ウミガメのスープ

旅愁のココロ

作者: ノックスR

彼女は生まれてから、一度もこの村から出た事はなかった。

幼馴染の俺らが隣町へ遊びに行こうぜと誘っても、彼女は断固として断っていた。

村の子供は、大人たちに勝手に村の外で遊ぶ事は危ないからと禁止されていたのだ。


お硬い奴だとは思ったが、この村で遊ぶ時はいつも一緒に仲良く遊んで居て、稀にちょっと危ないところを助けてくれたりした事もあったので、女ながら本当に頼りになるやつで、誰からも好かれていた。


だがある日、彼女は村を出る事になった。

そして彼女が姿を消した事を知って、俺は泣きながら村を後にした。


状況を説明してください。


今回の出題にあたり、tsunaさんにSPをしていただきました。
この場をかりて、深く御礼申し上げます。

出題者が、解き手の進み具合に応じて上から順に出すためのヒントです。

ヒントはまだありません。

過去の実際のやりとりです。質問されたら参考に答えてください。

いいえ

村を出る事になった理由は犯罪を犯したからですか?

No!

はい

自分の意思で村を出ましたか

Yes!! ただし…

はい

非現実要素はありますか?

Yes!!!

はい

彼女は亡くなりましたか?

Yesかな? ただし…!

はい

彼女は消えた時点で死んでいますか?

Yesかな? ただし…!

いいえ

村の外で遊ぶと本当に危険な事がありますか?

Noかな? 子供だけで遠出をするな、という意味でした。ただし…!

はい

彼女は村でしか生きられませんか?

Yes!!! Gj!!

はい

登場人物に人間はいますか?

Yes!

いいえ

俺は彼女の村と違う処に住んでいましたか?

No!

いいえ

彼女は妖怪ですか?

No!! ただしそれでもOK! 彼女はこの村の土地神でした。 Gj!!

いいえ

彼女には村を出て行きたい所がありましたか?

No!!

いいえ

村は開発が進んでいましたか?

No!! それどころか…!

いいえ

俺が誘ったので彼女は村を出てしまいましたか?

No!!

はい

彼女が消えた後村は滅びましたか?

Yes!!!

いいえ

彼女は俺を助けるために村の外に出ましたか?

Noかな? 助ける、とまではいかないかも。

いいえ

彼女は、大人たちに村を追い出されましたか?

No!! 自らの意思です。ただし…!

いいえ

彼女が村を出た時、俺はもう大人になっていますか?

No!! 設定は高校生くらいかな?

いいえ

俺と彼女の他に重要な登場人物はいますか?

Noかな? 俺の母も登場しますが、追求するほどではないです。

いいえ

彼女が村を出ないと困る人はいましたか?

Noかな? ただし…

はい

俺が村を後にしたのはもともと引越予定があったからですか?

Yesかな? いつかは引越したでしょう。ただし…

いいえ

俺は彼女が土地神と知っていましたか?

No!!! 知りませんでした! Gj!!

いいえ

10より、彼女は神社に相当するところに住んでいましたか?

No!! 彼女が作った家にすんでました。

いいえ

彼女は村の振興の為に自分がいない方がいいと思いましたか?

No!!

はい

俺は彼女のことが好きでしたか?

Yes!!!

はい

もともとダム建設とか区画整理の予定がありましたか

Yes!!! Gj!!

いいえ

土地神とは座敷童みたいなイメージでおけ?

Noかな? 普通に人間として振舞ってました。しかし…

はい

核心俺の将来を心配した彼女は、自分がいなくなる事で俺の後押しをしようと思いましたか?

Yes!!! 28と合わせて正解とします!

はい

俺は彼女のいる村から出て行こうとしませんでしたか?

Yes!!!

