやこれは笑うしかない、笑いすぎて涙まで出てきた…(⑤)
俺があまりの激甘カレーに笑い転げていると、突然ウサミミ少女が、その容貌に似合わぬような、憂いを帯びた大人びた表情を浮かべ、ふっと微笑み呟いた。
「…やっと、笑ってくれたね…」
ウサミミ少女が呟くと同時に、大きな風が吹いた。
******************************
ザァッという大きな風と共に、少女やカレーは霧のように消え失せ、代わりに目の前に現れたのは、三日月形の墓石だった(⑩)。どこか見覚えのあるその墓石にフラフラと近付き、彫られた名前を見ると、
[みみぃのおはか]
全てを、思い出した。
四年前、飼っていたウサギのミミィが死んだ。これは、そのミミィのために、俺が立てたお墓だ。病気や怪我ではなく、老衰で死んだのだが、幼かった当時の俺には、自分のせいで死んだという自責の念が溢れ返っていた。思えば、あの時から俺は、一人称や口調を変え、だて眼鏡をかけ、好きだった読書も嫌いになり、笑顔も見せなくなった。大きな心の支えを失った現実から目を背け、ミミィの死を記憶から消し去り、別人になれたような気がした。けれど、残酷な神様は、俺が逃げることを許さなかったらしい(⑬)。
涙が溢れた。
「違うよ、ボクは君といられて、とっても嬉しかったんだ」
俺の心を見透かしたように、墓石の奥から、ウサミミ少女、いや、ミミィの声と姿が現れた。
「ボクは、ボクと一緒にいた、素直な君が大好きだったんだ。
だから、ボクの大好きな君に、戻ってきてほしかった。
君に、忘れてほしくなかったんだ。
ボクのこと、そして、ボクと過ごしてくれた、大切な日々を…」
ごめんね、ごめんね、と泣き叫び続けた。天国に行ってもなお、私を心配してくれていたことが、嬉しくて、申し訳なくて、胸がいっぱいだった。
「もう、泣かないで。
さぁ、君は君の世界に帰らないとね。
思い出してくれてありがとう。
また会おう、元気でね」
ミミィに連れられて、ふわふわと夢うつつのまま、墓石の隣にある小さな棺桶に吸い込まれた(⑫)。
そこで私の意識は、一旦途切れた。
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目を覚ますと、自室のベッドにいた。なんだか、優しくて、温かくて、キラキラした、黄金の夢を見ていた気がする(⑦)。そこで私はふと思い立ち、長い間押し入れの奥にしまいっぱなしだった、ウサギのミミィのアルバムを取り出した。懐かしみながら見ていると、アルバムの最後のページから、何かがひらりと舞い落ちた。
「また、次の春に会おうね」
そう書かれた、不思議な柄の栞がそこにあった。何故だか分からないけれど、その栞を見た瞬間、アルバムを抱き締めたままわんわん泣き出してしまった(⑪)。
いつまでも優しくて、ふわふわな、真っ白の、小さなウサギを思い出しながら……
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今、私は、一冊の本を熱心に探している(問題文)。
白いウサギに誘われて、不思議な世界に迷いこむ、あの絵本を。
私はきっと、その絵本と共に、
次の春が来るのを待ち遠しく思うのだろう(③)。
そう、その本の名は………
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彼女はウサギによって救われたんですね・・・。 [編集済]
以上で終わります。長文失礼いたしました。
(後ほどコメントします)
タイトル『月下に輝くニセモノ』 [編集済]
残酷な運命を背負いながらも立ち向かっていく画家・・・さあどうなる!? [編集済] [良い質問]
女には二つ才能があった。
まず、記憶力があった。
一度見たものを写真のように記憶できた。
そして、描写力もあった。
黄金の夢を錯覚させる絵程度ならたやすく表現できた。⑦
この二つの才能で女のキャンパスには頭の中の景色がまるごと再現された。
美術学校に通い、技術をどんどん身に着けた。
しかし、神様は残酷だった。⑬
女に有名芸術家、ポール・カメオーンの贋作疑惑が掛かった。
女は無意識に“ポール・カメオーンの絵”を盗んでしまったのだ。
女は美術の世界から追放された。
女は贋作師になった。
女は廃校の体育館裏を仕事場にした。
質素な棺桶を持ち込み、エンジンのないキャンピングカーの役割を持たせた。
有名芸術家の作品をひたすら模倣し
