【ラテクエ 30 リサイクル】　「傷ついて帰る」

ユーシャくんは、世界を救った英雄、ヒデオの息子です。



親が倒したはずの魔王がまた復活したので、村のみんなに見送られて、魔王退治の旅に出ます。





そして３年後…



「やった－！イノシシ男をたおしたぞー！」

ユーシャくんは、まだ、村から２つ離れた町にいて、ちまちまモンスター退治を続けていました。



あまりにも遅い成長スピードですが、ユーシャくん本人は、新品の銅の剣を手に、ご満悦です。

「この調子で頑張れば、きっと魔王も倒せるようになるよね！」　街を歩きながらつぶやくと…



？？？　「フフフ…威勢がいいな。ヒデオの息子よ」

ユーシャ「えっ！？　おまえは…　まさか！」



「そう！私が魔王だ！　ヒデオの息子が旅に出たと聞いたのだが、なかなか来ないのでな…

　こちらから先手を打って、倒しに来たというところだ…　さぁ、どれほどの腕前か見せてみろ！」



「ひえっ、魔王だー！」　町の人々は、散り散りに逃げ出します。

「あわわ…！」　ユーシャくんも、腰が抜けました。



「どうした？そちらが来ないなら、こっちから…」

「うわーん！無理です！　命ばかりはお助けをーーーー！」



「…。　おまえ、本当にヒデオの息子か…？　やる気が失せたわ、さっさとうちへ帰るがいい！」

「あ、ありがとうございますーーーーーー！」　そして、魔王も飛び去って行きました。





町の人々は、ユーシャくんが無事に戻ってくるのを見て驚嘆します。

「おお！魔王を無傷で退けるとは！」　「さすが英雄ヒデオの息子！」



ナイス好意的解釈ですが、ユーシャくんはもうコリゴリです。

魔王の言った通り、おうちに帰ることに決めました。



でも、さすがにそのまま帰っては、みんなから責められる…

「そうだ！　魔王と戦ったって噂は、街のほうから伝わるはずだから…」



あとは、精一杯戦ったけど負けちゃった、ってフリをして村に帰れば、みんなも納得するはず！！

というわけで、ユーシャくんは自分を傷つけ始めました。



たいまつを当てて火炎魔法にやられたフリ、ほっぺたをチョッピリ切って魔王の爪にやられたフリ、

あとはたんこぶとか青あざとか鼻血を出して、足を引きずりながら村へと向かいます。





「ゆ、ユーシャ！　やられてしまうとはなさけない！」

「そ、そういわないでよ…　ま、魔王相手にがんばったけど、むりでした…　ぐふっ」



「…ねえ、魔王と戦って、たんこぶとか鼻血って…」　

「シッ、言ってやるな…」　村のみんなも、正直ユーシャくんには無理かなぁ、と思ってたのでした…。