札束を撒き散らす女

男は過去に、ある意味で殺人を犯したことがあった。

被害者は、過去に男の会社に勤め脱サラしたレストランのオーナー、カメオ。

男はカメオに多額の利子をつけ金を貸していたのだが、カメオがなかなか返済しないため取り立てに行ったところ、カメオは自宅で自殺していた。

罪悪感はなかった。頭にあったのは『金が帰ってこないことへの怒り』だった。

警察は突然の自殺として事件を処理した。

その後男はカメオの連体保証人の元へ行き、借金の返済をしてもらったのだという。





しかしカメオの娘である女は、父を自殺に追い込んだ犯人を憎んでいた。

カメオの残した遺書には『借金を苦に自殺した』と書かれていたのだ。

女は警察に遺書のことを話さなかった。

遺書に書かれていた金貸しが刑務所に入ることで『助かる』からだ。

女は犯人に復讐しようと企んでいた



女は独自に犯人を探していた。

ーーーーあの父が自殺した日。あの時「一人の男が父の部屋にいた」

アイツが父を死に追いやったに違いない。

父を自殺に追いやったアイツ、その顔はよく憶えている。ーーーー



ある日、死んだカメオから継ぎ女が経営していたレストランに客として来た男。

ーーーアイツはあの日父の部屋にいたやつだ。アイツが父を死に追いやった。ーーー

女は男の名前と素性を調べ当て、ついに『犯人=男』ということを特定したのだった。



『父が昔していた借金を返す』という名目で男の会社に行き、社長室で男を殺害すると、

「…借金は返済したわよ」

と、札束を男の死体に撒き散らし、女はその場を後にした。