包帯をサラシのようにして下着に代わりにして、
穴が開いた靴下をハイヒールで隠し④
まっとうなスーツを着て商談をする。
輝きを見抜けぬ人間にはこの格好で十分だった。
いいブランドの付いたニセモノを作っては、闇市場に流す。
こうして金を稼いでは、日々を食いつないでいた。
こうして日々を過ごしながら、
一番寒さにこたえる冬を越し、
童謡を口ずさみながら、春を待つ。③
そうして待っていると、春とともに来たのは友人だった。
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「あなたに仕事を依頼したいならここで待ち合わせできると聞いたわ」⑥
「サングラスって……有名人気取りね」
「まあ……ね」
友人は美術学校寮のルームメイトだ。
友人は女より才能がなかったが神様に優しくされた。
卒業後は絵本作家になり、地道な下積みを重ねた末、
一昨年発表したベストセラー「ごんたのカレー」を生み出した。
一応、友人は客なので茶を出そうとした。
「カフェオレがいいな」
と、客がリクエストしたのでカフェオレを淹れた。
甘い物が好きな友人の好みの飲み物はカフェオレだ。
「今ねバテカル国でボランティアしてるの」
友人が穏やかに切り出した。
「バテカル国?」
「すごく貧乏な国なの」
「どれくらい?」
女は外国史に疎かった。
「ぺっどボトルのカフェオレの一本を千円札で買う」
「一本、百六十円ね」
「そのお釣りで一戸の家が建つの。それくらい貧乏」⑧
「豪華な家ね」
私が適当に皮肉で返したからか、会話が止まった。
「依頼のことを言うわ」ぎこちなさを察した友人が冷静に切り出した。
「私が出版した絵本をゼンブ読んでほしいの。そして私の絵本を作ってほしいの」
「絵本の贋作って?……ゴーストライターになれってこと?」
女の悲観的な見方がそう推理した。
「絵本の“コピー”を作るだけでいい。それで報酬は出すから」
女はそれで引き受けると、友人は足早に去っていった。
突然の出来事に頭が整理できず、夢うつつに棺桶で休んだ。⑫
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まさしく運命は残酷なものです。 [編集済]
そして夏になった。女は蚊に刺されながら
いつも通り贋作作りに勤しんでいた。
屋内のクーラーに涼みながら過ごしたかったが、
贋作作りは人気を仕事場でするしかない。
絵本の贋作作りは楽勝だった。
二週間もかからなかった。
友人は昔と変わっていない。
これが絵本を読んだ感想だった。
くじけることがあっても、頑張れば報われる。
女からすれば、甘々にロマンチックな夢だった。
いつも通り仕事して夜になり、夕食を取ろうとしたところ、
杖を持った女性が息を切らしながら駆け寄ってきた。
友人だった。
「追われてるの……隠れさせて……」
仕事道具を適当に片付けると、
異変を察知した女は棺桶の中に友人を押し込み、
身なりを泥で汚し、棺桶を引っ張って
町を転々とするホームレスを装った。
そこに派手な柄シャツを着た男が三人きた。
ただのナンパ男たちに見えるが、脚が筋肉で美しく張られている。
女にはなんとなくわかる。この男たちは軍人だ。
男たちがあきらめたように場を去ると、
友人を棺桶から引っ張り出した。
友人は明らかに変わっていた。
肌にいたるところに傷があり、
血色がなくやつれている。
友人は襲われたのだ。①
「すぐに何か用意するわ」
冷たい水と用意し、
レトルトカレーを鍋で温め始めた。
「今だからこそ……言わせて」
突然、友人は震えながら口を開いた。
「あなたの陥れたのは、私なの……。
私ね、あなたがいろんな絵を描いてるとき、
ポール・カメオーンの輝きが宿っていると確信したわ。
あなたなら、ポール・カメオーンの輝きを引き継げるんだ。
わたしね、そんなにすごい絵を描ける友達が出来てすごく嬉しかった。
うれしくて、いろんな人に自慢した。
でも、私の自慢のせいで、
世間があなたの絵をポール・カメオーンの“本物”の絵だと
勘違いした。
わたしがそのことに気付いたのは、絵が“偽物”だと世間が分かったときだった。
もう、ゼンブ手遅れだった。
あなたはすぐにいなくなってしまった。
一生会えなくなるんじゃないかって思った。。
前、あったときはとても怖くて言えなかったけどいまなら言えるよ……
ごめんなさい…………わたしのせいで」
「知ってたわよそんなの!
