【ラテクエ３５リサイクル】あ、そうですか・・・

い

つものスーツをビシッと決めた女。

ローカル局のワイドショーのレポーターだ。

この日は、翌日開店する「居酒屋　らて親」の食レポだ。



この女のレポートには定評があり、聞いてるだけで食べたくなるとうわさになっている。



店主は誠心誠意、全身全霊、一皿入魂の思いでオススメ料理を作り、卓に出した。



本番

スタジオ『本日の中継は、明日オープンする話題の居酒屋、らて親さんです！レポーターのレポさん！おねがいしまーす！』

レポ「早速ですがみてください！このおいしそうな料理！もう、香りだけでもご飯いけますよ！紹介の通り、今日はオープンを明日に控えた居酒屋　らて親さんに特別に入らせていただきました。こちらが店主さんです。」

店主「よろしくお願いします。」

レポ「早速ですが、この料理の紹介をお願いします！」

店主「はい。こちらから、＜本日の海鮮唐揚げ＞＜すもぉくちぃずのしぃざぁさらだ＞＜メルティ鱚＞＜肉々しい骨付き肉がおいしく焼けました＞です。」

レポ「一番のオススメはどれでしょう？」

店主「それはこの＜メルティ鱚＞ですね。」

レポ「わかりました！それでは皆様にお味をお伝えいたしましょう！見てください、このとろとろのチーズのソース！ではいただきます！」



ザクリ！サクサク、じゅわ～…。



レポ「うわぁ～！おいしい！サクサクに揚がった鱚のフライに、コショウが利いたチーズのソースが絡んで…、あら、鱚に巻いてあるのはシソですね？このさわやかな香りがまた！これはいくらでも食べられちゃいますね！」

店主「ありがとうございます！」



レポはチラッとカメラマンの横にいるＡＤを見た。残り１５秒。



レポ「ほかのお料理は後ほどいただきますね。一品だけでも最高でしたので、全品制覇しにプライベートでも来たいです！それではお店の紹介です！」



中継が終わりに近づいていく。



店主（あれ、一口だけ？後で食べるのか。後っていつだ？持って帰るのか？）



ぼんやりと考えているうちに中継が終了した。



レポ「お疲れ様でした！」

店主「ありがとうございました！」

ＡＤ「こちらこそお忙しいとこありがとうございました！ちゃっちゃと撤収しますんで、もう少しおまちくださいね～」

店主「ええ。あ、料理…」

レポ「先に車戻ってるわね。このかばん持って行っていいの？」

ＡＤ「すんませ～ん！お願いしゃす！」

店主「りょう…」

ＡＤ「カメラさん、ライトバラしますよ？」

カメラ「頼む。」

店主「あの…」

ＡＤ「しゅうりょー！ありざした！」ふかぶか

カメラ「ありがとうございました」ぺこり

店主「あ、はい」



料理はバイトたちに食べさせた。



その後、レポーターも二度と来ることはなかった。



店主（客が入ったから感謝はしているが、なんか腑に落ちない…。）



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ＦＡ条件：レポーターが食レポで一口だけ食べて撮影終了。来たいと言っていたが、以降プライベートでも来ない。理不尽である。



＊昔飲食店勤めだった頃の実体験です。