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ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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テキーラさんのプロフィール

取得した称号:登録日:14年03月27日19時34分19秒
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ある街に、むかし街の代表を務めたこともある女性がいました。
女性は老いてはいましたが、変わらない聡明さと優しさで街の人たちに好かれていました。

ある日、体調の不良を感じた彼女は医者のもとへ行き、自身が病を患っていることを知ります。
余命は一年ほど。
街の人たちは彼女を心配し、大きく体調を崩さないように気を使います。
彼らの好意によって、彼女はしあわせな大往生を迎えることができそうでした。


しかし、しばらく日が経ったある日。
彼女の家の南側にある空き地に、建設会社のトラックがやって来ました。
その会社は、大きなおおきなビルをそこに建てるというのです。
それを聞いた街の人たちは愕然として焦りました。
というのも、彼女は毎年夏に庭に咲く菊をなにより楽しみにしていたからです。
彼女の命は、今年の菊が散るまでもつはずでした。

ビルが建ってしまっては菊に日の光が当たらない。
それでは菊は咲かない。
彼女はなにも言わないだろう。
けれどとてもさみしい気持ちで逝くに違いない。


街の人たちは相談しました。
ビルの建設会社とも交渉しました。
何度も何度も、交渉しました。




そしてビルが完成する日がやってきました。
ブルーシートが取り除かれても、コンクリートのビルがあるばかりでしょう。
女性は庭の菊たちを見ながら、知らず知らず溜息をつきます。
ああ、あと一日でいいから陽が当たればこの子たちは咲くのに。
そのとき、街の人たちが彼女のもとへやってきました。

「見て下さい、庭に陽が当たっていますよ!」

彼女は目を見開きました。
庭には、ビルが建つ前と同じように光が差していました。
街の人たちは会社と交渉を重ねた結果、ビルの素材を全て光ファイバーにしてもらうことを了承してもらいました。
話題性には事欠きませんから、観光地として材料費の差分も回収できるでしょう。
数日しないうちに、菊たちはみんな、うつくしい花を咲かせました。




女性は寿命より一年ほど長く生き、翌年の菊もしっかりと見ました。
臨終の時、彼女はやさしい笑顔を浮かべていたそうです。

(元ネタ:講談社青い鳥文庫出版はやみねかおる作「怪盗道化師」収録、第5話影をぬすむ男より)

「こころばかりの」回答になります。ごめいわくをおかけしました。