……さあ、カレー温まったから食べなさい! あなたの好きな甘口よ!」
ライスのないカレーとスプーンを友人に突き付けた。
「カレーかぁ。懐かしいなぁ」
友人の手がカレーに目がけて動かない。
まさかと思い、女は友人のサングラスを断りなく外した。⑮
友人の瞳が潰れたように変色していた。⑨
「ごめんね。わたしもう、ごはんが食べられないんだ……」
友人の瞳に光が感じられなかった。
「最後に自分勝手なお願いさせて……」
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女は友人を連れて、バテカル国にある友人のアトリエに向かった。
酷い有様だった。アトリエ中が荒らされていた。
バテカル国の役人がやったのだろう。本棚の一部がごっそりなくなっている。
床には友人の絵本が床中に散らばっている。
友人の代表作の絵本「ごんたのカレー」。
田中ごんたの顔がもみくちゃに潰され、耳と鼻が重なっている。②
アトリエを調べているうちに、
机の裏に隠れるような場所にアルバムを見つけた。美術学校の卒業アルバムだ。
そこには追放された私はそのアルバムには存在しない……はずだった。
文化祭、体育祭、修学旅行、卒業式、
どこのページにも女が“不自然に”そこにいた。
でも、どれもこれも雑でハリボテのような貼り付けだった。……私だったらもっと自然にできるよ。女は初めて友人より自分のロマンが勝っていると思った。⑪
中には自然な写真もあった。
二人で美術館を回っているとき。
二人で料理を作っているとき。⑭
二人で三日月を見ているとき。
友人は私との思い出のすべてを集めていた。。
アルバムの最後に手紙が隠すように挟んであった。
内容は体育館で聞いた友人の最後の頼みと同じだった。
友人の最後の頼み事。
友人の描き掛けの絵本を完成すること。
そして、友人の輝きを私に宿すこと。
描き掛けの絵本はアトリエにはなかった。
空き巣に盗まれたか、役人が没収したか、
どうなったかははわからないが、必ずどこかにあるはずだ。
アトリエを漁っているうちに夜になった。
星空には三日月が浮いていた。女と友人が一緒に見た美しい三日月に似ていた。
女はアトリエの材料を寄せ集め、三日月の像を拵える、そこに友人を休ませた。⑩
そして一仕事終えた後の夕食は甘口カレーだった。
友人が好きだった食べ物は沁みわたるようにおいしかった。⑤
(終)
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政府のやつ・・・・けしからんことをしよって! [編集済]
タイトル『桃田中の黄金の夢』
桃太郎に似てないかって?いえいえこれは間違いなく「桃田中」ですよ。 [編集済] [良い質問]
藤子は今まで本に全く興味が無かった。
興味を持つことすらできなかった。
幼い頃、唯一の肉親の母と生き別れになり、
知らない人にあずかられることに恐怖した藤子はホームレスの道を選んだ。
寒い冬の夜は、決まって母の残してくれたアルバムに涙する。…⑪
靴下を幾枚も重ねて手足を温めるのだけれど今日も又靴下に穴が開き、…④
これで持っている靴下すべてに穴が開いた。
藤子「春が待ち遠しいです…お母さん」…③
何一つ贅沢できない藤子にも神様は残酷で、中々寒い冬を終わらせてくれませんでした。…⑬
余りの寒さに耐えかねた藤子は、自販機の下に手を入れて落ちている小銭を拾い始めた。
低くて暗い隙間に手を伸ばすのに邪魔なので眼鏡をはずしますが…⑮
そうすると今度は小銭が目の前にあるのに見えなくなり、…⑨
ずっとその繰り返しをしている藤子に見かねた通行人の藤男は、
藤男「君、これでちゃんとジュースでも買いなさい」
と言って藤子に千円札を握らせた。
藤子はジュースが買いたくて自販機の下に手を入れていた訳ではないのだけれど、
そう言われたなら遠慮できずお腹もずいぶん減っていたので、
160円の「缶入りカレー甘口」を購入した。
藤男にお釣りを渡そうと思って振り返ったが藤男はいなくなっていた。
藤子はカレーは辛口派だったけれど幼い頃以来の甘いカレーに涙した。…⑤
公園に先ほどの余った840円で家を建てた。ようやく雨風をちゃんとしのげる。…⑧
藤子「今晩はこれで何とかなるわね」
すると突然、美脚の痴漢が藤子を襲ってきた。…①
そこに藤子を心配して付けていた藤男が痴漢を撃退して助けた。
藤男「何とかなるもんか!こんなところに女性が1人でいたら危ないだろう!」
藤男「それに大雪警報出てるんだぞ!避難しろよ!」
藤子「避難しろと言われてもここが私の家ですし…他の建物も出禁て言われていますし…」
藤男「う~~~ん!!じゃあ俺の家に来い!」
ということで藤子は藤男の家に避難した。
お礼のしようがないと藤子が困っていると、藤男になら手伝えと言われて二人で料理を作った。
そして晩御飯と藤男特製カフェオレが出来た。
