欲しかったもの手に入れたもの 全て放り投げてしまえ

ウサコとカメコは、二卵性双生児で似ていない。



カメコは「双子だから仲が良いの」と言い、

髪型も服も合わせて、いつも一緒に行動したがる。

そうやって、少し容姿の劣るウサコを引き立て役にしていた。



カメコは派手にお金を使うので、足りない物はウサコの物を借りる。

ウサコが怒っても「私の方が似合う」と言って返してはくれない。

わがままなカメコに振り回され、ウサコはうんざりしていた。





ある日、二人は事故で全身に大怪我を負った。

顔も損傷していたので形成手術を施されたが、

二人の顔は入れ替わっていた。



「なにこれ…どうなってるの？ねぇカメコ！どうしよう！？」



鏡で自分の顔を見たウサコは、混乱してカメコに詰め寄った。

だが、彼女は記憶喪失になって何もわからない状態だった。



困り果てたウサコの瞳に、壊れた腕時計が映った。

事故当日に、カメコがウサコから奪ったものだ。

この腕時計のせいで、間違われてしまったのだろう。



腕時計を見せてみても、カメコの記憶は戻らなかった。

「わからない」と首を振るだけ。

その表情は、気の弱いウサコの顔そのものだった。





その時、ウサコの脳裏にある考えがよぎった。

今まで、カメコと比べられて惨めな思いをしてきた。

このままカメコとして生きた方が、幸せなのかもしれない。



ウサコは、カメコをじっと見つめた。

おどおどと、視線を彷徨わさるカメコ。

幸い、今のカメコは別人の様に大人しい。





ずっとカメコに虐げられてきたんだもの。

これからは、私が同じ事をしたっていいわよね？



カメコの記憶が戻る日が来るのか、来ないのか。

それは、わからないけれど…



その日までずっと、私の物は全部カメコに貸してあげる。

遠慮しないでいいのよ。

今日から、あなたがウサコなんだから。





ウサコが微笑みかけると、カメコは戸惑った様に笑みを返した。









【要約】

事故後の手術で顔が入れ替わった二人。カメコは記憶も失っていた。

ウサコはこれ幸いと、自分より綺麗なカメコとして生きることにした。