恋愛小説から戦記物まで、児童書から盆栽ミステリーまで幅広くこなす彼に、編集者は言った。
「もう、世の中のすべてのジャンルの小説を書きつくしてしまったのでは?」
すると、カメオはこう答えた。
「いいや、実はまだ、書いたことのない小説が、二種類あるんだ」
「そんなものですか?」
「そうなんだよ」
「ふーん、そんなもんですか。それはそうと、明日締め切りですから、よろしくお願いしますよ」
編集者は驚いたが、原稿の催促も忘れない。
「ああ、任せておきたまえ」
鷹揚に返事をすると、小説家は原稿の執筆に戻った。
そして、その日の晩。
カメオは、自身がいまだ書いたことのなかった二種類の小説を抱いて死んでいた。
なぜ、彼はその二種類の小説を抱いて死ぬことができたのだろう?
なお、彼の筆は別に早くなく、一作品を一日で書き上げることは不可能である、ということを申し添えておこう。
【ウミガメ】

絶筆、ですか?

YES! まだ書いたことのない2種類の小説の内一つは、遺作(絶筆)です! [正解][良い質問]

遺作、ですか?

YES. 1より まだ書いたことのない2種類の小説の内一つは、遺作(絶筆)です!

カメオが抱いていた二種類の小説は、カメオが書いたものですか?

YES. 間違いなくカメオ自身が書いたものです。 [良い質問]

盗作関係しますか?

NO. なるほど、そんなのもありましたね。

二種類のジャンルの特定は重要ですか?

YES. その2種類でなければ成立しないでしょう。

自伝は重要ですか?

NO. 自伝ではありません。

生きている人間には書けない小説だったので、彼は死んで初めて、その小説を抱くことができましたか?

1よりYES. ただし、2種類目の小説とは関係ありません。

21歳と81歳という年齢は重要ですか?

NO. 沢山のジャンルを書き続けてきたことを表すためのフレーバーです。

未完の小説は関係ありますか?

NO. 完成しています。

カメオは自殺しましたか?

関係ありません。自殺であったとしても成立するでしょう。

抱いていた小説は1冊でしたか?

YES. その一つの小説は、彼が今までに書いたことのない2種類の小説に両方とも該当するものでした。 [正解][良い質問]

題名だけの小説ですか?

NO. 題名だけって小説と呼べるのでしょうか……

11 未完であり絶筆ですか?

NO. 完成していますが、その路線でOKです。

「カメオの一生を書いた自伝」ですか?

NO. 自伝系ではありません。

最後に自分の過ちを書き記した暴露本ですか?

NOw 私は最後にそんなの書きたくないです。

カメオの生涯を余すところなく記した日記文学ですか?

NO. 自伝系ではありません。

ゴーストライターは重要ですか?

NO. カメオは、自分で書いています。

カメオ作品集ですか?

NO. その手の作品の場合、死後にしか出ないので、死んだ直後に抱くのは不可能でしょう。

カメオが死ななかったとしても、その二種類の小説を書いた後は、絶筆しますか?

YESNO. 片方は遺作なので絶筆する必要がありますが、もう片方は別に絶筆する必要はありません! [良い質問]

フィクションでしたか?

関係ありませんが、解説ではフィクションです。

自身の全作品集ですか?

NO. その手の作品の場合、死後にしか出ないので、死んだ直後に抱くのは不可能でしょう。

遺言は関係しますか?

NO. 遺言は関係しません。

編集者が催促した原稿の内容は関係ありますか?

YES. 編集者が催促した原稿こそが、カメオが抱いて死んでいた小説になったとお考えください。

そのジャンルは遺作のように、ひとりに対して必ず一作品しか書けないものですか?

YESNO. 大抵の場合一作品ですが、人によっては複数作品書ける場合もある気がします。 [良い質問]

とっても短い小説でしたか?

NO. 長さは関係ありません。

カメオの全作品の自己評価本ですか?

NO. あくまで、書いたことがない「小説」です。

23より、編集者はその小説の内容を知っていましたか?

関係ありません。が、編集者が見てぎょっとするような(遺書とか犯罪予告とか)ものではありません。
「遺作」と「代表作」だ。
81歳のカメオは、自身の最後の原稿を書き上げ、感慨に耽っている内に、持病の発作で死んだ、と小説誌に追悼記事と共に発表された。
彼の遺作となった作品は、たちまち話題となり、多くの人の手に取られた。
彼の作品独特のふわりと包み込むような優しさはそのままに、鋭い感性は更に鋭さを増して人々の心の奥底まで照らし、手に汗握る冒険活劇も、頭を悩ませる謎も、心臓を高鳴らせるラブロマンスも、青春の悩みも煌めきもある、そんな作品だった。
数十年後
「はい、じゃあ、海原カメオの代表作が分かる人ー」
「はい! 『イシスの祈り』です!」
「正解です。海原カメオは、この作品を書き上げたすぐ後に亡くなったと言われているわ。最期まで、彼は小説を書き続けていたんですね」
先生の言葉を聞きながら、海原カメコは机の上の真っ白い原稿用紙に鉛筆を走らせる。自分とよく似た名前の小説家の伝説は、少女の書くことへの情熱を自然と高めていた。
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