俺が最後の希望だ！

［要約］

かつて5人の男に恋人を殺された男性。

男性は復讐を誓い、4人を殺害した。

しかし男は捕まり、牢の中で復讐を完遂できない自分の命運を呪い、絶望していた。



ある日男の入っている牢に一人の男が犯罪を犯して入れられてきた。

その男はまさに最後の一人であった。

男は心の中で笑い、この世界に神がいることを確信した。



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私には恋人がいた。

将来を誓い、心から愛した女性が。



ある雨の日だった。

通りを歩いていた私たちは５人の若者に襲われた。

私は蹴られ、殴られ。恋人は暴行の末、殺された。

自分も暴行を加えられながらも「その人には手を出さないで」と必死に懇願する女性の声と、

それをあざ笑う5人の男の顔。

血にまみれ朦朧としていた意識の中で、不思議なことに今でもはっきりと覚えている。



当然初めは警察に頼った。

しかし犯人はなかなか見つかることは無かった。



事件から2年がたった。

私は自らの手で犯人を捜し出すことを決意した。

どんな汚い手も使った。その過程で全く無関係の人間を殺したこともあった。

最初の一人を見つけるのに1年かかった。

親の金でのうのうと暮らすそいつの頭に銃弾を撃ち込んだ。

2人目、3人目、どいつもこいつもろくでなしだった。



4人目は銃を突きつけると助けてくれ、金ならいくらでも出すと言った。

「あの日同じ言葉を言った私にお前たちが何て言ったか覚えているか？」

男は覚えていなかった。

私は引き金を引いた。





事件から5年がたった。私は殺人犯として捕まった。

あと一人。あと少しで復讐を完遂できたのに。



事情はだれにも話す気は無かった。警察にも、弁護士にも。

この件については自分一人でかたをつけると、復讐を誓ったあの日に決めたのだ。



この国の法律ならおそらく死刑は免れないだろう。

暗い雑居房で、私は自分の命運を呪った。

彼女を殺した人間が、まだ一人でもこの世でのうのうと暮らしていると考えると、無念でしょうがない。

あと一人、あと一人なのだ。

全員を殺したら自殺する気でいた。

どうせ死ぬなら、せめてこの願いだけはかなえさせてくれないのか。







公判まであと3日となった。

その日一人の男が私の入っている雑居房に入れられてきた。







男の顔は、かつて見た顔だった。







私は心の中で笑った。この世界には神がいるのだと確信した。





公判まであと3日。最後の復讐を果たすには十分すぎる時間に、私には思えた。