いそぎんちゃく

私

は近衛兵。

私が仕える王はクーデタに遭い、わずかな近衛と共に王都からの脱出の最中だった。



王「私は、間違っていたのか？」

近衛長「いえ、貴方は国民に、本当に慕われています。家老のジュジンに、謀られたのです。」

王「いや、そもそもがあの男を信じてしまったことが、私の間違いだったのだろう。」

近衛「隊長！追っ手が迫っています！」

王「ここまでか･･･。」



不意に、近衛長が王に向き合い、言われた。



近衛長「王、私抜きでも生き延びてくださいますか？」

王「な、何を言うんだ？お前を犠牲になど出来るわけない！」

近衛長「いや、意味はないんです、気になさらないで…ください！」



ゴッ！



と鈍い音と同時に王の体がぐらりと揺れた。



「ぐっ！？…」

「申し訳ない、嘘です。」

「王！？近衛長、一体何故！？」

「近衛、王を連れて行け！」

「えっ！？」

「王を死なすわけにはいかない！私が代わりになる！」



気を失った王の冠とマントをすばやく自らまとい、近衛長は笑われた。



「双子の弟である私なら、追っ手をごまかせる。さあ行け、わが愛弟子よ！」



私は、王を急ぎ担ぎ上げ、涙を堪えながら走った。



走った。



走った走った走った走った走った走った。



どれだけ走っただろう。



…追っ手が来る様子はない。



私と王は助かったのだろう。



王「弟よ、済まない…。」

近衛「王！」

王「アイシャ、お前には辛い思いをさせた…。」



アイシャ、私の名だ。



王「あいつの仇、必ずとるぞ。」

アイシャ「はい！必ず！」



－－－－－－－－－－

間も無く、王の逆襲により家臣による謀反は収束することになるが、それは別の話。



＊部下が見た、隊長から王への気遣いのシーン。なお｢笑われた｣は｢笑った｣の尊敬語です。