うまくいったのに

登場人物

草加若太（ソウカワカタ、通称ワカッタくん）…検事。口癖は「そうか、わかった！」ではない。むしろ淡々と揚げ足を取る嫌なやつ。

南都雅華（ナントマサカ）…被告の弁護人、ワカッタくんを一方的にライバル視している。「なんと、まさか！」とよく叫ぶ。やり手だがなぜかワカッタくんには勝てたためしがない。

裁判長（サイバンチョ）…某ゲームの裁判長さんにそっくりな別人。だが頼りなかったり抜けていたり似てる。え？パクリ？いいえ、オマージュですｗ

綿堂こまる（メンドウコマル）…女刑事。基本的に面倒なことは困るタイプ。

羽咋尼子（ハクイアマコ）…看護師。被害者の担当だった。

薮居独人（ヤブイドクト）…被告人で、心汰の主治医。

羅亭心汰（ラテイシンタ）…被害者。怪我が感知した後すぐに亡くなっている。

亀男、海子…被害者・心汰の両親、原告。主治医であるヤブイが見殺しにしたということで告訴した。

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某裁判所、第一法廷

ワカッタくん「異議有だ！薮居さん、あなたは被害者の容態について何といった？」

ヤブイ「そ、それは心汰くんの腎不全のことなんて知らない、と…。あっ！？」

マサカ「な、なんと、まさかっ！そんな！？」

サイバンチョ「いったい何事ですか！？わかるように説明してください！」

ワカッタくん「（本当に大丈夫か？この裁判長で…。）…少し思い出してくれ。この法廷での心汰くんの様態についての皆の発言を。」



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＜回想＞

マサカ『被告人は殺人としては無罪を主張します。被告人は被害者である羅亭心汰くんの怪我の治療はしたが、その深刻な病状自体は把握していなかった。つまり故意ではなかった！

しかしながら、輸血を必要とする手術の際に通常行うべき検査を怠り、彼の命の危険に気付けなかったという事実はある。

よって、業務上過失の適用を求めるものとします。』



こまる『面倒だなぁ。…司法解剖の結果、被害者の容態は相当重篤で、いつ亡くなってもおかしくないような状態でした。つまりこれは病死であって…』



ハクイ『心汰くんの病気のことは伏せるように言われていました。病院の経営の方針で、長期入院患者をおきたくないと…。私も同罪です。彼を見殺しにしたのですから…。』



＜回想終了＞

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ワカッタくん「理解いただけたか？つまりだ、この法廷では一度も彼の病名を明言してはいなかった。にもかかわらずヤブイさん、あなたは心汰くんの病名を腎不全だと言い当てた。死につながる病気は多数あるのにもかかわらず、だ。

いったいどういうことか、納得のいく説明をいただきたい！」

ヤブイ「そ、いや、あ、うう、…うううっ！

ウオオヲヲッヲヲヲヲヲオオオヲッ！！！！」

マサカ「な、なんと…、まさかぁぁぁぁぁっ！」



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サイバンチョ「…これですべてが明らかになったわけですね。被告人が心汰くんの病状を認知していたとなれば、被告人が医師であることも考慮して、未必の故意が成立します。

よって、当法廷を結審します。

有罪。

殺人罪を適用するものとする。

判決法廷については追って日時を通達するものとする。

以上！」





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控え室

亀男「検事さん、ありがとうございました！」

海子「これで心汰も成仏できます…」

ワカッタくん「…そうだ、ひとつだけ。彼が亡くなった日の日記だ。」



－ボクはたぶん、びょうきで死んでしまいます。

トイレに行ったら、真っ赤なんだ。

毎回、真っ赤なんだ。

いたくはないけど、起きられないくらいつらい。

でも、ここまで生きてこれたことはお父さんとお母さんのおかげです。

ありがとう、ごめんなさい。

お腹の中の兄弟によろしくね－



ワカッタくん「泣かないでやってくれ。感謝して亡くなった彼は、きっと泣くことを望んではいない。」

海子「ええ。わかりました。」

亀男「…でも、今日だけ泣こう。お別れのために。」

海子「う、うう…あああああぁぁぁっ！」



ＦＡ条件：ケガの治療の際に、別の重篤な病気を知りながら告知・治療せず退院させたという、＜未必の故意＞があったため、殺人罪でつかまった。