【ラテクエ１９リサイクル】かなり無理があるジューンブライド

私

はﾓﾄｲ｡

高校教師だ｡

赴任してすぐに担任ｸﾗｽを持った｡

現在37歳｡

この歳まで結婚はおろかまともな交際すらして来なかった｡



そんな私は､一人の教え子からのｼﾞｭｰﾝﾌﾞﾗｲﾄﾞに関する質問で｢今までの私｣は死んだ｡



ある日の放課後｡

授業の片付けをしていた私を､今年度3年になった教え子の女生徒が訪ねてきた｡



｢せんせｰ､今大丈夫?｣

｢ん?あぁ､ﾋﾅか｡片付けしながらでよけりゃ｡どうした?｣

ﾋﾅは私のｸﾗｽでも可愛らしいほうだ｡

実際人気者で､卒業文集の<結婚したい女子ﾗﾝｷﾝｸﾞ>でも二位だった｡



｢うちの従姉妹がさ､昔の担任と来月結婚するんだって｡｣

｢そりゃめでたいじゃないか｣

｢ｼﾞｭｰﾝﾌﾞﾗｲﾄﾞだよ?しかも公務員と｣

｢それで?｣

｢従姉妹がさ､学生の頃から付き合ってたらしいの｣

｢…やばくね?｣

｢ﾔﾊﾞいよね｣



妙な沈黙｡



｢せんせｰの好みってどんな人?｣

｢…なんで?｣

｢個人的興味｣

｢…黙秘します｣

｢なんでよ?｣

｢あんまり考えたこと無い｣

｢どうして?｣

｢…この外見だろ?ﾓﾃたこともないし､俺そういうことに要領悪いから｣

｢ふぅん…｣

｢なんだよ…｡雑談だけなら帰る支度しろよ｣

｢もし､今私に好きだって言われたらどうする?｣

｢…ﾊｧ?(°Д°)｣

｢真面目にさ｣

｢うん､ﾔﾊﾞいことになりますな｣

｢秘密は守るよ?｣

｢そういうことじゃなく｣

｢私は嫌い?｣

｢んなわけない｡かわいい教え子だ｣

｢じゃあ付き合ってよ｣

｢卒業してから考えようや､せめて｣

｢それ､信じていい?｣

｢わかったわかった｣



甘かった｡



｢そぅ､ありがとう｣

ﾆｯｺﾘ微笑んで携帯を操作するﾋﾅ｡

『じゃあ付き合ってよ』

『卒業してから考えようや､せめて』

『それ､信じていい?』

『わかったわかった』



録音されていた二人のやり取り｡



｢これだけで既成事実になるよねｰ｣

｢ﾋﾅ…お前…｣

｢末永く､よろしくね､せんせｰ｣



私の中のﾅﾆｶが､死んだ｡



一年後私はﾋﾅと婚約し､翌年には彼女が憧れていたｼﾞｭｰﾝﾌﾞﾗｲﾄﾞを挙げることになるのはまた別な話｡



※これはフィクションであり、実在のモデルは存在しません。