クライ　バイ　シザー

サ

キは失恋した。

想い人である従兄は、今日島を出て行く。



上京することを知ったとき、彼に思いを告げた。



彼はサキに謝った。



一緒に連れて行くのは、彼の同級生である女性だから、と。



わかっていたことだった。

何年も想いあっている姿を、見続けてきたから。



見続けてきただけだったから、サキはダメだとわかっていて思いを告げた。



気持ちを吹っ切るため、彼が乗る船が見える岬にたった。



美容師を目指していた彼が、修行時代に使い込んで使えなくなった時に譲り受けたボロボロの鋏…髪を切る鋏を手にしていた。



「…髪が綺麗だって言ってくれたけど、結局貴方は私を妹くらいにしか思ってなかったよね。」



遠くから汽笛が聞こえた。



長い髪をその鋏で切った。



切れ味も落ちていて、綺麗に切れずに何本かが痛みを伴ってちぎれた。



髪とその鋏を投げ捨てた。



「…バイバイ、タク兄ちゃん。」



涙があふれ出た。



涙が止まらなかった。