【ラテクエ35自前リサイクル】梨を齧る

今年の梨は皆出来が悪かった。

このままではいつもの2分の1の利益も出せない。

どうすれば・・・。



俺は、一つ作戦を思いついた。



シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、

シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、

シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、

シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、

シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、

シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、

シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、

シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、シャク、



梨を一口かじっては捨て、かじっては捨てをくりかえした。

3時間は過ぎただろうか。

たった一つを残して、全ての梨をかじった。

そして俺は、すぐにテレビ局へと電話をかけた。











「亀夫さん、梨園が動物たちによって食い荒らされてしまったとの話ですが・・・」

「はい。ご覧のとおりです。ほとんどの梨が食べられてしまいました。」

「ほとんど、といいますと、食べられていない梨もあったのですか？」

「ええ。・・・、この、梨だけは、食べられていませんでした。

　今回の被害で、今年の利益は0ですよ。全く、困ったものです。

　・・・ですからひとつ、テレビの前の皆さんに、提案をしたいんです。」

「提案、ですか？それは一体、どのような？」

「ええ。この1つだけ残った梨を、「絶対に落ちない奇跡の梨」として、オークションに出したいと思います。

　私には、もうコレしか稼ぐ道がありませんので・・・」

そして、「絶対に落ちない奇跡の梨」は、受験を控えた子供の母に買い取られた。その額、150万円。

十分な利益を得ることができて、俺は満足だった。



・・・が、その後の調査によって全ての梨が同じようにかじられていること、

また全ての梨についた歯形が男の歯形と一致していることが証明され、

男は詐欺容疑で逮捕されたのだが、それはまた別のお話。