藤子「このカフェオレおいしい」
藤子はコーヒーカップの水面を見つめて固まった。
藤男「どうした?」
藤子「…私、小さい頃お母さんにいつも寝る前に絵本を読んでもらったんだ。
いつも話の終りになる前に寝ちゃったんだけどね。
ある晩、お母さんが私に苦いカフェオレを飲ませてから絵本を読んでくれたことあったの」
藤男「子供にカフェオレ?あんまりよくない気がするんだけど」
藤子「そうよね?その次の日なのよ。お母さんが家から出ていったの」
藤男「その絵本どんあ絵本だった?」
藤子「えっと…川に洗濯に行ったお婆さんが桃を拾って、桃の中から子供が生まれるの」
で、その子は田中って名前付けられるんだけど」
藤男「え」
藤子「それで田中が酒を飲んで夢うつつに棺桶の中に入ると、 …⑫
墓の中で一攫千金する黄金の夢を見るの」 …⑦
藤男「俺の知ってるのと違う」
藤子「え?違うの?」
藤男「ちなみにタイトルは?」
藤子「桃田中」
藤男「桃…田中…?」
藤子「しばらくたって田中は両親を失って生活も上手くできず貧乏になってしまうの。
するとふと黄金の夢の事を思い出すの。
それであの墓はどこだと探していると田中は海に落ちて乙姫と出会うの。
乙姫は墓石の場所を教えてあげるけれど絶対墓石を開けてはいけないというのよ」
藤男「墓石はそもそも開けちゃだめだけどね。それで?」
藤子「でも田中はお金が欲しくてほしくてしょうがないから墓石を開けてしまうの。
するとそこには黄金があったのだけれど、
黄金の呪いにかかって田中は鼻と耳がくっついてしまうの」…②
藤男「わわっ急にグロいな…それで?」
藤子「それで終わり。」
藤男「え?何のメッセージ性もないじゃん」
藤子「『墓石は開けちゃだめよ』じゃないの?知らないけど」
藤男「なんか違和感があるんだよな」
藤子「ん?」
藤男「その話、あまりに他の物語に寄せ過ぎてるし、
田中が両親を失って生活が出来なくなるのなんてお前とそっくりじゃないか。
あとカフェオレを飲ませたってさ、
お前に寝ないで絵本の内容をちゃんと聞いてほしかったんじゃないか?」
藤子「何のために」
藤男「黄金をお前に手に入れさせるために」
藤子「まじで!?金!!」
突然金で頭がいっぱいになる藤子。
藤男「その本は今はどこ?」
藤子「どうせ捨てられてるんじゃないかしら…あっ
もしかしたらお母さんが働いていた大学に寄贈されてるのかも!」
次の日の夕方、その大学の体育館裏で藤男と待ち合わせ合流し、図書館に訪れた。…⑥
図書のタイトル検索で「桃田中」と打つと見事に一件ヒットした。
その桃田中の絵本の中には『三日月形の墓石』というめずらしい言葉が書かれていた。
調べてみると日本でなおかつこの付近で三日月形の墓石はめずらしくそこに訪れてみた。…⑩
なんとそこには藤子の母の名前があった。
藤子「冗談じゃないわ。お金があったとしても開けられる訳ないわよ…お母さん」
藤男「…あ」
二人の様子を見ていた墓地管理者が二人に近づいてきた。
管理者「もしかして、藤子さんですか?」
藤子「はい…そうですけど」
そしてしばらく話をした後、母の残した遺書と多額の遺産を藤子は受け取ることになった。
(終わり)
[編集済]
絵本からも大金持ちになるヒントがあるのだ! [編集済]
最優秀要素組み込み賞は・・・・・・・
KUZUHARAさんです!
5票という圧倒的多数の票を得ました!おめでとうございます!
KUZUHARAさん、おめでとうございます。
次に最難関要素賞は・・・・・・
1番の「美脚の痴漢がいます」です!
投票がすべて2票でばらけていたのでこちらは私の判断で決定いたしました。
そして最優秀作品賞は・・・・・
KUZUHARAさんの「常に月見し竹の姫」です!おめでとうございます。
尚KUZUHARAさんは次の「正解を創りだすウミガメ」を出題していただきます。よろしくお願いします。
また今回の投票結果につきましてはhttp://enq-maker.com/xfw8h0で確認できます。
最後に今回の「正解を創りだすウミガメ」を楽しんでいただき、誠にありがとうございました!
1:美脚の痴漢がいます。
2:田中の耳と鼻がくっつきます。
3:春が待ち遠しいです。
4:靴下に穴があきます。
5:甘いカレーに涙します。
6:待ち合わせは体育館裏です。
7:黄金の夢は重要です。
8:840円で家が建ちます。
9:目の前にあるのに見えてません。
10:三日月形の墓石があります。
11:アルバムに涙します。
12:夢うつつに棺桶の中に入ります。
13:神様は残酷です。
14:2人で料理を作ります。
15:眼鏡を外します。
「Goodスープ認定」はスープ全体の質の評価として良いものだった場合に押してください。(進行は評価に含まれません)
ブックマークシステムと基本構造は同じですが、ブックマークは「基準が自由」なのに対しGoodは「基準が決められている」と認識してください。