答え

「本当に……去ってしまうんか?」

この村唯一の駅のプラットホーム。
隣の大きな街へいく数少ない交通手段だというのに周りには俺たち二人しかいなかった。
俺と、彼女ーーー神崎このはだけ。

「ーーーうん」


頭に綺麗な桜色のヘアピンを付けているこのはは俺の問いに、静かに頷きながら答えた。

俺とこのはが暮らしている村、祭り村は、人口が三桁強という、本当に小さい村だった。

しかもそのほとんどは老人ばかりで、村の若い人は数えるほどしかいなかった。

そして俺とこのはは、そのこの村では絶滅危惧種といっても過言ではない、若者の一人だった。

「でも、俺もお前も、今まで村から出ようとしなかったべや! っていうか、俺が出よう、って誘っても断ってたんに……なんで諦めるんさ!」

俺たちはこの村で生まれた。
このはや、同じ年代の奴らは皆この村出身なので家族の様な付き合いだ。

俺たち子供はいつも何かに付けて都会に行きてーなーと、都会にずっと憧れをいだいており、何回か親に隠れて密かに隣町へ遊びに行ったりして、その後で親にこっぴどく叱られるのだ。
(ちなみに、小さな分校が村内にあり、俺らは皆そこに通っている)


だが、彼女。
このはだけは断固としてこの村を離れるのを嫌がり、俺らの誘いは毎回断っていた。

「優等生はちげーなー」

それが俺たちの感想だった。


だが、そんな彼女が今回。
始めて村を離れるのだ。


「だって、さ。しょうがないじゃん。君こそ、ずっと村を離れたがっていたのに……なんでまだ残ろうとするのさ」

「っ」

しょうがないーーー彼女のその言葉に胸が締め付けられる思いがした。

この村は、今年。廃村が決定した。

廃村して、来年から工事が始まって、そして近い内に、ダムの底に沈められる。


「そんなの、納得いかねーべや!! 突然、この村をダムにするから出てけ、って言われても!!  お前、納得出来んのかや!?」


「……出来る出来ない、じゃなくてしなきゃいけないんだよ」

「分かんねー……」

そこで言葉が詰まって、俺はうつむいた。
すでにこれまでに、多くの村民。俺の友達が多額の補償金をもらって村から出て行った。

一方俺はーーー親にも噛み付いて、この村に出ていく事に断固反対していた。

これまでずっと村から出たかったはずなのに……なぜか、いざ村から出るとなると、心が一方的に拒否するのだ。


それは、この村に愛着があったからなのか、それともこの村を捨てて離れたら、一生このはと会えなくなる、そんな気がしてしまうからかーーー。

それが、どっちなのかずっと分からなかった。

ーーーでも、今日やっと分かった。

「俺ーーーこの村を離れたら、一生お前と会えなくなる気がすんだわ……」

俺がうつむきながらそう言うと、彼女は沈黙した後に、クスッと微笑んだ。

「バカ……んなことあるかいな。ーーー必ず、また会えるわ。だから、今度はこの村じゃない、違うところで会お」


彼女がそう言うと、向こう側から電車がゆっくりとこちらに近づいてきた。

「もうすぐ、お別れだね」

彼女がチラと電車を見て、言った。


ちょっと待ってくれよ。
俺は、まだ言いたいことがいっぱいあるのに。

「俺さ、この村で、やり残したことがいっぱいある様な気がしてならねーんだよ……」

俺が言葉をつなぐために、思わずそう言うと、彼女は一瞬きょとん、としたが、その後にクスッと笑った。


「そんなの。私だっていっぱいあるよ。数えきれないくらい……そんなの、いくら言っても切りないわ。たとえ100年、200年生きてても、そういう思いは出てくるって」

「でも……」

「ーーーあ、でも今ひとつ。……やり残してた事やってもいい?」

「えーーー」

その瞬間。

俺の前に彼女の顔が近付いて、唇が重なったーーー。

俺が状況が理解出来ず、ただ呆然とその状況を飲み込んでいると、彼女が俺をとん、と突き飛ばして、電車に乗り込んだ。


「バーカ」

彼女は笑って、ーーー電車の扉が閉まった。


電車が走り出して。
俺はただ呆然と、今あった出来事を思い出していた。

