【ラテクエリサイクル】　秋刀魚と猫と私

私は緊張しながら、スーパーの奥へと足を進める。念のため、明かりはつけないままだ。

何度も通ったから、暗くても迷わない。やがて冷凍室にたどり着くと、内容物を見定めた。



「この前は肉だったからな…今回は魚にするか」



冷凍された秋刀魚をありったけクーラーボックスに詰め込むと、扉を閉めて帰路に着く。



人気のない街道を、慎重に進む。「ヤツら」に見つかったら、一巻の終わりだ。

自分以外に、生き残った人間はいるのだろうか？しかし、今の自分にそれを知る術はない。

とにかく、一日一日を生き延びることだけで、精いっぱいだ…



家の近くまで来ると、飼い猫が出迎えてくれた。　生きている知り合いは、コイツだけだ…

だがその時、猛烈に嫌な気配を感じた。「ヤツら」だ…！　



猫はまだ気づいていない。私だけが持つ特殊な知覚が、「ヤツら」の接近を告げていた。

おかげで今まではなんとか逃げ延びてきたが、今回の接近はあまりにも近く、早すぎる…！



私は、持っていた秋刀魚を猫の前にバラまいた。うれしそうにかじり付く猫を置き去りにし、

家の中にあがってカギを閉める。部屋に入り、布団の中に潜り込む。ブルブル震えていた。



「フギャーッ！」



ひときわ大きな悲鳴が聞こえた…！　おそらく「ヤツら」にやられたのだろう…

私は布団を頭から被り、恐怖で涙を流した。（見つかりませんように、見つかりませんように…）



しかし願いも虚しく、「ヤツら」は家の中に上がりこんできた。身の震えで、歯がガチガチと鳴る。

「ヤツら」は部屋の扉を破り、私が隠れている布団に手をかけた…