キス、された後ーーー。

「私の家に行ってみて」


彼女はぼそりと、確かにそうつぶやいた。


どういう意味か分からないーーーでも、俺は一刻も早く彼女の家にいかなければならない気がした。


幸い、彼女の家はすぐとなりだ。

俺は走って彼女の家にまで行くと、そこで信じられない光景を見た。


家が、消えていくーーー。

家の形をしたものが、だんだんと砂の様にチリになって消えて行っているのだ。

「なんだよ……コレ」

「信じられない光景でしょ?」

俺がそう呟くと、ふと後ろから人の声がした。

「母さん……!」

後ろを振り返ると、メガネをかけた自分が良く知っている人が立っていた。


「母さん……これがどういう事か、知ってるの?」

俺がそう言うと、彼女は小さくため息をついた。

「神崎このはは、この村の土地神だった」

「ーーーは?」

「ま、この事が知らされるのは成人している、この村で生まれた人だけだけどね」

彼女の発言に、頭が追いついていかない。


「ちょ、ちょっと待ってくれよ! このはが……神様!? だって、小さい頃からずっと一緒に……」

「本当に、そうか?  落ち着いてよく考えろ。彼女の去年の学校の成績は?  彼女の好きな食べ物は?  彼女の両親の顔は思い浮かべられるか?」


「えっ……えっ……?」

「そして、今目の前で消えているこの光景こそが、その真実だ。彼女はこの村の土地神。この村の人の認識を少し書き換えるぐらい、わけ無い。彼女は未成年の子供にはこうして認識を書き換え、ある時は年上のお姉さん、ある時は年下の子、そしてある時は同じ友達として接しながら、陰で子供達を見守っていたんだ。この事は、この村の成人の儀式の時に教えられる」


「わけわかんねーよ! つまり、どういう事だよ!?」

「だから!! 彼女は土地神だ。そして、土地神はその地にいるから土地神足りえる。そして、彼女は土地神としては非常に弱い。つまり……この村から出ると……どうなるか分かるな?」


彼女の言葉に。
俺は今のこの家の状況を照らし合わせて、一つの仮説。いや、確信が生まれた。


「そ、そんな! なんであいつはこんな事を!?」


「それは、お前をこの村から出ていかせるためだ!!  彼女は言っていた。自分は黙っていても、そのうち消滅する。でも、この村に居たら『その時』までは消滅出来ない。そして、お前は私がいる内は村に出ようとしない、ってな。この事は口止めされていたんだが……お前がこの家の状況を見たら、どうせすぐに予想がつく事だ」

「そんな……そんな……」

俺は……俺は、彼女といたかっただけなのに……

そう言って涙を流し、うなだれる俺に、母さんは静かに言った。


「ーーーもう、満足か?」



~~~

電車内。

彼女、このはは座席に座りながら、移りゆく景色を見つめていた。

もうすぐ、村を出るーーー。

彼は、隣町は綺麗な街だとか言っていた。

どれ、見てやろうではないか。

不意に、そこから彼との出来事が次々と思い出されていく。

「……不思議な、子だったなあ。お母さんもお母さんなら、子も子だ」

思わず、涙が溢れて来る。

いいんだ。どうせすぐに消えてしまう身だったのだ。

それが少し早まったくらいなんだ。
これで、あの子が村を出て、そしてその先で幸せな生活が掴めたら、それでいいじゃないか。

あのまま残ってたら……より別れが辛くなっていた。


私は涙を拭いて、再び窓の外を見た。

「うん……ハア。消えたく、ないなあ」


すると窓の外から、綺麗な隣町の風景がうつりこんできた。


「……あれ?」

隣の席に座っていた、隣町へ帰る途中だった男は首をかしげた。

「なんで俺、窓側を開けて座ってるんだ……?」

男が窓側へ寄ろうとした時。

「ん?  なんだこりゃ? 」

座席の上に何かが落ちているのに気づいた。

拾ってみると、それは、綺麗な桜色のヘアピンだったーーー。
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